カメとウサギ

ある日、カメとウサギが森で出会いました。カメはウサギに挨拶をしましたが、ウサギはカメを見下して言いました。


「お前なんか、足が遅くてつまらない動物だな。俺は速くて賢くてかっこいい動物だぞ。」


 カメはウサギの言葉に怒りましたが、冷静に言い返しました。


「そんなことを言っても、本当に速いのはどっちかわからないよ。じゃあ、競争してみようじゃないか。」


 ウサギはカメの提案に驚きましたが、笑って承知しました。


「いいだろう。勝負だ。どこまで走るんだ?」


 カメは森の中を見回して言いました。


「あそこに見える山の頂上までだ。先に着いた方が勝ちだ。」


 ウサギは山を見て高笑いしました。


「それじゃあ、お前には無理だな。俺はあっという間に着くぞ。」


 そう言って、ウサギは一目散に走り出しました。カメも必死に後を追いましたが、やはり遅くてすぐに置き去りにされてしまいました。


 しかし、ウサギは途中で油断しました。山の頂上まではまだ遠く、カメなど相手ではないと思って、休憩することにしました。


「ふぅ、暑いな。ちょっと休んでから行こうかな。カメなんか来るわけないしな。」


 そう言って、ウサギは木陰で眠り始めました。


 その頃、カメは一生懸命走っていました。汗を流しながらも諦めませんでした。


「ウサギさんより速く走れるわけじゃないけど、最後までやり遂げることが大事だと思うんだ。それが自分の信念だからね。」


 そう言って、カメは一歩一歩前進して行きました。


 やがて、カメは山の頂上に到着しました。そこで目に飛び込んできたものは・・・


「えっ?ウサギさん?寝てる?」


 そうです。ウサギはまだ眠っていたのです。


 カメは驚きつつも喜びました。


「やった!勝った!私が勝った!」


 そして大声で叫びました。


「私が先に着きましたよ!私の勝ちですよ!起きてくださいよ!」


 その声でやっと目覚めたウサギは慌てて立ち上がりました。


「え?何?何?何が起きた?」


 そして周りを見回しましたが・・・


「あれ?山の頂上?俺・・・負けた?負けたのか・・・?」


 そうです。ウサギは負けたのです。


 カメは優しく微笑みながら言いました。


「速さだけじゃなくて根性も大事ですよね。これからも仲良くしましょうね。」


《終》

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