第17話 焚き付け【浜田目線】
くそったれが!
せっかくすべてが上手くいってたのに、木崎のボケが下手こきやがって。これじゃオレの計画が丸つぶれじゃねえか!
まさかバスの最後尾から
思わずガキんときのくせが出て、オレは親指の爪をガリガリと
高崎と宮城がぴーちくぱーちく鈴城と伊集院のことを話していて、さらにオレの神経を
「なんかさー、梨衣と鈴城くんって意外~」
「だよね~、でも梨衣ってば、しあわせそうな顔してるんだよね」
しあわせだぁ?
底辺陰キャなんぞ、しあわせになる価値なんてねえよ! しあわせになんのは上級国民だけで充分、底辺陰キャを見てるほど神さまは暇じゃねーんだって。
そこんとこ分かってねえ、高崎らを黙らそうとオレは言い放つ。
「うっせえ! ブス二人は黙ってろ! あいつらのことは一切しゃべんな! 次しゃべりやがったら、窓から放り投げてやっからな」
オレは座席から立ち上がり、最後尾とその手前のヘッドレストに手を置き、高崎たちが出れないようとうせん坊する形で凄んでやると、
「なにそれ? 私らに八つ当たりすんのはやめてよね」
「うんうん」
高崎は
伊集院のダチだから、オレが仕方なく優しくしてやってるつうのに勘違いしやがって、それがなけりゃ、おまえらごとき速攻でオレのオナホにしてやってる。
オレは二人の態度が気に入らず、ドカッと座席に座り直し、腕を組んだ。
ガンッ!!!
八つ当たりだぁ!?
ムカつきが頂点に達したオレは前の座席の裏を思いっきり蹴り上げると、そこに座っていた男子がびくっとして飛び跳ねた。
振り返って、こっちを見る大人しそうな男子はオレを見た途端、なにも言わずに前を向いて座り直す。
「そういうのやめなって……」
「暴力はんた~い……」
高崎と宮城はオレを恐れて、二人で抱き合い窓際へと寄ってしまいやがった。
「お~い、浜田。あんま騒ぐな」
「は~い」
やる気あんのか、ねえのか分かんねえ、担任がオレを注意するが、聞き分けのよいように返事をすると担任は前に向き直る。
しかしだ、あのカスがまんまと伊集院を寝取るとか、とうやったのか気になって仕方がねえ。なにか伊集院に脅されるようなへまをやらかしたのか?
それにしても、木崎の豆腐メンタルっぷりにはマジで引くわ。
――――梨衣ぇぇ……梨衣ぇぇ……いかないでくれぇぇ。
オレの横で手を伊集院に向かって伸ばし、
オレは今日ほど、クソザコ陰キャに煮え湯を飲まされた日はない!
ずっとバスの車内でムカつきが収まらなかったが一時間ほど走ったところで学校に戻り、その日はそのまま解散となった。
――――翌日。
あ~、朝練マジだりぃわ。
ボールとかコーンの片づけくれえ、マネージャーにやらしときゃいいんだよ。
年が一つ上ってだけで、先輩面してオレらを顎で使いやがって……。けどなぁ、あと一年経ったらオレらにも後輩ができて、こき使い倒してやる。
かわいい後輩マネージャーだったら、速攻食ってオレの女にしてやるんだがなぁ。
最悪の校外学習の翌日、サッカー部の朝練を終えて、教室に戻っと信じがたい光景が広がっていた。
マジかよ……。
「鈴城くん、またお昼いっしょに食べよ」
「あ、いいのかな……俺といっしょとか」
「いっしょじゃなきゃ、やだっ」
鈴城の座る席の前に伊集院がいて、親しげに話してやがった。校外学習で見た光景はただの悪夢だと思ってたんたが、まさかもう一回、くそみてえな悪夢を見せつけられっとか、最悪だ!
オレが鈴城に調子のんなって言ってやろうと席を立つと、始業のチャイムが鳴る前にドアの開いた教室に勢いよく担任が入ってきて叫んだ。
「玉田ァァァーーーッ!!!」
「ひっ!?」
タマキンだか、チンカスだか知んねえが朝っぱら陰キャどもがマジうぜえ。
「せ、先生……俺なんかやらかしましたぁ?」
「やらかしたもなにも、私はここまで愚弄されたのは初めてだ! 分かっているだろう、おまえの提出したスケッチについて」
「はっ!? い、いや俺は……」
「放課後、生徒指導室に来い! それと……経世もだ」
「えっ!? 俺も?」
「そうだ」
ちくしょー、合コンの予定がなかったら、鈴城が呼び出されてる間に伊集院に声かけてるってのに……。まあいい、さっさと学校終わったら部活バックレて合コンに行きてえな、ってまだ木崎の奴、来てねえじゃねえか!
まさか伊集院のことで学校休んだとかじゃねえだろうな?
どーすんだよ、今日の合コンをよぉ!
