選択
私は、ある日突然、自分の人生について考えるようになった。私は今まで何をしてきたのだろうか。私は今まで何を選んできたのだろうか。私はこれから何を選ぶべきなのだろうか。
私は普通のサラリーマンだった。毎日同じように会社に行き、同じように仕事をこなし、同じように帰宅する。家では妻と子供と一緒に食事をし、テレビを見て寝る。休日は買い物や映画やレストランに行く。特別な趣味もなく、特別な夢もなく、特別な悩みもなく、平凡で安定した生活を送っていた。
しかし、ある日会社で上司から呼び出された。上司は私に海外赴任の話を持ちかけた。海外では新しいプロジェクトが始まり、そこで活躍できる人材が必要だという。私はそのプロジェクトに関わっていたので、候補者として選ばれたらしい。
海外赴任と聞いて、私は驚いた。私は今まで海外に行ったこともなければ、英語も話せなかった。海外で働くことなど想像もつかなかった。それに家族のこともあった。妻は専業主婦で子供は小学校に通っていた。家族を連れて行くことも考えられるが、それは大変な負担だろう。
上司は私に一週間の猶予を与えてくれた。その間に決めて欲しいと言った。私は帰宅して妻に相談したが、妻も迷っていた。子供の教育や自分の仕事や友人や親戚との関係など色々考えると決められなかった。
一週間が過ぎても決断できなかった私は上司に延期を頼んだが断られた。上司は厳しく言った。「これはあなただけの問題ではありません。会社やプロジェクトやチームメートやお客様や家族や自分自身の問題です。あなただけが答えを出せるわけではありませんが、あなただけが選択しなければいけません」
その言葉に圧倒されてしまった私は無言で頷いただけだった。
そしてその日の夜、私はベッドで眠れずに悩んだ。「どちらを選んでも後悔するだろう」と思った。「どちらを選んでも失うものがある」と思った。「どちらを選んでも正解ではない」と思っ
《終》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます