リプレイ48 事実はクソゲーよりクソなり(語り部:JUN)

 せっかく死んだので、復活地点の舞浜駅で他の二人と落ち合った。

 あっ、INAイナもいた。お久しぶり。

 ああ。一緒に行く? そうだね。

 彼女のパーティと合わせて総勢八人の男女で、インパーク。

 ここだけ抜き出すと、リア充っぽいよね、僕ら。

 まあ、枕を並べての、実質死出の旅なんですがね。

 MALIAマリアはエンディングまで駆けつけられるかなって心配してたけど……杞憂だったようだね。ガッデム。

 いや、まだアーカム・バザールのアーケードを抜けて例のルルイエ神殿が見えたばかりなんだけどさ。

 なんか、遠景に蠢く巨大な、どう見ても生物的な動きをしている“なにか”が見えるね。

 何だろう、青魚の質感で無理やりダイダラボッチを成形したような……、

【ダゴンだ。遂に復活した】

 しれっと実体化した九人目のオトモダチが、無慈悲に宣告した。

 凄まじいスピードでこっち来て、ルルイエ神殿をハグしたよ。

 ダゴンがオベリスクを抱きかかえる絵があったけど、まんまだね。

 そのダゴンの頭上を旋回するのは、みすぼらしいナリの巨大ハゲ鷹に乗った、黄色くてウネウネした何か。

 何だよ「みすぼらしいナリで巨大」って。

 自分でも何言ってるのかわからないや。

HARUTOハルトが自らを依り代として降臨させた、ハスターだな】

 ですよねー。

 で、ダゴンが今、ひょいとつまみ上げたのはーー僕らからすれば充分巨大なのだが、タコみたいにウネウネした、樹木みたいなやつ?

【シュブ=ニグラスの眷属たる黒き仔山羊だ】

 ふんふん、なるほどー。

 怪獣大戦争の様相だね。

 生で目の当たりにすると、こう、遠近感だとかがぶっ壊れそうだよ。

 で。

「あー、母なるハイドラも来たんだねー」

【諸君らが仕留め損ねたからな】

「仕留められる前提で話す方がおかしいんだけどね」

【生き延びた以上、伴侶の危機に訪れるのは当然だろう】

 仮にも外なる神のアバターをかぶった奴が、不気味に人間臭い事をのたまう。

 まあ、ニャルラトテップって“外なる神界隈”においては、まだ親しみやすい部類だよね。

 悪辣な謀略で人類を破滅させて嘲笑するとか、ファンとの距離感近いってゆーか?

 アザトースだのヨグ=ソトースは、そもそも人語が通じないばかりか、本当にいたとしたら僕らでは知覚不可能なくらい、よそよそしいし?

 で、どういうわけか“美しすぎて逆に没個性的な黒髪ロングの美少女”が、内側からこねくりまわされるようにトランスフォームしはじめた。何でだよ。

【流石に、この状況はあまりに酷い。ゲームが破綻する。

 我が収拾を付けねばならん】

 巨大なベロに四肢じみた器官生えたみたいな、これまた軟体じみた巨体ーーニャルラトテップの化身が一つ“闇に吠える者”って、あーいうやつ?

 に変身しきって、突然、打ち上げられたロケットみたいにぶっ飛んだ。

 あれは……シーの方向か?

【ヨグ=ソトースの手も借りねばならん】

 やめろォ!

 収拾を付けるとか言いながら、このパーク内で最悪な奴を連れてくるとか、何考えてるんだ。

 このニャルラトテップはバカなの?

 千のかおのうち、脳が一番残念な化身だったわけ?

 で、まあ。

 恐らく“シー”にある絶叫マシーンの石塔タワー・オブ・ヨグ=ソトースにちょっかいかけに行ったんだろう。

 アトラクションの周りに即席の環状列石ストーンサークル作ったりとかして。

 ああ……僕の予想はビンゴだったよ。

 赤、青、黄色、緑……見る度に違う色の、巨大な球状集積体が不規則に絡み合い、どぎつい極彩色を放っている。

 生き物と言うのはおろか、“神”などと言う明確な指向性のある意思に当てはめる事すら生ぬるい。

 やっぱ、アレに比べたらニャルラトテップの本性の姿だの、名状しがたい者だの、ちょっと魚類めいたダイダラボッチだのがマシに思えるね。

 ちょっと、地獄も過ぎると却ってチープになるよね。

 恐怖には鮮度がある、と何かで聞いた気がするけど、全くもってその通りだよ。

 多分さ、HARUTOハルトは【正気度:0】状態のまま、ハスターに取り込まれた視点でコレを眺めてるんだろうなぁ。

 狂死した場合、自分の意思で復活処理しない限りは、その場に居続けられるし。まあ、指一本動かせないけど。

 でも、身体は敬愛するハスターが代わりに動かしてくれるから、問題ないんでしょう。

 こりゃ、確かに“圧勝”だ。

 ラスボス通り越して、ゲームそのものを三流クトゥルフもののクソゲーに貶めてのけた。

 ホント、あの男、こー言うの好きだねぇ。

 さて。

 が来たよ。

 

【諸君らの目撃したものと、それぞれの精神ダメージを以下に纏める】

 

 ・ダゴン【10面ダイス×1】

 ・ハスター&ビヤーキー【100面ダイス×1】

 ・母なるハイドラ【10面ダイス×1】

 ・黒き仔山羊【6面ダイス×1】

 ・ニャルラトテップ(闇に吠える者)【100面ダイス×1】

 ・ヨグ=ソトース【100面ダイス×1】

 

【合計、プレイヤー一人につき、

 100面ダイス×3

 10面ダイス×2

 6面ダイス×2

 尚、MALIAマリアは深きものの種族特性により、ダゴンとハイドラの10面ダイスを6面ダイスに減免される】

 そんなの誤差だよ! もはや!

 そして、ダイスの雨あられが僕らの頭上に降り注ぐ。

 

<精神ダメージ>

 LUNA【138ダメージ(狂死)】

 MALIA【196ダメージ(狂死)】

 MAO【147ダメージ(狂死)】

 JUN【237ダメージ(狂死)】

 INA【152ダメージ(狂死)】

 RYO【199ダメージ(狂死)】

 KEN【167ダメージ(狂死)】

 TOMO【183ダメージ(狂死)】

 

 振るだけ無駄だったろ、これ。

 一人くらい生き残るかな? って淡い期待を抱いたけど……やっぱりダメだったよ。

 僕ら以外の他プレイヤーも、軒並みバタバタ倒れていく。

 どうすんの? コレ。

 復帰しても即、正気が溶けて誰も近付けないぞ。

 世界パークごと閉園かな?

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