第13話 唐揚げ



終電前、娘が帰る頃だったので駅の改札口の脇で待っていた…。


かなりの降車客が列を作り、改札口から押し出されるように改札を抜けて来る…。


娘が来た…。


俺は声をかけたが娘は気付かず先を歩いている…。


俺は追いかけ、娘の隣に並んで歩く…。


娘はチラリと俺の方を見て、そのまま黙って歩いている…。


坂道に差し掛かると娘は立ち止まりスマホを開き、誰かにラインを打っている…。


「寒いんだから、家に着いてからスマホやりゃいいのに…」


俺が話し掛けても、娘は止めない…。


しょうがないから俺は終わるまで待った…。


「今日は唐揚げみたいだぞ」


夕食のおかずを話しても、娘は眠いのかあくびをして、また歩き出す…。


「おいおい待てよ…歩くの早いよ」


娘は坂を登りきると足早に歩く…。


「腹減ったのか?」


娘はドンドン早足で歩く…。


玄関を開き中へ入った…。


「ただいまーお腹減った…今日は何?」


「だから、唐揚げだって…」


「唐揚げだよ」


妻が大声を出す…。


「ほらな…唐揚げだと嬉しいよな」


「唐揚げかぁ…お父さん好きだったなぁ…」


そう言いながら、娘は俺の位牌の前に座った…。

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