価値
「あなたは価値がありますか?」 彼は私にそう尋ねた。私たちは、同じ会社に勤めている。私は彼の上司だった。 「価値があると思います」 私は答えた。私は自分の仕事に誇りを持っている。成果や評価も高く、貢献や責任も大きい。 「そうですか。でも、あなたが今ここにいることも、本当に価値があるのですか?」 彼は微笑んだ。彼は私より少し年下で、野心的で才能ある目をしていた。 「どういう意味ですか?」 私は不思議に思った。 「あなたがこの会社に入った理由は何ですか?」 彼は聞き返した。 「チャンスですよ。この会社では素晴らしいビジネスやプロジェクトが行われています。それらに参加できることが魅力でした」 私は答えた。私はこの会社でキャリアを築いてきた。 「それでは、あなたがこの部署に配属された理由は何ですか?」 彼はさらに聞いてきた。 「適性ですよ。自分の能力や経験に合った部署だと思います」 私は答えた。他に特別な理由はなかった。 「それだけでしょうか?もしかしたら、あなたがこの部署を選ばれたのも、何かの利害ではないでしょうか?もしかしたら、あなたと私が出会うことも、何かの利害ではないでしょうか?」 彼は真剣に言った。
私は黙って考え込んだ。確かに、偶然という言葉では説明しきれないような関係性があった。彼と話していると、競争や脅威を感じてしまう気持ちがした。まるで敵対する人のようだった。
でも、それが価値だと言えるのだろうか?そんなことを考えてしまったら、自分の信念や目標が揺らぎ始めてしまわないだろうか?
「ごめんなさい。わからないです」 私は正直に言った。 「わからなくても構わないですよ」 彼は優しく言った。 「でも、一つだけ言わせてください。あなただけが決められることがあります」
「何ですか?」 私は尋ねた。
電話が鳴った。
彼は立ち上がり、受話器を取った。
そして振り返って言っただ。
「この部署から辞めるかどうか」
受話器から聞こえる声を聞いて驚愕した。
それは社長からの内示だっ
《終》
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