結局木崎の野郎、昼休みになっても登校してきやがらねえ。
【啓介】
《なにしてやがんだ!》
《さっさっとこい!》
授業の合間に送ったメッセージに既読すらついてねえわ。
「どうだった? 木崎から連絡あったか?」
「ねえな」
「どーするよ、今日」
オレの連れの江川が心配して訊ねてくるが、
「どうにもなんねえだろ」
江川はオレの答えに深いため息をついた。
「とりあえず飯買いに行かね?」
「ああ、マジだりぃな」
前まで
つくづくムカつく野郎だ。
だがそのオレのムカつきを癒やすかのような声が教室に響いた。
「ごきげんよう、一年生の皆さん」
腰まで届きそうな長い黒髪にブレザーよりもセーラー服が似合う古風な美少女がドアの前に立ち、わざわざオレら一年に丁寧にあいさつをしている。
――――生徒会長だ!
――――すみれ先輩もいいんだよなぁ。
美少女の登場でクラスの野郎どもが一斉にどよめき立つ。女子も憧れてる奴もいるのだろう、手の指を重ねて推しにでも会ったような顔をしている。
だがその威光も陰りを見せてるって話だ。
オレらが入学する前、木崎の女である佐竹すみれは学園一のアイドルの名を欲しいままにしていたが、いまや伊集院の下位互換にすぎねえ。
スタイルはいいが、なんせ胸のボリュームに欠けてるからな。
彼女は木崎の席に奴がいないことを確認したあと、きょろきょろと教室を見回していた。一瞬、彼女の視線が伊集院に移るが、すぐにぷいと顔を背けた。
やっぱ負け犬って自覚があんだろう。
お目当ての木崎がおらず、肩を落としていた彼女にオレは声をかける。
「先輩、木崎っすか?」
「ええ、昨日から連絡しているのに、音沙汰がなくて心配して見にきたの。勇騎が休んでる理由を知っているかしら?」
彼女は頬に手を当て、首を傾げる。いかにも上品な箱入り娘って感じの仕草をしている。オレは彼女問いに予想こそついていたが、知らないふりをした。
「いや分かんないっす」
二股かけてた一方が寝取られて、休んでるのかもなんて言えるわけがねえよ。
どうして、木崎みてえなゲスに、鈴城みたいなカスにいい女が寄っていくのか……オレを見ろよ、オレを!!!
釣った女にすら返事すら寄越さないって、どんだけメンタル豆腐なんだよ。
スマホを見て、すぐに後ろポケットに突っ込んだ。
放課後になっても既読すらつかねえとか、ざけてんじゃねえぞ。
「仕方ねえよ、俺たちだけで行こうや」
今日は二週間前から楽しみにしてた清心女学園つう、S級のお嬢さまばっか通うところと合コンだったが、肝心の木崎抜きでカラオケボックスに行くと……。
木崎が体調が悪く来れないと伝えた途端、向こうのまとめ役の茶髪でふわっとしたウエーブのかかった美少女がいきなり悪態をつきはじめた。
「ええーっ、木崎くん来ないの? じゃ、私帰る!」
すると他の美少女も追随してしまい、
「ごめんなさい、私も帰ります」
「木崎くんの体調が良くなったらお願いしますね」
カラオケ屋に入ろうともしなかった。
「おいっ、待てって。俺ら、どーすんのよ」
「はあ? 木崎くん以外、ただの人数稼ぎじゃん。来て損した」
オレらを見下すお高く止まった美少女たち。
くそったれ! こんな屈辱を味わったのは初めてだ!
それもこれもすべて鈴城の野郎が悪いんだ。
オレは江川と別れたあと、木崎の家へ凸していた。
「おいっ! 木崎っ、おまえ……あんな鈴城っていうカスに伊集院を寝取られたまんまで、おめおめと引き下がれんのかよ! 伊集院だぞ、い・じゅ・う・い・ん! そんじょそこらに転がってる女じゃねえんだ。寝取られたら寝取り返せよ!」
「あ~?」
くっ、なんだよ。校外学習から帰ってきたら、ボケた老人みたいにすっかり老け込みやがって。
「だったら、すみれにおまえが伊集院と二股かけてたってこと、バラしてやる。傷心のすみれはどうなるんだろうな、オレがそっと優しく慰めてやったらよぉ!」
「や、やめてくえぇぇ……いま、すみれに離れられたらボクはもう生きていけないっ!」
「だったら、おまえの得意のテニスで鈴城をボコれ! 適当な理由をつけて、おまえが勝ったら、伊集院を奪い返すんだよ、分かったか! それでおまえは伊集院もすみれも両方手にして、よろしくハーレムってわけだ」
「あ、ああ……鈴城がぜんぶボクから奪った」
「そうだよ、ぜんぶ鈴城が悪い! あいつはおまえの敵だ! 奴に格の違いってもんを見せつけ、生き恥をかかせてやれって」
「そうだな、そうだ! ボクが鈴城のような底辺に負けるわけがない! ボクはこの学園のすべてを束ねる者なんだ」
やっと戻ってきやがったか……。
面倒な奴たが、木崎を
―――――――――――――――――――――――
カーストトップ木崎と底辺経世の激突!
偉そうに振る舞うものの他力本願の浜田。
まあ、勝敗は言うまでもないんですがw
ついに出てきた木崎の彼女、すみれ嬢はどうなるんでしょうね。
ざまぁをご期待の皆さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
経世が桜ちゃんに自宅にお呼ばれしたシーンをSSで書きました。(第18.5話 裸婦【桜目線】)
https://kakuyomu.jp/users/touikai/news/16817330655597914032
★600のご評価ありがとうございました!
公開させていただいております。
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