芋煮会の終焉

~side冬梨&バラムツ~ 


 兼続が美春の胸の谷間に挟まったコンニャクの対処に四苦八苦していた頃、冬梨とバラムツの2名も秋乃と千夏の「あーん」攻撃と美春の兼続へのラッキースケベを目撃していた。


「ムムム…。冬梨ちゃん、これは強敵出現かもしれませんね」


「…あの3人、もしかして兼続の事が好き?」


「その可能性は高いと思いますよ。普通好きな人以外に『あーん』なんてしませんし、胸の谷間に挟まったコンニャクをとって欲しいなんて言いません」


「…ぐぬぬ。あの3人が相手じゃ流石に冬梨でも分が悪い」


「大丈夫ですよ冬梨ちゃん、冬梨ちゃんだって可愛いんですから。ワタクシも全力でお手伝いします」


 冬梨は自分の気持ちに気づいた後、なんとか彼との仲を深めようと独自に色々行動していた。だが元々彼女はコミュ障気味なので、兼続との関係は中々進展しなかった。それを見かねた親友であるバラムツも冬梨の恋路を手伝う。


「…どうすればいい?」


「とりあえず冬梨ちゃんもあの中に入っちゃいましょう。ここでじっとしていても、おにーさんとの関係は深まりませんし、むしろあの3人にリードされるだけです」


「…でも兼続の左右に秋乃と千夏、前方に美春がいるせいで冬梨の入れる場所がない」


「何言ってるんですか。冬梨ちゃんの特等席が空いてるじゃないですか。いいですかゴニョゴニョ…」


 バラムツは冬梨に何やら耳打ちするとニヤリと笑う。そしてそれを聞いた冬梨はまるで天啓を得たかのような顔をした。


「…! バラムツ天才! その手があったか!」


「フッフッフ。これは冬梨ちゃんにしかできないでしょう?」


 2人は揃って悪い顔をしながら兼続の方を見て笑った。



○○〇



~side兼続~


 美春先輩の胸の谷間に入ったコンニャクをとった後、俺の周りには秋乃、千夏、美春先輩の3人が椅子に座ってダベっていた。…この3人何で俺の所にばかりいるんだろう。せっかくみんながいるんだから他の人とも色々話してくればいいのに。


 俺の方が移動しようとしても、何故か3人が引き留めてきて席に座らされる。…別にこのままでも構わんけどね。


 ふと気づくと、冬梨がこちらに向かってきているのが見えた。彼女は俺と目が合うとそのままトトトと俺に駆け寄って来る。


「どうした冬梨?」


「…冬梨も座りたい」


 俺たちが今座っている椅子は芋煮会のために女子寮の倉庫から出してきたものだが、4人分しかなかった。今4つとも使っているので冬梨が座るには誰かが椅子から立ち上がらなくてはならない。仕方ない。ここは俺が立ち上がるか。


 俺は冬梨に席を開けるために立ち上がろうとした。しかし、それは冬梨に制止される。


「…兼続はそのままステイ」


 どういうことだ? 冬梨が椅子に座るには誰かが立ち上がらないといけないぞ。俺が疑問に思っていると彼女はその小さな体を上手い事もぐりこませ、俺の膝の上に座った。


「…ここは冬梨の特等席」


「…えっと」


 いやぁ、確かに何度か冬梨にはやった事あるけど、人目のある所でやるとなると恥ずかしい。…何故かバラムツさんがこちらに向かって親指を立てている。グッジョブ? なんだろうな?


「ふ、冬梨ちゃん? 兼続君が重たそうにしてるから降りた方が良いんじゃない?」


 俺の隣にいた秋乃が苦言を呈する。冬梨は軽いから別に膝の上に乗ってても負担にはならないのだが…如何せんこの状態のままでいるのは少し恥ずかしい。


「…兼続、重いの?」


「いや、全然」


「…兼続はそう言っている。冬梨は秋乃と違って軽いから大丈夫。15キロぐらい違うし」


「グッ…//// 何故私の体重を…////」


「…秋乃はお風呂上がりによく体重計に乗ってスイッチを切り忘れているからすぐわかる」


「あああ。それが理由かぁ~~~/////」


 女子寮のお風呂場にある体重計はデジタル式で、体重を測った後にスイッチを切らないと測った体重がそのままずっと表示されている。どうやらそれでバレてしまったらしい。秋乃は自分の体重が重い事を暴露されて恥ずかしさで机に突っ伏してしまった。


「…兼続、ついでに芋煮食べさせて。あーん」


 冬梨は俺の膝の上に乗ったまま、芋煮を食べさせて欲しいと口を開けて来た。う、うーん。人前で食べさせるの恥ずかしいんだが…。


「…じゃあ私が食べさせてあげるわ。はい、あーん」


 今度は千夏が冬梨の口に里芋を持っていく。


「…冬梨は兼続が良い」


「あなたねぇ…兼続の膝の上に乗ってその上彼に食べさせてもらおうなんてちょっとうらやま…ゴホンッ/// 我儘すぎない?」


「…兼続、ダメ?」


 冬梨はウルウルと懇願の眼差しを俺に向けて来た。ああ、もうしゃあないなぁ。


「ほらよ。口開けろ」


「…わーい。流石兼続!」


 冬梨は俺の箸からモキュモキュと里芋を食べる。相変わらずなんか小動物に餌付けしている気分になるな…。可愛いちゃ可愛いけど。


「かねつぐー? あたしにも食べさせてー?」


「先輩は自分で食べて下さいよ!?」


 なんだこの人たちは!? なんで俺に食べさせて欲しいなんて言ってくるんだ!? ワケが分からんよ!? 誰か助けてくれ!?



○○〇



~side another~


「うわぁ…凄いですね。先輩…」


「まさか4人共落としてやがったのか…。天然のジゴロだな。というかあいつ、あそこまでされて分からないのか?」


「先輩は自己評価低めですからねぇ…」


「そういえば中学・高校時代はまったくモテなかったと言ってたな。そのせいか?」


 高広と定満はイチャイチャする5人の様子を少し離れたところで呆れながら見ていた。彼女持ちの2人からすると4女神が兼続に好意があるのはどうみても明らかなのだが、残念ながら童貞の兼続は彼女たちの好意に全く気づいていないらしい。


「ま、面白そうだし。しばらく様子を見てあいつが悩んでいる様なら手助けしてやるか」


「そうですね」



○○〇



~side???~


「へぇ~、面白そうな事になってるじゃん。あの4人を出し抜いてあいつを私に惚れさせるのも面白そうね。あぁ~ますます楽しみになって来たわぁ。どうやってあの童貞坊やを落としてやろうかしら?」



○○〇


すいません、今度は少し短くなっちゃいました。3000字前後になるようにまとめるのって中々難しいですね。


次の更新は11/21(月)です


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