第三ノ怪「〇〇海岸の怪」

これは、私、塚田桃子が体験した。恐怖体験の話です。

私は小学5年の頃、母と友達のSちゃんと海水浴へ行ったんです。


私達は、行きのバスに揺られて車内で、楽しい気分でゲームをしたりお菓子を食べたりしていました。

でも、まさか。行き先であんな目に遭うなんて、夢にも思わなかったのです。




◇◆◇

私とSちゃんは、近場の〇〇海岸へ着き、海の家で着替えました。


「二人とも、準備体操をしてから入るのよ。」

「はーい。」


私とSちゃんは、母の言うとおりに、準備体操をしてから。海へと入り泳ぎ始めました。

浮き輪を使って泳ぐ私と違って、泳ぎが上手く、浮き輪を使わないで泳いでいる。Sちゃん。

Sちゃんは、しばらく私の近くで泳いでいましたが。つまらなくなったのか、私から離れて泳ぎ始めました。


泳ぎが上手なSちゃんなら、大丈夫だろうと私は、少し寂しく思いながらも浮き輪に身を任せて海に漂っていた。

その時でした。


『あそぼう…あそ…ぼうよ』

どこからともなく。小さな男の子の声が、聴こえて来たのです。


私は、怖くなりSちゃんを呼ぼうと、彼女の方へ目を向けました。

すると、Sちゃんは何と、大声で助けを呼びながら溺れていました。


「なんで?さっきまで、Sちゃんの声が、聴こえなかったのに!?」


しかし、周りに泳いでいる人達も、お母さんも、ライフセーバーの人でさえ。

その様子に気が付かず、声も聴こえていないようでした。




◇◆◇

私は必死に泳いで、Sちゃんを助けに行こうとしました。

すると、またあの声が聴こえて来たのです。


『あ…そぼう。おいてかないで…』

何かがいる。そう確信した。

その刹那、私の足を何かが引っ張りました。


私が、足の方を見ると何と、坊主頭の男の子が私の足を引っ張りながら笑っていたのです。


「きゃあっ!」


私は、恐ろしくて悲鳴をあげて足をバタつかせようとしました。

それでも、男の子は離してくれません。


Sちゃんも、誰も助ける人がいなければ、溺れ死んでしまう。

この怪奇現象は、この子が引き起こしている。

そう思った私は、以前、テレビの心霊番組で、霊能力者が言っていた言葉を思い出しました。


霊は、優しい人に寄って来ます、心で強く。自分には、何も出来ないと念じるのだと

私は懸命に、心の中で強く念じました。


――私は、何もしてあげられない!お願い。帰って!――


すると、男の子が急に、悲しそうな顔をして足から手を放したのです。

私は、男の子から解放され、男の子は、海の底に溶けるように消えて行きました。

ほっとした私は、大声で助けを呼びます。


「Sちゃんを助けて!!!」

私に出せる最大の音量で声を出しました。



私の声に気づいた、周りの人達。ライフセーバーのお兄さんが、海に飛び込み、

Sちゃんは、無事助かりました。

Sちゃんの話しでは、自分の足に女性の長い髪が絡まり、引っ張っていたのだそうです。

あの男の子と、女性の髪は何だったのでしょうか?



よく水場には、霊が集まると聴いた事がありますが。

夏になると、私は今でも、あの男の子の悲しそうな顔を思い出すのです。

私と、Sちゃんは、30代になった現在でも、〇〇海岸だけは決して行きません。




-了-


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やっと一作書けたので投稿させていただきました。

お読みくださり、ありがとうございます。

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