第15話 絵筆
俺は伊集院に手を引かれ、白い外壁に三角屋根のお手洗いの多目的トイレへと連れ込まれてしまった。
なんで陽キャは多目的トイレが好きなんだよ!
「伊集院っ!?」
「鈴城くん、逃げちゃうの? 逃げてもいいけど、そうしたら私、鈴城くんに襲われちゃったってみんなに言いふらしちゃおっかなぁ~」
「なっ!?」
俺が多目的トイレのドアノブと鍵に手をかけた途端、伊集院の言葉に手が震えて、動きが止まってしまった。
伊集院梨衣、なんて恐ろしい子っ!
マジ油断した。
まさかおトイレが近いことに偽装して、俺を罠にはめるなんて。
ちろっと口角の端に舌を出した伊集院は、俺に
エッチ、スケッチからのワンタッチとかいつの時代なんだよ!
つかワンタッチで済むのか!?
この先をどうなるものかと恐る恐る後ろを振り向くと、伊集院はカテーシーをするように大きくスカートをめくり上げ、俺におぱんつを見せている。
伊集院はマナー講座で習わなかったのか?
レディはおぱんつが見えるまでスカートをたくしあげてはいけませんですわよ、おほほほってことを。
あ……ありのまま今見たおぱんつの事を話すぜ!
伊集院の腰つきは中学生の愛菜とは違い、やっぱり肉づきが違った。太からず細からず、ちょうどいい
伊集院の夢の中で俺が彼女を調教するといういたずらをしてしまっているのか、彼女の思考はすっかりピンク色に染まり、それを示すかのようにおぱんつまでピンク色だった。
おへその下辺りにかわいらしいリボンがあしらってある。伊集院のようにかわいい子が履くとおぱんつまで神器のように思えてくるから不思議だ。
俺はすでに脳内に写生を済ませた。
まず女体を描くときに注意されることがある。決してお股はYの次ではないと。どちらかと言うと角の取れたWのような形をしている。
多分に漏れず、伊集院のお股辺りのおぱんつの輪郭はそうだった。ただし……まん中の染みからなにかが漏れ出てしまっている。
初の伊集院のおぱんつを見た記念日として、今日のことを一生忘れることはないだろう。もちろん、伊集院の神々しいまでのピンクのおぱんつも!
図らずも俺は玉田の願望を叶えてしまった。今晩は玉田の分も夜の写生大会を頑張ろうと思う。
ただエロ小説で憧れるシチュエーションであっても、現実に起こり得ると本当に戸惑うものだ。伊集院の予想外の行動にたじたじになっていると、彼女はスカートというピンク劇場の幕を下ろしながら、言った。
「あーあ、鈴城くんに梨衣の下着見られちゃった……」
言葉だけ取れば伊集院は残念そうに聞こえるが、俺に見せる顔はもう俺の買った美少女文庫のヒロインそっくりに目尻は垂れて、頬が緩みっぱなしで嬉しそうにしていた。
「『見られちゃった』って、伊集院が見せてきたんだろ」
俺がそんなつっこみを入れている間にも伊集院の動きがとにかく怪しい。なぜか彼女はベージュ色のスクールニットを脱ぎ始め、頑丈なパイプでできた手すりへ脱いだニットをかけた。
さらにブラウスのボダンまで外しながら、意味深なことを訊ねてくる。
「鈴城くんは手ブラか、ノーブラYシャツ……どっちが好き?」
なんだよ、そのトロッコ問題みたいな悩ましすぎる問題を出してきやがって。まさか伊集院の奴、俺が答えたらその通りにするつもりじゃないだろうな。
そもそもおしっこなんて、上着は脱がなくてできるのに。
俺が答えに窮していると、
「答えてくれないの? だったらぜんぶ脱いじゃおっと」
そう俺に告げて伊集院は意を決したようにブラウスの袖から腕を抜こうとし始めていた。
「なんで脱ぐんだよ!」
「ねえ、知ってる? 私、全裸でおしっこする派なんだよ」
逆に知ってたら、こええよ……。
その幼少期のくせをJKになっても、引きずってますアピールは!
派閥もなにも、ほとんどの女の子は全裸でおしっこしないだろ!
