第6話ケーキ

「カーイ君、ボクケーキを買って来たから一緒に食べようよ……じゃなかった間違えちゃった。今のは忘れてよ、やり直すから。コホン、カーイ君、ボク良い物買って来たんだ、一体何だと思う? 当ててみてよ」

 チャーちゃんが買い物袋を背後に隠しました。

 答えは今聞きましたので分かっていますが、此処はお言葉通りに忘れた事に致しましょう。それにしましても、こんなウッカリミスをなさるなんて、何とも可愛らしいですね、チャーちゃんは。

「はい頑張って当ててみたいと思いますが、難しくて分かりません。幾つか質問をしても宜しいでしょうか?」

「うーんと、どうしよっかなー、うーんと、どうしよっかなー、うーんと、どうしよっかなー? そうだね、カーイ君だから特別に許してあげるよ。それじゃあ十回まで質問してもいいよ」

 ケーキは忘れた事にして質問をしないといけませんね。答えを知っているのに知らないフリをするのは難易度高いですね。態とらしくならず、大外れでもない質問を考えなければ。さて、どう攻略すればよいのやら……。頑張って答えを知らないフリをしなくてはいけませんね。

「ありがとうございます。ヒントは『良い物』で、分かりました。答えはチャーちゃんです。チャーちゃんを上回るお土産はありませんので」

「不正解でーす。って違うよー。嬉しいけど、クイズになってないからね。もー真面目に答えてよ、プンプンプンプン」

 チャーちゃんはニコニコしながら両頬を膨らませるという器用な事をなさっています。そんな表情も可愛らしくて好きですけど。

「では改めまして、質問その一、買って来た物は一般的な判断として食べられる物ですか?」

「はい、食べられるよ。ケーキだから」

 答えを言わないで欲しいのですが。そんなウッカリさんも愛おしいです。

「あ」

 どうやら答えを言った事実に気が付いたようですね。最初に正解は提示されてはいましたが。

「ジャーン、正解はケーキでした。簡単な問題だったよね」

 俺、解答してませんよ。自ら正解を示して下さる所は優しいですね。

「それじゃあ早速食べようよ」

「そうですね」


 チャーちゃんと共に台所兼食卓に移動して、ケーキを食べる準備を整えました。

 食卓上の二皿の上に、一方は赤々と輝く大きな苺の乗ったショートケーキ、もう一方はモンブランで白いクリームと黄色いクリームがタップリと乗せられている。値段の事は気にしないが安くは無い代物なのは確実である。

「チャーちゃんが先に選んで下さい」

「え、いいの、ありがとう。うーん、どっちにしようかなー。どっちも美味しそうだし、うーん、どうしよう?」

 悩むでしょう。悩んでる姿も表情をクルクルと変化させて、可愛らしくていいです。存分に悩んでください。


 数分が経過しましたが、チャーちゃんはまだケーキ選べを迷っています。


 更に数分が経ちましたが、チャーちゃんはまだ決めかねていましたが、どうやら決心したようで、真剣な顔をこちらに向けてきました。

「そうだ、二人で半分こにすれば良いんだよね。うん、ボクってば冴えてる」

 そんなに悩む程甲乙がつけ難いんですね。

「それには及びませんよ。どうぞケーキを二つ共お召し上がりください」

「え、いいの? でも駄目だよ。ボク一人だけ美味しいケーキを独り占めするのは悪い事だよ」

 自身の食欲よりも俺の心配をして下さるとは、何て優しいんでしょう。こんなにも優しい彼女を持って俺は幸せ者です。三国一の幸せ者どころか、世界一の幸せ者ですよ。

「俺はケーキっぽい何かを作りますから。先に食べていて下さい」


 食パン一枚を皿に乗せました。

 食パンの正式名称は主食用パンらしいです。

 食パンの上にカステラを乗せて、ヨーグルトを乗せてスプーンで伸ばします。更にその上にイチゴジャムを乗せてスプーンで伸ばします。その上に砂糖を適量散らせば、完成です。名付けて、アッと言う間に出来る偽ケーキ。

 アッと言う間に出来る偽ケーキを食卓に置きました。

「スゴーイ、色の感じはショートケーキにそっくりだね」

 お約束のように、チャーちゃんの右頬にクリームが付いていましたので、拭き取っておきましょう。

 紅茶の準備を忘れていたので準備をしませんと。











 

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