リプレイ40 さっさと次行きたいから無題(語り部:MAO)

 さて、ボクがつまらない自分語りをしている間に、他パーティのトラブルはだいたい収まったらしい。

 これで、落ち着いて本来の目的を済ませられるね。

 何って、反逆の神官・トヨグの棺だよ。

 元ネタの“永劫より”では、ミイラの瞳に残留していた思念に触れた博士がフツーに破滅の憂き目をみていたけど。

 まあ、これ所詮はゲームですから。

 ボクらは、この場に居合わせた大勢のプレイヤーが、力を合わせてやっとやっとの思いで棺の蓋をずらした。

 中にはやっぱり、干物になったニンゲンが寝そべっていたよ。

 それで。

 双眸にはまった眼球は、不自然に瑞々しくて、目があったボクに何かを訴えていた。

 

 ーーVR映像が、ボクの視界に無理やりねじ込まれた。

 ーー膨大な苔むした、山のような存在。生き物で言えば口にあたる所から、タコの脚みたいなものが無数に生えた、

 ーー大いなるクトゥルフが、森林を踏み砕きながら頭をもたげる。

 ーー相対する、無数の触手にまみれた大樹のようなナニか。多分、シュブ=ニグラス。

 

 映像は、それだけ。

 これじゃ、何のヒントにもならない。

 まして、ボクらのクエストに関係ないどころか、夢にも思っていない他パーティの人達からすれば。

 やっぱりみんな、ちんぷんかんぷんな様子だ。

 ボクらにしたところで、新しいことは何もわからなかった。

 MALIAマリアねーちゃんのお陰でわかった情報とかぶってしまったのかな。

 けれど。

「……これで充分だ」

 ボクの考えを見透かしたのか、たまたまか、HARUTOハルトさんがまた、要領をえないことを呟いた。

「……日没までもう少し。夜を待とう」

 そんなことも言った。

 この人、案外考えてるように見えて、コミュ力はアレなのかな。

 もう少し、他人に理解させる努力はしようよ。

【なお、諸君らは今のビジョンを信じようとしなかったため、精神に痛手を受けることはなかった】

 ニャルラトテップが、ありがたいことを言った。

 一応、ボス戦後の必須イベントでまで正気度は削りません、という運営としての心遣いかな?

 でも。

 危害ってものは、本来、加えないのが当たり前であって。

 今回は傷つけないでって論法は、虐待とかDVの加害者が相手を支配するそれだよね。

 

 さて。

 あまりに色々挟んで、棚上げになっていてお忘れかもしれないけど。

 HARUTOハルトさんが黒き仔山羊戦でボクを強化するのに使った【T神の啓蒙】のツケが残っている。

 6面ダイス×1の精神ダメージだ。

 

<精神ダメージ>

 HARUTO【6ダメージ(閃き判定)】

 

 うわぁ!

 この期に及んで、だよ。

 

<閃き判定>

 HARUTO(成功率:85)

 【63(成功)】

 

<精神疾患の発症内容>

 HARUTO【心因性の頭痛・嘔吐】

 

 よ、よかった、まだマイルドな症状……なのか?

 見たところ、彼の表情に変化はない。

 頭痛と言われても、どの程度なのか。

 ボクらからすれば、わかりようがないけど。

「……手近な、紙袋は、無いか」

 あっ。

 彼が、にわかに呼吸浅く言い出した。

「急に、そんな、都合のいいもの、ないよ」

 LUNAルナねーちゃんも、なんとなーく嫌な予感を滲ませて答えた。

 で。

 ヴォエェエッ!

 彼は盛大に嘔吐した。

 ああ……テーマパーク散策中に、こんな感じのヒト抱えるとか、ある意味で最悪の状況だ。

「……兎に角、後は、夜を待って、で、下準備うぉえっ、ゲロゲロゲロッ!」

 ……彼の目的地はしらないけど、それより先に、最寄りのレストランで紙袋もらいに行かなきゃ。


<正気度の増減>

 HARUTO【正気度:77→71】

 LUNA【正気度:50】

 MAO【正気度:42】

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