第9話 マイカ・アウローラは探索者ギルドの美青年NPCから索者ギルドについての説明を聞く

特に何のイベントも発生せず、探索者ギルドに到着した。ちょっと残念。

このゲーム、イベントの発生って本当にランダムっぽいんだよね。プレイ動画見てても思った。


ゲーム実況でプレイヤーのボイス有りとか字幕がある物だと愚痴とか文句とかいろいろ入ることもあるけど、ファンタジーVRMMO『アウローラの錬金術師』は無口主人公だからプレイ動画が見やすくて、私は好き。


探索者ギルドに初めて来たから、まずは探索者登録をしないとね。

私はそう思いながら探索者ギルドの受付カウンターに向かった。

受付カウンターにいるのは三人。今日は、右側から美少女、美青年、中年のおばさんNPCが並んでいる。


美青年と中年のおばさんで悩むー!!

乙女ゲーム好きの女性プレイヤーなら美青年NPC一択って思うでしょ?

でもファンタジーVRMMO『アウローラの錬金術師』は『ふたまた以上』がバレるとめちゃくちゃ修羅場になる。

ゲームのプレイ動画のキーワードには『修羅場』があって、おそろしい恋愛修羅場が展開されていることもある。怖い。


だから、ちょっといいな程度でNPCに近づいてしまうと、後で本命キャラに会った時に大変なことになる。

でも、せっかくイケメンNPCに出会えたんだから、受付のお兄さんのところに行こうかな。友達止まりな友好度上げを心がけて礼儀正しく過ごそう。

私は美青年NPCがいるカウンター前に立った。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


美青年NPCが私に笑顔を向ける。美形オーラ直撃!!

私は喋れないので選択肢を選ばないとね。

目の前に現れた選択肢は……。


【選択肢】「探索者登録したいです」/「あなたに会いに来ました」


この二択、選ぶ選択肢決まってるよねって思うでしょ?

当然、私も『「探索者登録したいです」』を選ぶつもり。でもプレイ動画見てると『「あなたに会いに来ました」』を選んで恋愛モードに突入しようとするプレイヤーも結構いた。

しかも『「あなたに会いに来ました」』じゃない選択肢が出ることもあるの。


探索者ギルドの美青年NPCの前に立った私がマイキャラ制作の時に『女主人公』『恋愛対象 異性』にしたから選択肢『「あなたに会いに来ました」』が出現したのだ。

『「あなたに会いに来ました」』を選んでも魅力パラメータ値が低いと悲惨なことになる。世知辛い。表立ってはひどい態度は取られないけど、夜の酒場で該当NPCと遭遇した時にめちゃくちゃ悪口を言われるパターンのプレイヤーのプレイ動画もあった。自分じゃないけど心が折れた……。


『男主人公』『恋愛対象 異性』か『女主人公』『恋愛対象 同性』を選んでいると選択肢『不機嫌な顔をする』が出現する。

プレイヤーが自分で選んでギルド職員の前に立ったのに、不満な顔するってどういうことよ……っていう気もするけど。でも、他の受付が混んでいて仕方なく選んだ場合もあるかもしれない。

選択肢『不機嫌な顔をする』を選ぶと目の前で対応してくれている探索者ギルド職員NPCの友好度が下がる。でもマイキャラの運パラメータ値が一定値以上だと、新たな『恋愛対象に該当する』ギルド職員NPCが登場することがある。


そろそろ選択肢を選ばなくちゃね。

私は『「探索者登録したいです」』を選んだ。


「探索者登録には銀貨1枚をお支払い頂き、こちらの申し込み用紙に必要な事項を記載していただくことになります。代筆をご希望でしたら銅貨2枚が必要となります」


美青年NPCが笑顔で言う。私、今、所持金が無いんだよ……。

私が困った顔をしていると、彼は口を開いた。


「銀貨1枚を払うのが難しい場合はGランクの依頼を10回、無料で受けて頂くことでも登録が可能です。ですが、こちらの方が割高になる場合もあります。代筆込みであればGランクの依頼を11回、無料で受けて頂くことになります。どうなさいますか?」


美青年NPCがそう言うと、私の前に選択肢が現れた。


【選択肢】「銀貨1枚を払います」※所持金が足りません/「Gランクの依頼を10回無料で受けます」/『代筆の分も含めてGランクの依頼を11回無料で受けます』


ファンタジーVRMMO『アウローラの錬金術師』は日本語で文字を書けばいいから、代筆はいらないよね。

私は『「Gランクの依頼を10回無料で受けます」』を選んだ。


「承りました。それでは、探索者登録の前に探索者ギルドについて説明をさせていただきます」


私は美青年NPCの言葉に肯く。ここで嫌な顔をしたり、首を横に振ると説明をスキップすることができるんだけど、一応ちゃんと聞いておく。

プレイ動画は一回説明を聞いて、それから早送りしてたからうろ覚えなんだよね。


「探索者ギルドとは、迷宮に入ることができる『探索者』の支援をするための組織です。『探索者登録』が完了すると、探索者ギルドからの依頼を受けることができます。探索者にはギルドランクがあり、最低ランクはGランクで、F/E/D/C/B/Aと位が上がり、最高ランクはSランクです。依頼は探索者本人の現在の探索者ランクと同じランクの物しか受けられません。但し、複数人数でパーティーを組んだ場合、そのパーティーの平均ランクの依頼を受けることが可能になります」


私は探索者ギルドのギルド職員の説明を肯きながら聞く。

早くパーティーを組んでみたいけど『複数人数でパーティーを組んだ場合、そのパーティーの平均ランクの依頼を受けることが可能』というのが、低ランク探索者が嫌われる要因になっている。たぶん、高ランクのNPCに寄生して進めることを抑制したいのだろうと思う。

魅力パラメータ値が高かったり、友好度が高かったりすると、パーティーを組んでもらいやすくなる。


「依頼はあちらの壁に貼り出してあるので、受けたい依頼を剥がして受付にお持ちください。ギルド登録、または最後に依頼を受け、達成してから100日間が経過するまでに新たな依頼を受けない場合はギルドランクが1つ下がります。最低ランクのGランクだった場合はギルド登録が抹消されますのでご注意ください」


説明を聞いた私は肯いた。ギルド登録が抹消されても再登録できるが、再登録の場合は銀貨1枚の手数料が必須になる。しかも探索者ギルドのギルド職員NPCからめちゃくちゃ嫌われる。


「まずは登録申請用紙の記入をお願いします」


私は登録記入用紙と万年筆を受け取り、必要事項の記入を始めた。

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