第12話 そうだね





放課後、仲良しの唯と香菜と3人でおしゃべりしていたら、もう外は、薄暗くなって来た…。


「まだ下校時間には早いから、怖い話でもしない?」


ホラー好きの唯が言った…。


「やろっか!」


香菜が同意する…。


「怖いのは嫌だなぁ…」


私はあまり、乗り気にはならない…。


「もう、未來は怖がりだな~」


「大丈夫、大丈夫〜やろ!じゃあ、最初は唯からね…」


「あのね…」


唯が話始める…。


夕刻、学校の近くの公園のトイレに、会社帰りの男が入った…。


男性用の便器の前で小水を済ませていると、後ろにある女性用のトイレの扉が開いて、こちらを見ているような気がした…そして、すぐさま扉が閉まる音がした…。


このトイレは、出入口はひとつ…男女問わず誰でも入れるから、きっと、女性が俺が居るから出ていけないんだと思い、急いで用を済ませて、手洗いをしながら、ふと、女性用の扉を見ると、扉が少しだけ開いている…。


さっきは確実に扉が閉まる音が聞こえた…。


出入り口はひとつだけで誰かが出て行った気配は無い…。


不審に思い、扉をそっと開いてみる…。


中には誰もいなかった…。


何気に上を見上げると、そこには、後ろ手で天井に張り付く女の姿が…女は言った。


みたな!!!


「やだー、もう、あそこのトイレ入れないー」


「香菜はあそこのトイレ、使ってたの?」


「いやー、入ったこと無いし…」


「アハハ…次は香菜ね…」


「ねぇ、止めない?なんか、怖くて寒気がするよー」


私は皆にそう言った…。


「ホント、怖がりだな…どうする?」


「じゃ、こんなのは?余り怖くないやつ、話すよ…つか、ネタなんだけどね〜」


香菜は話し始める…。


私がこっちに引っ越して来る前は、田舎でバパとママとお婆ちゃんと暮してたんだけど、私はお婆ちゃん子で凄く可愛がって貰ったんだ…。


でも、お婆ちゃん、病気になっちゃって、寝たきりで、だから、私はいつも、お婆ちゃんのそばで遊んでいたんだ…。


どんどん悪くなって、お医者さんが皆を集める様に言って、私はお婆ちゃんの手をずっと握っていたよ…。


そしたらね…最後の言葉だったんだけど…私が死んだら、かなしんでくれる?って言ったんだ…私は、当たり前よって答えたわ…。


で、その晩、お婆ちゃん、死んじゃったの…。


そしたらね…お婆ちゃん、私の夢に出てきて…なんでかなしんでくれないの?って言うの…私は目を腫らして泣いていたのに、なんでかなしんでくれないの?って何度も言うのよ…で、最後に寂しいから一緒に行こうって、私の首を絞めたのね…その時、気付いたんだ…かなしんでくれない…じゃなくて…カナ、死んでくれない…だったんだ…。


「きゃ〜!」


唯が少し大袈裟に叫んだ…。


「アハハ…これ、ネットで拾ったネタなんだ…私はカナだけに…」


唯と香菜の笑い声を耳にしながらも、私はひどい寒気と両肩が重苦しくて、唯と香菜にもう帰ろうと告げる…。


教室には、私達、3人だけ…。


外は、すっかり暗くなっていた…。


「そうだね…あまり怖い話をしていると、霊が寄って来るって言うしね…」


唯がそう言った…。


「そうだよ…もう帰ろう…」


私が言うと、私達3人に、くもった男の声が聞こえた…。



「そうだね…もう…帰りな…」

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