このまま伊集院の性癖が悪化すると全裸に首輪をして電柱に向かって、おしっこするというわんこ羞恥プレイに発展しかねない。
「わ、わかったから……ノーブラYシャツ派だ」
まだ着衣の方がいい。
多目的トイレが、“上の服ぜんぶ脱ぐ“からの、“俺の精ぜんぶ抜く“という発展場になりつつある。
「うん! そうするね」
俺の返答にうれしそうに応えるので、どう対処したらよいのか始末に困ってしまった。そうこうしているうちに伊集院は背中に手を回し、後ろのフックを外して、手すりへとおぱんつと上下セットとなっているであろうブラをかけている。
さらに俺が伊集院に脱衣マージャンに勝ったわけでもないのに彼女のけしからん行動は止まることなく、スカートのボタンを外し、ファスナーにまで手をかけていた。
伊集院は右足を前に上げ足を抜いたかと思うと、左膝を後ろに曲げてスカートはついに脱げてしまい、ノーブラにYシャツにおぱんつだけという彼ピの家で朝ちゅんしました、な格好となってしまった。
「梨衣のえっちな姿見せたの、鈴城くんだけだから……他の誰にも見せてないよ」
すし
「こすると白い絵の具がでちゃう鈴城くんの絵筆で梨衣の大事なところをまっ白に染め上げてほしいの……」
白い絵の具ってなんですかね?
絵筆ってなんですかね?
俺、スケッチ用の道具はぜんぶ置いてきたはずなのに。
俺の股間に伊集院の熱い視線が集まり、これってマジで伊集院は強欲な
着替えもなしにそんなことをすれば、俺たちのおかしな関係が周りにバレバレだ。それだけの問題でもないのだが、俺は水上とのやり取りで思い出したことがある。
「梨衣の気持ちは正直すごくうれしい。俺みたいなモブ陰キャのことをここまで思ってくれた女の子はいないよ」
相手を説得するにはやはり名前で呼ぶ必要だろう。
ちなみに桜ちゃんはノーカンだ。女の子というよりもう女性だからな。
「うん、うん」
木崎みたいに歯の浮くようなことはとても言えそうにないし、幼馴染でもないのにクラスの女の子を名前で呼ぶとか、ありえねえって思ってたけど覚悟を決めて俺が初めて伊集院のことを名前呼びしたことで彼女はとてもうれしそうに頷いていた。
「だけどせっかくの梨衣と初めて愛情を確かめ合う場所がトイレというはいただけない。やっばりしかるべきところでしたいんだよ」
そもそも伊集院と俺が二人きりで多目的トイレに籠もってること自体がおかしいし、非常ボタンを迷わず押すべきことではある。
これは伊集院と付き合っていたなら、たぶんそうするであろう本心を彼女の両肩を掴みながらまっすぐ目を見つめて俺は伝えた。
「それに梨衣みたいなかわいい女の子は大事にお取り置きしておきたいタイプなんだよ、俺は」
「ごめんなさい……ごめんなさい……鈴城くんが梨衣のこと、うっく、うっく……そんなに想ってくれてたなんて……知らなかった……鈴城くんの気持ちも考えないで、ひっく、ひっく……わたし、ばかだよ……ううっ」
なぜか俺にはちょろいけど、本当にいい子なんだよなぁ~、俺が伊集院と付き合うには荷が重すぎるくらいに。
うちポケットからハンカチを取り出し涙を拭う距離まで近づくとブラウスという薄布一枚でのみ隠された伊集院のたわわにお目にかかることとなる。
間近に迫ると充血が収まりそうにないが、興奮する息を殺しながら伊集院に着衣するよう促した。
「あ、いや泣かなくていいから。とりあえず、向こう向いてるから服着ような」
「う、うん……」
俺は後ろ向いていたから分からなかったが、トイレットペーパーをからからと巻き取りる音がしていたので、伊集院は大事なところを本当に拭っていたのかもしれない。
スライドドアを開けると昼下がりの太陽が目に飛びこんできて、思わず右手で目を覆う。
なにかヤンデレを説得して監禁から開放された気分がするのだが、気のせいだろうか?
涙目の伊集院の背中に手を当て二人でようやく外に出てきたときだった。またうれしくない眩しさを俺は浴びる。
「おまえら、そこでなにしてたんだよ!?」
「玉田!?」
「玉田くん!?」
俺たちが揃って多目的トイレから出てきたところをがっつり玉田が見ており、わなわなと身体を震わしながら、こちらを指差していた。
よりにもよって、また面倒な奴に面倒な場面を見られてしまうなんて、今日はなんて日だ!
「くそっ、くそっ、なんで俺だけ
玉田は零れる涙を袖で
あ、やっぱマッチングアプリに登録できなかったんだ。
「見られちゃったね、ふふっ」
伊集院は多目的トイレから二人で出てきたところ見られ、どこかうれしそうにしていた。
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玉田の精神まで燃え尽きちゃう。
次回、玉田死す! デュエルスタンバイ!
そんなことよりも、梨衣派? 真莉愛派? 桜派?
どのヒロインといちゃって欲しいか、読者の皆さまのご意見お待ちしております。フォロー、ご評価たくさんいただけましたら、ヒロインとのSSを頑張って書きたいです。
とりあえず梨衣とのいちゃつきは先っちょだけなので今回はこれでお許しを。
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