第7話透明人間(前編)

「フッフッフッフ、ボクは透明人間だよ」

 この家に透明人間が現れるのは初めてですね。

 とはいえ、一般的な家庭に透明人間が出現する事は無いと思いますが。しかしいつもながら、チャーちゃんは可愛らしい発想をなさいますね。しっかりと相手をする為に、設定を確認しないといけませんね。

 両手でTの字を作り、タイムを掛けました。

「確認になりますが透明人間に付属しているので、服も見えていない状態で宜しいと思われますが、声は聞こえている扱いで宜しいですか?」

「うーんと、そうだね、今日の所は声は聞こえている事にして欲しいなー」

「畏まりました」

 『今日の所は』って言い方ですから、つまり、今後も透明人間が現れる可能性は高そうです。

「それじゃあ改めて始めるよ。フッフッフッフッフ、ボクは透明人間だよ」

「んんん? 何処からか可愛らしい声が耳に届きましたが、誰もいません。可笑しいですね、気の所為ですしょうか?」

「全然気づいてないんだね、それじゃあイタズラしちゃおーっと」

 チャーちゃんが小声で話していらっしゃるので、この部分は聞こえていない扱いにして欲しいのだと思われます。

 ソファに腰掛けている俺の右足のふくらはぎが数回揉まれました。

「あれ? 突然ふくらはぎが変な感じに、一体全体どうなってるんでしょうか? 誰か居るんですか?」

 問いかけに対して、チャーちゃんは自身の唇に右手の人差し指を伸ばして当てています。

 この[シー]ポーズですと、返事をする気は無いようですね。要するにまだ透明人間の存在に気づいたら駄目なんですね。

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