第6話 マイカ・アウローラは『レティシアの錬金工房』で生クリームとフルーツがたっぷり入ったロールケーキを食べる
私の叔母であり、錬金術師のレティシア・アウローラの錬金工房は『レティシアの錬金工房』という看板が掲げられている。
『レティシアの錬金工房』は、元々、叔母の師匠の錬金術師グラムの工房だったのだが、彼は叔母が一人前の錬金術師になるのを見届けて、錬金工房を譲り、旅に出た。
攻略情報サイトには錬金術師グラムのグラフィックはなかったんだよね。名前と設定だけが書いてあった。
『レティシアの工房』は、童話の『ヘンゼルとグレーテル』に登場するお菓子の家みたいな外観で可愛い。
私は扉の横にある小さなベルを鳴らした。
リィィン……と高く澄んだ音が鳴り、扉の下部についている小さなドアが開いて、黒猫が出て来る。
可愛い赤い首輪をした黒猫は、私を見上げて尻尾を振った。
「マイカ、よく来たにゃん。マスターも待ってるから、入るにゃん」
私は黒猫の言葉に肯いた。
この黒猫は叔母の飼い猫で、錬金アイテム『絆の首輪』をつけているので喋ることができる。
黒猫の名前は『ロロ』だ。主人公は何度か叔母の錬金工房に遊びに来たことがあり、黒猫のロロとも会っている……とゲームの公式サイトの『ロロ』の紹介ページに書いてあった。
ロロが扉の下部についている小さなドアから錬金工房内に入っていく。
私はロロに続いて扉を開けた。
『レティシアの工房』は、白い棚に錬金アイテムが置かれている。可愛い雑貨屋さんみたい。
赤い絨毯に、天井にはキラキラした小さなシャンデリアがある。
白いカウンターには黒髪、黒目の美女が座っていた。叔母で『レティシアの工房』の主、レティシア・アウローラだ。
「いらっしゃい。よく来たわね、マイカ。道に迷わなかった?」
叔母に問いかけられて、私は肯いた。
オプションの『ナビシステム』をONにして、赤い道を進んで来たから迷わずに来れた。
「それはよかったわ。今、お茶の支度をするから、マイカは店内を見回っていて」
叔母はそう言って席を立ち、奥に向かう。
「マイカ、にゃーが案内するにゃん。気になる錬金アイテムがあったら手に取ってほしいにゃん」
黒猫のロロがそう言うと、私の目の前に選択肢が現れた。
【選択肢】ロロに案内してもらう/すぐにお茶が飲みたい
『すぐにお茶が飲みたい』はゲーム二周目以降で『ロロに案内してもらう』で錬金アイテムの説明を全部聞いてしまっているプレイヤー向けの選択肢なんだと思う。
私は少し迷って『すぐにお茶が飲みたい』選んだ。
とりあえずゲームを進めたい。
『すぐにお茶が飲みたい』を選ぶと、叔母に奥の部屋に案内された。
プレイ動画を見て知ってるけど、可愛いカフェのような一室に、丸いテーブルがあり、可愛い椅子が二脚置かれている。
この部屋は、錬金工房に訪ねてきて仲良くなったキャラをもてなす時にも使うんだよね。
叔母が用意してくれたのは、紅茶と生クリームとフルーツがたっぷり入ったロールケーキだった。
プレイ動画ではコーヒーにアップルパイの組み合わせの時もあった。
ティーセットは洗練された形だ。カップは淵が広い形で、白地に金色の縁取りがされている。
ゲームだと食物アレルギーがないから、何を出されても、誰でも安心して楽しめるからそれはすごくいいと思う。
だけどファンタジーVRMMO『アウローラの錬金術師』は食べすぎるとマイキャラが太る。
ゲームなのに太る。プレイ動画では、びっくりするほど太っている主人公もいた。
マイキャラが太るとグラフィックも変わる。
マイキャラはスタミナが上限値いっぱいの状態で、一定量以上の食べ物を食べると『肥満』状態になる。
『肥満』状態になっている時に更に食べると、もっと太る。
痩せるためにはスタミナ値が一定値以下の『空腹』状態を一定時間以上続けて『飢餓』状態になる必要がある。
痩せすぎると『やつれる』こともある。
『アウローラの錬金術師』のプレイ動画のいろんな主人公を見るのも楽しかったなあ。
あ、ロールケーキおいしい。
『レティシアの錬金工房』まで歩いたからスタミナ値が減った状態だから、今、おいしくロールケーキを食べても私のマイキャラが太ることはないはずだ。たぶん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます