2-6・ 美少女になった蛙娘のミリアは神様と契約して聖女になるってよ!? ・2

蛙人族の結婚式は古沼でするのが習わしなのだという。


全ての古沼は、忍蛙神シノビアシンのおわす古沼に繋がっていると言い伝えられていて、蛙人族はみんな近くの古沼で生まれる。

古沼で忍蛙神に認められた蛙人族は、時に御神託を預かったり、加護を授かったりするらしい。


ルヴァは人間だけど、蛙人族の方式で結婚式をした。

蛙人族の守る古沼で咲く蓮の花は、枯れることが無いのだ。

正確には枯れる。だが、同時に違う花が咲くのだという。何種類もの色や形の蓮が同時に咲くこともある古沼は、永遠の愛と種族繁栄を願うものだとか。


花嫁の白いドレスは不思議素材か魔法なのか、沼の中に入っても少しも汚れなかった。

ルヴァの実家にも報告してあって、そちらでも披露宴をするとのこと。

人間の、それも貴族式ではあるものの、ルヴァの家に伝わるこじんまりとした家族のみの式なのだという。グロリアの父親代わりとしてミリアの父が参加するらしい。


(幸せになって欲しいな)

(『異国婚ならぬ異種族婚か~!

私も大変だった…って、あれ?

そういえばみんな普通に喋ってるけど、言葉は同じなの?』)

(『』)


グロリアとルヴァの古沼での結婚式は滞りなく済み、式の次の日。

この日にミリアは旅立つことになっていた。


ちなみに、私は二人の結婚式にも参加した。

美系だらけになった蛙人族に対して、町の獣人たちは驚きはしたものの、今までの態度とはまったくと言っていいほど変わらなかったそうだ。


町に暮らす一部の人間たちも喜んでくれたらしい。


うん、一部の人間はね…。



前もって許可を出し、準備万端支援したのに、

いよいよというミリアの旅立ちの時が近づくにつれ、寂しすぎて体調を崩し、前日の朝(結婚式の日)に倒れて床に伏せてしまった忍長とは、当然、式でも会えなかった。


「シノビオサァ…」


会いたかったなぁ…


(『残念だね~』)


(『やはり……。どの時代の忍長も少し残念だったからな。黒いし』)


「くろ……」


(うぅ、やっぱり会いたかった…)


「くろちゃん…。」


(『ユーリカの頭に浮かんでいるであろうお笑いのあの人には、たぶん似てないと思うよ?』)


そうかなぁ?


__________________

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ミリアと、お付きの人は合わせて6人。


内2人は冒険者風イケてるメンズ風蛙人族(忍者…侍?)のスケノサブロウ、カクノサブロウ。


もう1人はクールビューティーなお姉さんくノ一の、ユミン。

桃色のオーラが…いい匂いで…

(『三味線の中に例の隠し刀があるのだな…?』)


もう1人は蛙人族と懇意にしている商店の次男坊で、まるまる福福とした商人の猿人、ハッチさん

(『3枚目風だけど、縁起が良い顔してるな~うっかりしそうだけど』)


そのお付きらしき大猿人がヒコザルさん。


(『…なんかスゴい既視感がある集団だな~

 っていうか、まだどこかの屋根とか木の上に、赤いくるくるする何かをピュッって飛ばす人が隠れていそう~?』)


(あ。ほら、ハルカ!見っけ!いたよ!とび…大猿!)


(『隠れてる一人を入れて7人御一行、だな』)


(『これで目的地につくまで同行するヒロイン役のおぼこい女子が現れれば完璧だね~!』)

(『………ユーリカか?』)

(ん?私?私はちがうよ)


だって私はおムネが無いし…


私はミリアのローブをツンツンして、お願いごとをする。


「ミリア、私、ミリアにたまに会いに行ってもいい?」


(いろんな場所に行ってみたいんだよね。データは見せてもらったけど…行ってみたい!)

(『そうか』)

(ミリアたち御一行がいれば怖くないし、色々間違っても(?)安心だし!それに、モロ出しする方が良いかなって)

(『モロ』)

(『だし…?』)


(ほら、翡翠と母樹!あれこそがハルカの言ってたチラリズムかなって)


『たまにちらっと見えるのがイイ』のだと、いつかハルカが言っていたのを思い出しながら、私はまだ平べったいオムネを張って見せる。


(たまにしか見えないから気になって、

見えないから期待が膨らんでより信仰の対象になっちゃうのであって、

モロ見えならそこにあって当たり前の雑草みたいな存在になるんじゃないかなって)


(『いや、それはちょっと無理があるんじゃ…』)


(常にウロチョロしてれば存在感が薄くなってこう…

「あら、あの子また来たのねオホホ』みたいな感じになるでしょ?こう…ご近所付き合い的な?)


(『まぁ、そうなのかも?一理あるの…かもね?』)


(『…あるのか…?』)




「まあ!もちのろんでゲス!

私たちは、ユーリカ様の忠実な信者…奴隷……えっと…シモベ…でゲスから!!」


「あ、そういうのしもべもいらないです~」


またねっとりしそうだったので、即座に小さな結界バリアを張って遮っておく。

「うぅ、ユーリカ様がつれないでゲスぅ」


(よし、じゃぁ、どこにでもドア的なやつをまず個人に登録して…)

人に重なっちゃわないように、その周りに出す『扉』を作り、設定して、キープする。

「すぐにミリアのところに行けるように『登録』するから、ちょっと待ってね?」

私の魔力をミリアの魔力が繋がるように結んで…一ヶ所だけ。

…うーん、難しいな?

普通の転移魔法は場所がわかればできるけど、ミリアに結びつけなきゃいけないからね!

ミリアのがあんまりぐにゃぐにゃには伸びないのか…

ぁ、種みたいに植えればいいか?

ミリアの中の奥の方に私の魔力の種を植える。

「………っ!?~~~~!???」

ミリアは体をもじもじさせて、こちらを見ている。

くすぐったいのかな?涙目だ。


「ちょっとだけだからね、痛くない、痛くないノヨ~。がまんがまん~」


ハルカのよく行くショーニカのカンゴシは、子供を泣き止ませるのがうまかったなぁ、とちょっとだけ上の空になっていると、その内にミリアの魔力床に私の魔力が染み込んで、種が育ち…芽が出て、私の方に伸びてくる。

……よしよし!伸びるね!結んで…完成!

これでミリアたちが物理的にどんどん離れていっても、私の魔力の蔦が自由自在に伸びて、繋がったままになる。


「『ユーリカ・リサリエの名のもとに契約魔法を発動する。

・薬師聖女、ミリアに常し永の加護を与える。

・薬師聖女ミリアが望み、助けを求めるときは私が薬師聖女ミリアの所に『転移』し、力を尽くすこと。

・薬師聖女ミリアの命が危機に瀕した時、私に助けを求めたのと同じ契約が発動すること。

・私は薬師聖女ミリアのところに自由に転移できること』

『以上、4種、契約を締結するか否か、選択せよ』!」


ミリアの目の前に契約書があらわれ、ミリアがそれに頷く。

ミリアと私の額に光が集まり、二人を繋ぐように金色の細い糸が紡がれ、すぅ、と消えた。


(長かった…契約魔法は一息で言わなきゃいけないんだよ)

(『お疲れ~』)

(しーかーもー、薬師聖女って入れないと契約締結できなさそうだったんだよね

 なんでだろ?あ、蛙人族にミリアっていう名前の子が他にもいるのかな?)


恍惚とした顔をしたミリアと、他の蛙人族、町の人たちが私を見て祈りを捧げている…


「ユーリカ…(神)様の奇跡でゲス…」


「ただの契約魔法だよ?」


ミリアは頭を低く低く下げた。

「力無き蛙人族の身なれど『薬師聖女』として、神々からの使命を胸に、人々を助け導きます、でゲス…!!」


(『力…あると思うよ…??』)


(物理でね…)



(この日この光景が、神と眷属や人が契約を交わして奇跡を起こすという有名な絵本に酷似していたこと


それの元となった教会や神殿にあるモザイク画や絵画、演劇の一幕にもやはりそっくりだったということは、

かなり後になってハッチさんから聞いたのだった…。まる。)


うーん、私、神様じゃなくてハイエルフなんだけど。

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