カガミ

私は鏡が嫌いだった。鏡に映る自分の顔が嫌いだった。どうしても自分に自信が持てなかった。友達も少なく、学校でも目立たない存在だった。そんな私にとって、鏡は自分の劣等感を煽るだけのものだった。


ある日、私は家で一人で過ごしていた。両親は仕事で留守だったし、兄は大学に行っていた。私は部屋で本を読んで時間をつぶしていた。すると、突然電話が鳴った。電話に出ると、兄からだった。


「おい、今家に誰かいるか?」


「え?いや、一人だけど」


「そうか…じゃあ聞いてくれよ」


兄は不安げな声で言った。


「今日さ、大学で変なことが起きたんだ」


「変なことって何?」


「俺の友達がさ、鏡に映る自分の顔が急に変わってしまったんだよ」


「え?どういうこと?」


「わからないよ…でも本当らしいよ。俺も見せてもらったけど、本当に別人みたいになってたよ」


「それって…怖くない?」


「怖くて仕方ないよ…しかもその友達さ、その後気分が悪くなって倒れちゃったんだ」


「え!大丈夫?」


「今病院に運ばれてる最中らしいよ…でも何か不気味なこと言ってたよ」


「何って?」


「『鏡の中の顔が笑ってる』って…」

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