ホラー小話(失踪)

おもろいやん星人

キエタコエ

「もしもし、大丈夫?」

電話の向こうから、心配そうな声が聞こえた。

「あ、ごめん。ちょっと気分が悪くて…」

私は弱々しく答えた。

「熱でもあるの?医者に行った方がいいよ」

「いや、そうじゃなくて…」

私は言葉を詰まらせた。

どうやって説明すればいいのだろう。

私は最近、自分の声が消えていく感覚に悩まされていた。

声を出そうとしても、かすれて聞こえなかったり、全く出なかったりするのだ。

最初は風邪かと思っていたが、どんどんひどくなってきて、今では電話で話すのも困難になっている。

「そうじゃなくてって何?何かあったら言ってよ」

電話の向こうから、友人の真奈美が促した。

真奈美は私の幼馴染で、唯一心を許せる人だった。

彼女にだけは本当のことを話した方がいいかもしれないと思った。

「実は…私…声が出なくなりつつあるんだ」

私は必死に言葉を絞り出した。

「え?声が出なくなるってどういうこと?」

真奈美は驚きと不安を混ぜた声で尋ねた。

「わからない…でも本当にそうなんだ。最近どんどん声が小さくなってきて…今日も学校で先生に呼ばれて答えようとしたら…全然聞こえなかったんだよ…みんなに変だと思われちゃったよ…」

私は涙声で訴えた。

「それは大変だね…でも原因は何かわからないの?」

真奈美は同情しつつも探究心を示した。

「わからないよ…医者に行っても異常が見つからなかったし…何か呪われてるみたいで怖いよ…」

私は震える声で言った。


その時、電話が切れた。


ビービーという音が耳に響き渡った。


「あれ?真奈美?真奈美!」

私は慌てて叫んだ。


しかし、返事は無かった。


通信障害か何かだろうかと思って再度ダイヤルしようとした時、


冷や汗が噴き出した。


画面に表示されている番号を見て、


恐怖に震え上がった。


それは、


真奈美では無く、


自分自身の番号だっ


《終》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る