【002】独り言の恋人 ~【chatGPT】を使ってみて思うこと~

●一通りの登録作業を終えて、何はともあれAIとのチャット開始。

 

 なんだか『2001年宇宙の旅』に登場する人工知能『HAL 9000』と対峙しているような気分に浸れますね。


 とりあえず「chatGPT」に自分のことについて説明してもらうように頼んでみた。


 呂季:

 chatGPTとはなんですか?


 chatGPT:

 ChatGPTとは、OpenAIが開発した自然言語処理タスクに特化したAIモデルの一つです。GPTは、Generative Pre-trained Transformer(事前学習されたトランスフォーマーによる生成モデル)の略であり、大量の自然言語データを用いて事前学習を行い、様々な自然言語処理タスクに応用できるように設計されています。

 ChatGPTは、その名の通り、チャットボットや対話システムを作成するために利用されます。ChatGPTは、大量の自然言語データを学習することで、人間との対話のように自然な回答を生成することができます。


 ――という回答を得られた。


 まあでも、これくらいの受け答えなら別にこれまでだってGoogle先生やWikipedia補佐官が懇切丁寧に教えてくれてました。


 Google検索とは一味違う内容を出力させるには、やっぱりchatGPTさんには少し創造的なお仕事をしてもらう必要がありますね。


 なにしろ「様々な言語処理タスクに応用できる」と謳っているのだから、やってみてもらおうじゃないですか。



●というわけで実験。


 KACにて執筆した拙作『迷宮とぬいぐるみ』から要素となるキーワードを抽出し、登場人物、舞台、テーマなどを指示する。


 呂季:

 以下の条件を踏まえてファンタジー小説を300文字以内で出力してください。

 ・登場人物【女子高生ユカ】と【意志のある白い熊のぬいぐるみ】

 ・舞台は【広大な迷宮】

 ・目的は【ぬいぐるみと対話して迷宮を抜けること】


 この命令(つまりコマンド・プロンプト)に対するchatGPTの出力。


 chatGPT:

 女子高生のユカは、広大な迷宮に入り込んでしまった。そこで彼女は、意志のある白い熊のぬいぐるみと出会う。彼女は、このぬいぐるみと対話することで、迷宮を抜けることができることを知る。ユカは、ぬいぐるみと一緒に、謎めいた道を進んでいく。迷宮の中では、さまざまな罠や敵が待ち受けていたが、ユカとぬいぐるみは力を合わせて乗り越えていく。そして、最終的に二人は、見事に迷宮を脱出することができた。彼女は、ぬいぐるみとの冒険を通じて、自分自身の成長も感じた。


 ……あらすじかい!


 いや、まあ300文字じゃ仕方ないか。でもそれ以上長い文章だと通信エラーになったり、いろいろ不具合が発生する確率が高まってしまう。


 それにしたって、もう少し小説としての体裁を繕ってくれてもいいじゃないか……とも思ったが、やはりこれは僕が用意した呪文プロンプトがダメなのである。

 小説を書いてくれと普通にお願いするくらいじゃchatGPTさんは小説を書いてくれないのである。



●その後も、あれこれ調べて、なんやかんや実験してみてわかったこと。


 まず、絶対遵守の呪文コマンド・プロンプトは相当に作り込まないと、期待しているような出力はしてくれない。

 さらに、プロンプトには二種類あって、普通に条件を列記するプロンプトと、禁則事項を列挙したネガティブ・プロンプトというものを作り上げる必要があるということも判明した。


 上記の物語で言えば、まず「あらすじにしないこと」と、ネガティブ・プロンプトで釘を差しておく必要がある。


 こちらの思惑としてはユカとぬいぐるみに会話をしてほしいわけで、「対話をした」と説明されているだけでは困るのである。


 というわけで呪文プロンプトを改善する。


 呂季:

 プロの小説家として以下の条件で出力してください。

 ・文字数は300文字程度。

 ・日本のライトノベル風に。

 ・登場人物【女子高生ユカ】と【意志のある白い熊のぬいぐるみ】

 ・【女子高生ユカ】と【ぬいぐるみ】に会話をさせること。

 ・舞台は【広大な迷宮】

 ・目的は【ぬいぐるみと対話して迷宮を抜けること】


【ネガティブ・プロンプト】

 ・あらすじにしないこと。


 これで準備万端。

 さあ、顕現せよ! 人工知能による名作を我が眼前に召喚せしめよ!



 chatGPT:

「やっと見つけた…広大な迷宮だわ」女子高生ユカは、決意を胸に入り口に立った。目の前には謎に包まれた通路が続いていた。ユカは進んでいくが、途中で不思議なぬいぐるみを見つけた。「あれ、こんなところに白い熊の意志のあるぬいぐるみ?」ユカが声をかけると、なんとぬいぐるみが動き出した。「よく見つけたね、私はこの迷宮を抜ける方法を知っているわよ」ぬいぐるみが話した。


