第10話 マイカ・アウローラは『高ランク探索者の荷物持ち』クエストを受けるかどうか迷う
探索者ギルドのギルド登録記入用紙の記入を終えて提出した私は、ギルド職員NPCから少し待つように言われた私は、依頼の紙が張られている壁際に向かった。
壁一面に貼られた依頼を眺める。なんか、壮観だよね。
依頼の紙はランクごとに分けられているわけじゃなくて、雑多に貼られている。空いたスペースに新たな依頼を貼り出しているからだ。
ギルド職員NPCと仲良くなると、プレイヤーにおすすめの依頼がどこに貼ってあるか教えて貰えたり、プレイヤーのために依頼の紙を取っておいてくれたりするようになる。
そういう、特別にひいきされてる感じってちょっと嬉しい。それはファンタジーVRMMO『アウローラの錬金術師』が一人用のゲームだから言えることだけど。
多人数参加型のゲームで自分だけがひいきされるのって、罪悪感があって私はあんまり嬉しくない気がする。
「マイカ・アウローラ様」
あ、私の名前、呼ばれた。
私はギルド登録をお願いしていたギルド職員NPCのカウンター前に向かう。
カウンター前に立つと、ギルド職員NPCが私に微笑んだ。営業スマイルだとわかっていても、美形な彼に笑顔を向けられるとキュンとする。
「お待たせしました。こちらが探索者ギルドのギルドカードです」
私は鈍色のカードを受け取った。最低ランクのGランクだから鈍色のカードだ。
ランクが上がるとギルドカードの色も変わる。プレイ動画では何度も見たことがあるギルドカードだけど、自分が手にするとなんだか感慨深い。
ゲームはプレイ動画を見るのも楽しいけど、自分で遊ぶのも楽しいね。
「依頼を受ける際、依頼を申し込む際は受付カウンターでこのギルドカードを提示してください。ギルドカードを紛失すると、最低ランクのGランク以外はギルドランクが1つ下がりますのでご注意ください。再発行には銀貨2枚が掛かります。ギルドカードを拾った場合は、届けて頂けると、ギルドカード1枚につき、Dランクの依頼を一つ完了したものとして処理致します」
ギルドカード紛失って、ペナルティがきついんだよね。
ギルドカードは収納しちゃえば失くすことはないんだけど……。
「Gランクの方におすすめの依頼は『高ランク探索者の荷物持ち』です。今、私の手元にあるのは『Cランク探索者 マリエ』さんか『Dランク探索者 ジャック』さんの依頼になります。依頼内容は迷宮一階層全フロア探索時の荷物持ちとなります」
私はギルド職員NPCの説明を肯きながら聞く。
『高ランク探索者の荷物持ち』クエストは、初心者探索者に迷宮一階層全フロアを案内することが目的だ。
弱くて何もわからないまま、一人で迷宮に突っ込んでいくのも面白そうだけど。プレイヤーは死んでも『死亡』扱いにはならなくて『悪夢』扱いになるけどNPCは死んだら終わりだから、探索者ギルドはなるべく初心者の探索者を死なせないようにしようと気を配っている。
『高ランク探索者の荷物持ち』は、Dランク以上のギルド員が昇級のために受けなければならない依頼の一つだ。
運が悪いと『高ランク探索者の荷物持ち』の依頼を受けてくれる初心者や低ランク探索者がいなくて、昇級が足止めされることもあるみたい。
「どちらかの依頼を受けますか? 依頼を受けた場合、翌日の朝8:00にこちらのギルド受付に来ていただくことになります」
めちゃくちゃざっくりとした説明だけど、ゲームだからいいかなあと思う。
『マリエ』と『ジャック』がどんなNPCだか全然わからないけど。『高ランク探索者の荷物持ち』クエストは、ゲームのプレイ動画、ちゃんと見たことないんだよね。
どうしよう……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます