第7話 マイカ・アウローラは錬金作業室で『錬金』についてのチュートリアルを受ける

紅茶を飲み終え、生クリームとフルーツがたっぷり入ったロールケーキを食べ終えるとイベントが発生する。


「お茶も飲み終えたし、そろそろ錬金術を教えましょうか」


叔母がそう言うと、私の目の前に選択肢が現れた。


【選択肢】はい(初回プレイ時・推奨)/いいえ


私は『はい』を選んだ。

ここで『いいえ』を選んでしまうと低ランクの錬金アイテム作成で失敗した時に叔母の友好度が激減する。

叔母の友好度が下がると険悪なイベントが起きたりして獲得できる称号もあるから、称号コンプを目指したり、珍しいルートのプレイ動画にしたいプレイヤーは『いいえ』を選ぶメリットもあるけど、私は普通にゲームを楽しみたいから『はい』にする。


「では錬金作業室に行きましょう」


叔母はそう言って部屋の右手にある扉に向かう。


叔母に続いて部屋に入ると、錬金窯が二つ並んで置いてある。

黒い錬金窯と白い錬金窯だ。

叔母は白い錬金窯の方に歩いて行き、私を振り返った。


「この白い錬金窯が、あなたの物よ。用意しておいたの」


叔母がそう言うと、私の目の前に文章が現れた。


『錬金についての説明を聞きますか?』


【選択肢】はい(初回プレイ時・推奨)/いいえ(イベントスキップ)


錬金のやり方はプレイ動画を見て知ってるけど、初回プレイだから一応聞いておこう。

私は『はい』を選んだ。


『白い錬金窯にアイテムを触れさせると錬金窯内に収納されます』


文章が表示された直後に、私の目の前に『癒し草』が一束(5枚)出現した。


『まずは目の前に現れた癒し草を手に取り、白い錬金窯に触れさせてください』


私は指示通りに『癒し草』を手に取り、白い錬金窯に触れさせた。

『癒し草』が消える。


『白い錬金窯を一回撫でてください』


表示された文章の通りに白い錬金窯を一回撫でると【錬金メニュー】画面が現れた。



☆【素材】【錬金レシピ】



『メニュー画面左端の☆をタップするとメニュー画面が消えます』


目の前に文章が表示され、消えた直後に叔母が口を開いた。


「まずは『錬金レシピ』を覚える必要があるわ。『初級回復薬』の錬金レシピを教えるわね」


叔母がそう言った直後、目の前に文章が表示される。


『【初級回復薬 ランクD①】の錬金レシピを取得しました。【錬金メニュー】画面の【錬金レシピ】に触れてください』


私は指示通りに【錬金メニュー】画面の【錬金レシピ】に触れた。

【錬金レシピ】の一覧……今は一つしか記載がないが……が現れた。


『【初級回復薬 ランクD①】に触れてください』


私は指示通りに【初級回復薬 ランクD①】に触れた。



【初級回復薬 ランクD①】


<癒し草 一束(5枚)> × <井戸水 桶半分(1リットル)> × ガラス瓶(1個)


効果 スタミナ値を10パーセント回復する



<癒し草 一束(5枚)>は黒い太字で表示され<井戸水 桶半分(1リットル)>と<ガラス瓶(1個)>は灰色の文字で表示されている。

まだ入手できていないからだ。


「初級回復薬のレシピで足りないアイテムがあるのはわかる?」


叔母に問いかけられて私は肯いた。『井戸水 桶半分(1リットル)』と『ガラス瓶(1個)』が足りない。


「『井戸水』は錬金工房の裏手の井戸で汲むことができるわ。空の桶は井戸の側に戻しておいて。『ガラス瓶』は自分で錬金するか探索者ギルドに買いに行くといいわ。探索者ギルドでは『癒し草』と空のガラス瓶を提供して回復薬を作らせる依頼もあるから、それを受けてもいいと思う。今回は私がガラス瓶を提供するわ」


叔母はそう言ってガラス瓶を錬金窯に触れさせて収納した。


「では、井戸水を汲みに行きましょう」


叔母はそう言って歩き出す。私は叔母の後に続いた。


錬金工房の裏手の井戸の前に到着した。

私は井戸の側に積み上げられていた木桶をセットして、井戸から水を汲む。


「錬金で『井戸水』を使い終えたら『空の木桶』が残るから、そうしたら木桶をこの場所に戻してね」


私は叔母の言葉に肯き、井戸水を入れた木桶を持って錬金作業室に戻る。


錬金作業室に戻った私は白い錬金窯に井戸水を入れた木桶を触れさせて錬金窯内に収納する。

これで『初級回復薬 ランクD①』が錬金できるようになったはずだ。


『【初級回復薬 ランクD①】を錬金してください』


私は目の前の文章を読み終え、白い錬金窯を一回撫でた。

目の前に【錬金メニュー】画面が現れる。

私は【錬金レシピ】に触れて【錬金レシピ】の一覧を表示させる。

それから【初級回復薬 ランクD①】に触れた。

材料が足りない時には現れなかった【個数 1】と【錬金開始】が表示されている。

私は【錬金開始】に触れた。

すると、目の前にガラス棒が現れる。


「ガラス棒を手に取って錬金窯を混ぜるのよ。スタミナ値が減っていくから気をつけて。あなたはさっき、お茶を飲んでお菓子を食べたから『初級回復薬』の錬金はできると思うわ」


叔母の言葉を聞きながら、私はガラス棒を握った。

初期に、スタミナ値に振ってないとキツいんだよね。錬金チュートリアルでスタミナが尽きてしまって、貰える称号があるみたいだけど。


「錬金窯の渦をよく見て、渦が回る速度と同じようにかき混ぜるの。『初級回復薬』の時の渦は緩やかだから、焦らないようにね」


プレイ動画では早送りにするところだけど、自分がプレイヤーの時はスキップできない。頑張ろう。

緑色と白色の渦に沿ってガラス棒でかき混ぜていく。

渦の色は、錬金しているアイテムによって変わる。攻略情報サイトにはいろいろ書いてあったけど、私はその辺りはあんまり覚えていない。

私のマイキャラ『腕力値』が1だから、地味に、このかき混ぜ作業がキツい……。

プレイ動画を見ていた時にはサクっと早送りしていたこの場面、私以外のプレイヤーも頑張っていたと思うと、本当、早送りしてごめんなさい……。


必死で錬金窯をかき回して数十秒後。

ファンファーレ的な効果音が鳴り響き、ガラス瓶に入った『初級回復薬 ランクD①』が完成した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る