第11話不満

 ちょっとだけ不満顔気な顔をしているチャーちゃんですが、その顔も可愛らしいですね。

「ボクはね、前から不満に思ってる事があるんだよ」

 チャーちゃんの不満とはなんでしょうか? 一緒に住むにあたって認識のすり合わせは行いましたが、大部分はチャーちゃん基準に合わせる事にしましたが、それは俺の意思だと理解して頂いたので、双方共に問題は無い筈です。チャーちゃんが不満を感じているのは何でしょうね? 俺の靴下が臭いのでしょうか? 靴下があまりにも臭うと感じた時は洗剤水に付けてありますけど。それとも俺のTシャツが裏返しのままについて? 毎回確認はしている筈ですが、見落としはあったかも知れませんね。加齢臭の問題? まだ二十代半ばですから、加齢臭とは無縁の筈ですが、服に何らかの匂いが付いてしまっている可能性は排除できませんね。自分の匂いは自分では気付けないものですから。アイロンを掛けるのが面倒臭い? いや、俺は自分のYシャツには自分でアイロンを掛けていますから、チャーちゃんの手を煩わせてはいないと思います。あれ? なんか臭いか洗濯物の事ばっかりが浮かんできますね。今回はチャーちゃんが何に対して不満を感じているのか分かりません。刺激をしないようにして話を引き出してみましょう。

 チャーちゃん検定一級があれば合格する自信はありますが、何から何まで全て理解している訳ではありませんから。チャーちゃんが一瞬不快な表情を見せた時は、痒いのですね、位分かりますが、背中が痒いのかお尻が痒いのか踵が痒いのか迄は判断できませんので。

「チャーちゃんの不満点は洗濯物の事ですか?」

 恐る恐る尋ねてみました。

 チャーちゃんは驚きの表情をしています。

「うん、そうだよ。もー、ホントにカーイ君は凄いなぁ。ボクの事を何でもお見通しだね、超能力でもあるんじゃないの?」

 イエ、今回のは偶然ですので、あまり褒められると却って恥ずかしいです。

「洗濯物の不満ですか?」

「うん、洗濯物の事だよ。不満とは言っても別にカーイ君が悪い訳じゃないんだ。カーイ君だけじゃなくって、誰も悪くはないんだけど。実際に説明するね。先ず、こうして服を脱ぐでしょ」

 チャーちゃんが服を一枚脱いで、床に脱いだ服を置きました。

 胸が揺れているのがエロいです。

 胸の揺れが治まるを待ってから、床の洋服に目をやります。

「こうして床に置いて、この後は洗濯機の横の白いカゴに入れておくでしょ」

「そうですね、まとめて洗濯をする為に、白いカゴに一時的に溜めておきますね」

「そうだよね。だから、この脱いで洗濯機に入れられる前の状態の洋服は、洗濯される為の服だから、洗濯物って呼ぶでしょ」

「はい、洗濯物って呼んでいますね、普段から」

 チャーちゃんは床に置いて服を拾って移動しているので、付いていきます。

 洗濯機置き場に到着しました。

「その次、洗濯機の中で洗っている途中の洋服も洗濯物でしょ。その次の脱水後に赤いカゴに入れて、物干し竿に運ぶ途中の物も洗濯物って言うよね」

「そうですね」

 チャーちゃんの言いたい不満点が見えてきました。

「物干し竿かハンガーに干した物は洗濯物、乾いた物も洗濯物、乾いた物を集めた物も洗濯物、集めた物をたたんだ物も洗濯物。仕舞う時も洗濯物」

 確かに、洗濯物を干す、洗濯物を取り込む、洗濯物をたたむ、洗濯物を仕舞う、そう表現しますね。

「つまりは服を脱いでから、洋服箪笥に仕舞う迄、ずっと『洗濯物』って呼び方になっているのが不満なのでしょうか? 二人の間だけで通用する、それぞれの呼び方を考えますか?」

「うーん、不満点に関しては全部洗濯物って呼ぶ事なんだけど、カーイ君に話したらスッキリしたから、呼び方は洗濯物のままでいいかな。ノーベルネーミング賞が貰えるんなら個別に名前をつけようかな」

 ノーベル三千岩賞なら、幾らでも差し上げますよ。

「洗濯物の呼び方はこのままで良いとして、明後日の土曜日はカーイ君、お仕事はお休みでしょう」

「はい休みですよ」

 土曜日、日曜日、祝日は基本的には休日である。

「だったらさ、土曜日は洗濯物を出さない日にしてみようよ、ボクもカーイ君も」

 この提案は土曜日は二人共一日中全裸で過ごすと言う事ですね。それは素晴らしい提案ですが、一日中発情する事になりそうです。

 明後日が楽しみ過ぎて、明日は仕事が手に付かなくなりそうな予感がします。

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