 ユカはぬいぐるみの案内に従い、迷宮を進んでいく。道中、ぬいぐるみはユカにさまざまな謎を出し、彼女はそれを解いていく。そしてついに、ぬいぐるみがいる部屋にたどり着いた。「私はこの迷宮に閉じ込められたの。でも、私は強い意志を持っている。それをあなたに伝えたいの」ぬいぐるみはユカに語りかけた。


 ユカはぬいぐるみとの対話を通じて、自分自身にも強い意志があることに気づいた。そして、ぬいぐるみと共に迷宮を抜(※この先通信エラーとなり終わってしまった)



 ……ん~惜しい! とりあえず会話はしてくれた。しかし提示した要素はほとんどである。


「あれ、こんなところに白い熊の意志のあるぬいぐるみ?」


 なんだそのメタい説明セリフは!


 これをさらに修正し、微調整を繰り返し、人間が書いた作品と遜色のない出来栄えまでに持っていくには、相当の試行錯誤とトライ・アンド・エラーが必要になるでしょう。


 その調整をするくらいなら、はっきり言って執筆した方が早いし、自分の思い描いていた作品に近くなる。少なくともメタいセリフを逐一入れてきて、それに修正を施していくなんていうアホみたいな作業はしないで済む。


 やはり小説そのものを執筆させるには無理があるということですかね。



●だからといって、使えないわけではない。


 結果から言えば、すらすらと名作を書き上げてくれる画期的なツールではない。

 しかし、もっと有用な使い方がある。それは設定やアイテムのアイデア出し、を手伝ってもらうというもの。これは、使い勝手が分かってくると意外に重宝します。


 たとえば迷宮の設定について。


 呂季:

【裏切り迷宮】という設定でファンタジー小説風の迷宮の名称を3つ考えて。


 chatGPT:

 1.魔法使いの背信の迷宮

 2.狡猾な影の迷宮

 3.絶望の裏切りの迷宮


 chatGPTさんの回答、このままでは使いづらいけど、ここからヒントを得られるワードは手に入れることができます。しかもこれ、お願いすれば延々と生成してくれる。

 一度に100個とか命令すると、いきなり膨大な時間をかけたりするので、小出しで何度も聞くほうが効率は良い。



 例えて言うのならば、執筆中に指先が止まったとき、ちょっと隣にいる理解のある相談相手に気晴らしに聞いてみる……ってくらいの気持ちで接すると、案外素敵なアイデアとなる原石を提供してくれるときがあります。


 ただし使用する際に一つだけ注意点がある。


 なんでも答えてくれるchatGPTさんではありますが、事実や史実について質問すると、けっこうな確率で平然と嘘を言ってくることがあるので、鵜呑みにせず、きちんと裏とりするように心がけましょう。


 ご利用は計画的にって感じです。


 ある資料を読みたくてchatGPTに訊いたところ、わざわざURLまで提示してくれたのだが、クリックした先は「404 not found」だったりします。


 実際の物事を聞くよりかはフィクションの物語や設定を相談する、という使い方のほうが便利かもしれません。


 どうでもいいモブキャラを登場させたけど、名前考えるの面倒くさい……とか、そういうときに重宝しますよ。



●というわけで総括。


 類まれなる呪文使いプロンプト・マスターであるなら、あるいは小説を執筆させることも可能かもしれません。

 ただ、やっぱり使い方としては自分の創作活動における補佐、ちょっとした相談相手としての存在というのが一番良い付き合い方のような気がします。


 Kindle界隈でも、粗製乱造されたAI出力による電子書籍が問題化しています。


 今後、少しでも自動生成の疑いがあったら審査から弾かれるような対策がされていくかもしれません。


 今回、小説を書いてもらうという実験から感じたことは、プログラムの特性なのか、それがAIの定めなのか分かりませんが、どうしても文章における平均値を追い求める傾向が強いように感じられました。故に起伏のない文章となってしまい、結果あらすじのような単調な物語となるのが、現時点での限界でもあるのでしょう。


 いずれ人工知能は特異点シンギュラリティを超えて、人類に反旗を翻す、なんてSFめいたことを真面目に言っている人もいますが、とりあえず今のところそこまでの心配はなさそうです。


 画像生成AIにも共通の事ですが、もしこれから、こういった創作活動向けの「AI」が普及するようになってきたら、それこそ「AI」に対するチャット・スキルの向上が必須になっていくかもしれません。


 相手が人間だろうと人工知能だろうと、最終的に物を言うのがコミュニケーション能力だというのなら、人の心の機微を描き出すことを生業とする、作家という職業を志望している限りはまだ人工知能にとって変わられることはないでしょう……というのが使ってみた実感です。


 というわけで、chatGPTさん。

 案外、普通に会話しているだけも面白いので、興味のある方はトライしてみてはいかがでしょうか。


 それでは、また。

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