リプレイ24 究極概念(笑)との戦いってか、足手まといとの戦い?(語り部:JUN)
最低限、回復役である僕はダイス結果を流し見る義務があるだろう。
「
これだけ言えば、誰かがフォローしてくれるだろう。
言ってるそばから早速、
僕は鋭く踏み込んで、それを叩き落とす。
同時に、
ロジャーズは、当たり前のように横飛びにそれを回避。
念のため、もう一発。
やっぱりだ。発砲見てから余裕、と言わんばかりのドヤ顔で躱された。
さっきオラボーナを突き飛ばした時の怪力もそうだけど、しれっと知覚と身体能力が強化されているね。
と言うか、僕がトリガーを引いた瞬間を検知して奴の脳に直接信号を送られてすらいるのかもしれない。
頭のおかしい魔術師って設定なのだろうし、まあ、これくらいのテコ入れは当然か。
世紀末ゲームで、強化人間とかそういうの、山ほど見てきたから、もうこんなの見ても何も感じなくなってきたよ。
ちなみにオラボーナは、まあ全身全霊で自分の保身に、文字通り走っている。
まあ、NPCなんて無害なのが一番だ。放っておこう。
「……【T神の啓蒙(リスク:6面ダイス×1)】」
ああ、僕も僕で、急激に知覚を強化されたのが分かる。
情景が、スローモーションのように見える。
ハエから見た世界って、こんなのらしいね。
まあ、銃を蹴り飛ばされ、今度こそ後ろ手に締め上げられたね。魔術行使の隙にあの男から逃げられるほど、世の中甘くはない。
と言うか、あれだな、この光景。
某玩具物語4で、使い捨て先割れスプーンから自作された手作りオモチャが「ボクはゴミなんだー!」と言って嬉しそうにゴミ箱に飛び込もうとするのを、主役のカウボーイ人形が何度も引っ張り戻して「君はゴミじゃない!」って言い聞かせようとするシーンを思い出させるよ。
「離して! ボクに構わずラーン=テゴスを!」
「そうは行かない。VRMMOのパーティ行動に於いて、仲間を見捨てろと言う論理は通用しない」
そうそう。
ホントに甘ったれたお子様だよね。
自分で納得してゴミになりたがる奴を、僕らだってそっとしておいてやりたいけどさ。そうもいかないのよ。
山登りと同じで、それが“パーティ”ってやつ。
キミのせいで、
結果、僕ら三人だけで神話生物と魔術師を同時に相手にしなきゃならない。
キミは、この現実を甘んじて受け止めろ。
さて、ラーン=テゴスの方は。
あの触腕、見た目以上に打撃力もあるのか、一打弾くごとに彼女自体が半ば吹き飛ばされているようだけど、その反動すら利用して、次の触腕を躱している始末だ。
無数の触腕も長さが不揃いだけど、一番長いやつを見極めて、それが届くか届かないかの絶妙な間合いをキープしている。
ムカデのように無数の節足が、人間のそれよりも遥かに小回りの利く旋回性能で彼女の側面へ回り込もうとするが、そういう「生物的な格差」に驕った瞬間こそ、彼女は見逃さず、ついには魚眼の散りばめられた額に偃月刀のひと突きを刺し込んでのけた。
泥水のような、しかし生臭い体液が飛び散る。
探索者が無力な子羊であるべきクトゥルフものにあるまじき光景だ。
深きものの設定を付与した事による強化の成果もあろうが、彼女だけ、プレイしているゲームタイトルを間違えてる感が凄い。
まあ、後はラヴクラフト氏に思う事。
このロジャーズのお話、明らかに皮肉を込めて書いたでしょ。
たった一人の“崇拝者”が、犬を食って生き永らえるような御神体を祭り上げて「ぼくちんの神様はアザトースより強いんだー!」とか、道化以外の何ものでもない。
さて。
昨日、散々酷使されたのだから、今日は楽させてもらえるはずなんだけどね、普通。
僕はざっと周りを見渡して、ちょうどいい長さの布的なものを探した。
無いのなら後付けシステムで無理矢理出させようかと思ったけど……あった、趣味の悪い極彩色のタペストリーが。
僕は、無駄だろうけど拳銃を二発、三発とロジャーズ目掛けて撃ちながら、タペストリーへ飛び付いて、これをかっさらった。
当然のように銃弾を躱したロジャーズが、僕に向かって遮二無二に襲い掛かってくる。
よしよし、飛び道具みたいなものは持ってないな。
「
神話生物と一進一退の攻防を演じてる所、本当に悪いとは思うけど、僕は彼女に無茶振りをした。
これが成功したら、キミも楽になるはずだから大目にみてくれよ。
そして。
断続的な銃声が耳を滅多刺して、マズルフラッシュが網膜を焼く。
彼女の撃ったマシンピストルの
ロジャーズはかなり無茶な身体の捻り方をして、火線のほとんどを潜り抜けたけど、一発がふくらはぎの裏を穿った。
僕は奴にタペストリーを投げつけて、頭から被せてやる。
それをうるさそうに振り払われるよりも早く、僕は奴の土手っ腹にパンチを突き入れてやる。
タペストリーの下。
僕の拳が、刃物のような貫通力で、奴の胴体を突き破った。
コトは全てタペストリーの下で行われ、仲間達の目には見えない。
【ゴルゴロス的・
15秒間、自分の身体を思いのままに変形・変質させられる。
ただし、変化内容は、ある程度医学的な理にかなっている必要があり、あらかじめニャルラトテップの承認を受けねばならない。
また、肉体の変質を目撃した者には全て、6面ダイス×1の精神ダメージを課せられる】
仲間に無駄な精神ダメージを出さないための、タペストリーってわけ。
誰かさんと違って、その程度の思慮はあるもんでね。
僕はダメ押しに、ロジャーズの体内に刺さった自分の手を更に変形させて、内側から五臓を粉砕してやる。
で、早々に元の姿に戻した手を引き抜いた。
血まみれだけど、ちゃんとした人間の手だ。種も仕掛けもございません。
流石にこれには狂える“神官”もたまらずよろめき、前屈みに苦しむけど。
オートマチック拳銃とは比べ物にならない重みの銃声。象の喘鳴のように濁ったそれだ。
ひときわ激しいマズルフラッシュで博物館が照らされたと同時に、神官の宇宙的叡知に満ち満ちた脳天が、スイカみたいに割れ砕けた。
さて、あとは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます