第17話 待って


男は3ヶ月前、愛する恋人を失った…。


恋人は白血病…血液のガンであった…、


男は毎日恋人の病床へ通い、励ました…。



「私、治るよね?」


「大丈夫!白血病は今は完治率は高いんだ…。抗がん剤の治療を頑張れ!僕がついている!」


しかし、恋人は治療の甲斐が無く死んでしまった…。


男は毎日悲しみ、嘆いたが、もう会えない恋人を忘れたい一心で、仕事に打ち込んだ…。


毎日、残業を申し出て、終電まで仕事をし、自宅のそばのコンビニで夕食を買い、ひとりアパートで食べて眠る…。


恋人の写真や思い出の品は、箱に詰め、押し入れにしまった…。


最近、やっと恋人を忘れられるまでになる…。


仕事に打ち込む姿を見て、社内の女子社員から、好意をもたれ、男は誘われその女子社員と付き合うことになる…。


女子社員とデートをし、自宅へ帰る為、駅を出て、ひとり自宅のアパートまで歩く…。


商店街に差し掛かると、何処からとも無く声が聞こえた気がする…。


「待って…」


男は振り向くが、深夜の商店街には誰もいない…。


しばらく歩くとまた聞こえる…。


「待って…」


振り向いても誰もいない…。


男は足早に家路を急いた…。


坂を登り、歩道は狭まり、アスファルトの道から土の歩道へと変わった…。


「待って…」


男は走り出した…。


「待って!待ってって言ってるでしよ!」


男は足を掴まれ、勢い余り倒れ込み、自分の足を振り向き見た…。


土の地面からは白い腕が二本現れ、男の両足首を握っていた…。


そして、地面の中から這い出してきたのは、抗がん剤で髪が抜け落ちた恋人だった…。


「大丈夫って言ったのに…。私を忘れて女を作った…。でも捕まえた。」


男は気を失い、目覚めると、押し入れの箱の中で恋人の写真を抱いていた…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る