リプレイ11 とあるお食事風景について(語り部:MALIA)

 たいへん、ご迷惑をおかけしました。

 わたしが目覚めた時、もうすぐお昼を回る時間帯になっていました。

 パーク内は、今や人が飽和状態です。

 レストランは事前予約しておかないとほとんど取れないので、アトラクションガッツリスタンスで回りたい人は屋台やキッチンカーのファストフードを利用するのがおすすめです。

 それも長蛇の列になっていますけど、提供の回転が早いのでトータル待ち時間は短くすむのです。

 けど、ポップコーンの列はそれを考慮しても待たされますね。

 屋台によってフレーバーの味がちがいますし、何より限定のポップコーンボックスこそが真の目的って人は多いかと。

 あそこではミ=ゴをモチーフにした限定ボックスが売っていますね。頭から露出したポップコーンが、脳みそみたいで雰囲気出てます。

 わたしは買いませんけど。

 とりあえず、わたしたちは手分けしてお昼ごはんを買いました。

 わたしは“ピックまん”という、お食事中のグールの頭部をモチーフにしたピザまんを買ってきました。

 ピックまんのモデルはピックマンのモデルって、なかなかシャレがきいてますね。

 名前に惹かれて買ってから、少しだけ後悔しないでもありませんでしたが。

 それと、JUNジュンさんが、黄金の蜜蜂酒をイメージした冷たいハニードリンク(ほんのりゆず風味)を買ってきてくれました。

 うれしいです。わたしこれ、好きなんです。

 ただ、このラヴクラフトリゾートでは、待ち時間だとか以外にも、お店選びに気をつけないとひどい目に遭います。

 わたしたちが買ったこれらは、当然、元ネタをイメージしたものでしかありません。

 見た目はさておき、真っ当な飲食物です。

 例えばこのハニードリンクを飲んだからといって、幻視ができるなんてこともありません。

 けれど、たまーに“本物”を出すお店が、ほかの無害なお店と軒を連ねてしれっとまざっていることもあります。

 別パークの“シー”にあるインスマスエリアの例で恐縮なのですが、古今東西どんな図鑑にも載っていないお魚の野菜ソースがけポワレとか。

 しかもそれは料理されてもなお生きていて……食べようとしたら目玉がギョロりと!

 ひぃぃぃぃ、思い出しただけでこわいです。

 ちなみにそれの元ネタは、舞台が日本版の蔭洲升インスマスを覆う影だったと思います。

 

 さて、おなかも膨れました。

 あとは“パレード”がはじまるまで待つだけです。

 王港キングスポート・エリアという、港町風のエリアで、クトゥルフ召喚パレードが開催されるそうです。

 ……あれ? 今回のわたしたちって、ダゴンの復活をたくらむ教団と戦ってるんですよね?

 で、たしかそのダゴンって、クトゥルフの手下だったような……?

 当面の宿敵より上位の存在が、ゲリライベント的にぽんぽん出されていいものなのでしょうか?

 でも、それだけの騒ぎになれば、まず裏通りでドンパチしても怪しまれることはないでしょう。

 準備万端。

 さあ、謎の“組織”が待つ王港へといきましょう!

 

 それと、休憩がてらもうひとつ。

「ねえ。ニャルラトテップのアバター、変えない?」

 グールの頭(みたいなピザまん)をむしゃむしゃしていたLUNAルナさんが、唐突に言いました。

「……自分は別に構わないが。現状では不満か」

「うーん。デフォルト設定というのも、なんだか味気ないし。他パーティのニャルラトテップとかぶる事多そうだし」

「前者はともかく、後者は利便性から言ってもっともだね。

 ま、それなら手っ取り早く変えちゃいましょう」

 JUNジュンさんが、手をぱちぱち叩いて、

「いあいあ、にゃるちゃん、にゃるちゃんよ、と。

 キミのアバター、若くてカワイイ女の子にでも変えてくんない」

「ちょっとJUNジュン、なし崩し的に勝手に決めないでよ!」

 どうやら、この場で反発したのは……LUNAルナさんだけでした。

 わたしも、特にこだわりはありませんし、ほかのみんなもそうなのでしょう。

 そういうLUNAルナさんも、本気で怒ってるわけではなさそうですし。代案もないのでしょう。

 そして。

 みなさんが言うところの“ペプシマンもどき”の姿をしたニャルラトテップが出てきて、手品みたいな手振りをしました。

 次の瞬間。

 

 長い黒髪をなびかせた、綺麗な顔立ちの、お人形さんみたいな女の子に早変わり!

 

 あ、あれ?

 また、ちょっと顔立ちの幼い黒髪ロングキャラ?

【これで満足かな? 君達日本人の最大公約数的な需要から、均整のとれたアバターを生成したのだが】

 LUNAルナさんが、膨れっ面になりました。

「なんか、ムカつく言い種。まあ、これでもいいけどさ……」

 これ以降、わたしたちのニャルラトテップは、長い髪の女の子となりました。

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