第9話 机の目の子



僕は、泣きながら誰も居ない家に帰った。

今日も学校でいじめられて、泣きながら帰った…。

每日每日、いじめられる…。

親に言ったら、もっといじめるからなと言われてまた殴られる…。


勉強机に突っ伏して泣く…。

ママとパパが帰るまで…。


声を殺して泣いていると、机の中から、ゴソゴソと音がする…。


机の引き出しをそっと開けて見る…。


引き出しの中には、目があった…。


目だけ見える誰かがいた…。


不思議と怖くは無く、僕は、その目を見つめてた…。


すると、机の中から声がする…。


「どうしてそんなに泣いてるの?」


僕と同じく子供の声…。


僕はその子に返事する…。


「学校でいじめられるんだ…」


「だから涙を流しているの?」


机の中の目の子が片目を閉じた…。

すると、不思議に涙が止まった…。


「これで泣かずに済むね…」


翌日、また殴られた…。

殴っても泣かないと2人がかりで殴られた…。


机の引き出しを開く…。


「今日も殴られた…」


「泣いてないよ?」


「でも、痛いよ、痛いんだ…」


机の目の子は、また、片目を閉じた…。


「ほら…痛くないでしょ?」


更に翌日、また、いじめられ、今度は皆に殴られ蹴られた…。


「今日は皆にいじめられた…」


「痛く無いし、泣かなかったでしょ?」


「でも、悲しいんだ…胸が…心が…ギュとなるんだ…」


机の目の子は両目を閉じた…。


そして、また、両目を開くと、その子は言った…。


「ほら、これで君は強くなったよ…もう、誰にもいじめられなくなるよ…」


「本当に…?」


「うん、もう、君は強い、空だって飛べるかもよ?やってみなよ…ベランダから空へ飛んでみて…」


僕は、嬉しくなってベランダの手摺を乗り越え、青空へ向かって両手を広げて羽ばたいた…。


気持ち良かった…。

僕は、きっと、忘れかけてた笑顔のままで、地面にぐしゃりとダイブした…。



「はい、イジメが原因で飛び降り自殺の様です…発見された日記には、イジメの事が書かれていました…そうです…29階の自宅のベランダからです…」


そして机の目の子は満足そうに、机の中で両目を閉じた…。

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