千夏アタック!

 10月2週目の日曜日、俺は自室で悩んでいた。その内容は千夏のトラウマをどう解消したらいいのかという事である。俺がこの女子寮にいる理由である「4女神に彼氏が出来ない理由の解決」という目的は他の3女神については解決の糸口が見えた。


 しかし千夏だけは中々解決の糸口が見いだせないでいた。他の3人と違って若干理由が重い。この前寮長に「とりあえず何故そのトラウマを抱えるようになったかを聞いてみろ」と言われたけど、トラウマなんてそんな簡単に話してくれるものなのかなぁ…。人によっては一生思い出したくもない思い出の可能性もある。


 まぁ…とりあえずそれとなく聞いてみるか。でないといつまでたっても彼女の問題を解決できない。聞いてみてダメな様ならその時は別の手段を考えよう。


 そう思い立った俺は2階の千夏の部屋を尋ねるべく動いた。



○○〇



 女子寮の2階にやってきた俺は左から2番目のドアをノックして中の住人を呼び出す。


「千夏ー? いるかー?」


「そ、その声は兼続!? ちょ、ちょっと待って!!!//////」


 ドシーン! バタンバタン!


 中から千夏がこけるような音とそれに伴い何かが倒れる音が聞こえる。大丈夫か千夏の奴…? 心配になった俺は千夏の部屋の扉を開けた。


「千夏!? 大丈夫か? すまん、開けるぞ?」


「あっ…///////」


 扉を開けた俺の目に飛び込んできた光景…それは下着姿の千夏が大量のゴミ袋の上で尻もちをついている姿だった。また沢山ゴミを溜めたもんだなぁ…。以前に比べると部屋の床に直接捨てるんじゃなくてゴミ袋の中に捨てているだけマシだけど。


「またこんなにゴミ溜めてんのかよ…」


 俺は呆れながら千夏の部屋を見渡す。ひぃふぅみぃ…10袋か。もしかして…以前に掃除を手伝った時からずっと溜め込んでたとか? 前に掃除を手伝ったのが2カ月ほど前だからそれくらい溜まってても…でも2カ月でゴミ袋(大)が10袋分も溜まるか? 俺でも1カ月1袋ぐらいだった気がするのだが…。


 半透明のゴミ袋の中を見るとお菓子の袋が大半なように思われる。…こんだけお菓子を食べて太らないのもある意味才能だな。


 俺は下着姿の彼女をチラ見するが、相変わらず見事なひんにゅ…ゲフンゲフン、スレンダーな姿をしていらっしゃる。そしてお馴染みの色気のない980円の下着。


 所謂ラッキースケベという状況だが…俺の心には何のトキメキも起きなかった。ため息を吐きながら近くにあったゴミ袋を1つとる。


「とりあえずゴミ袋は下の階に降ろしておくから、来週の火曜の燃えるゴミの日にキチンと出しておけよ」


「最初に言うのがそれ!? なんで私の下着姿を見といて何の反応もないのよ!?」


「いやぁ…。それは…その…それよりゴミの処理が先だろ!」


 流石に面と向かって色気が無いからなんて言えない。返答に困った俺は話を反らす事にした。


「それに関してはありがたいけど…」


「俺が戻って来るまでに着替えとけよ」


「うん…」


 俺はゴミ袋をいくつか持って下の階に運んだ。そして再び千夏の部屋に戻ってくると彼女はTシャツとショーパンを穿いていた。


「こけた時にケガはしてないのか? ゴミ袋をいくつも溜めるからだぞ」


「うっ…それに関しては反省してるわ。これからは3つ溜まるごとに持っていくことにする」


「1つ溜まったら持って行けよ!?」


 彼女は大学では完璧なクール系美少女なのだが、ひとたび相手がだらけている姿を見せても問題ないと判断するとこのようにグダグダになってしまうのである。それだけ俺に心を開いてくれているって事なのだろうが。


「そういえば私に何の用だったの?」


「ああ…いや、久々に千夏と遊びたいなぁ~と思って」


 彼女のトラウマについて聞きに来たのだが、いきなり聞くのはどうかと思った。なので喫茶店にでも行って世間話のついでに聞き出そうと思って誘ったのだ。


「えっ?//////(えっと…これって…デートのお誘い…よね? まさか兼続が自分から誘ってくれるなんて…/// もしかして私の事好きなの? いや、でもさっきの私の下着姿見ても全然興奮してる様子なかったし、ただ単に遊びたいだけ? なんだか悔しいわね…。そうだわ…良い事思いついちゃった!)」


「今日は都合が悪かったか?」


「う、ううん//// 大丈夫よ。私も久々に兼続とデー…遊びたかったの。買いたい物もあるし『色バラ』に行かない?」


「『色バラ』に? 別にいいけど」


 色バラなら中に休憩できるエリアもあるし問題ないか。でも買いたいものって何だろうな? 千夏は基本的に自分の欲しい物はam@jonで買っているイメージがあるが。


「じゃあ決まりね。今が朝の11時だから…。そうね…13時に色バラに集合ね」


「分かった」


 俺は千夏と約束を交わすと彼女の部屋を後にした。



○○〇



 13時、俺は色バラで千夏と合流する。


「おっす!」


「あ、来た来た。こっちよー」


 千夏は俺の姿を見かけるとはしゃぎながら手を振って来る。今日の彼女は秋らしいコーディネートに身を包んでいた。とてもよく似合っている。


「服、良く似合ってるよ」


「そ、そう/// ありがとう…////」


 彼女は俺が服を褒めると顔を横に背けながら礼を言ってきた。褒められるのは相変わらず照れくさいらしい。


「それで…何を買いたいんだ?」


「それは…ついてからのお楽しみよ」


 人差し指を唇に当てウィンクをしながら私に付いて来てと促してくる千夏。はて、どこに行くのだろうか? 彼女は『色バラ』店内に入るとエスカレーターに乗って2階へ行く。俺も彼女に続いてエスカレーターに乗った。



○○〇



「ってここランジェリーショップじゃねーか!?」


 千夏が向かった先は色とりどりの女性用の下着が並ぶランジェリーショップだった。えっ、千夏が買いたい物って下着? なんで俺を誘ったんだ?


「ちょ…千夏さん!? ここ俺が入っていい場所じゃないと思うんですけど…」


 男の俺がこういう所に入るのは禁忌感がある。店内には俺たちの他に何人か女性客がいた。俺の方を迷惑そうな顔でチラチラと見て来る。…これセクハラとかで訴えられたりしないよな? 


 俺が焦りながら千夏にそう尋ねると彼女はニッコリと笑ってこう言った。


「ねぇ兼続、あなた夏休みの初めの『下着ファッションショー』で私の下着馬鹿にしたわよね? それにさっきも」


「いや、俺は別に馬鹿にしたワケじゃ…」


「いいえ、あの顔は『こいつ色気ねぇなぁ…この無乳女め! 下着も安物だし!』みたいな顔だったわ! 分かってるんだから! …グスン」


「わざわざ自分でダメージを受ける様な事を言うなよ…」


「だから…兼続、あなたに『男の子がグッとくるような下着』を選んで欲しいのよ…/// 私じゃよく分からないから////」


 千夏は顔を赤らめながら俺にそう言ってくる。えぇ…それマジで言ってんの? たかが友達に過ぎない俺に下着を選べと? こういうのって普通彼氏とかに選んでもらうんじゃないのか?


「て、店員さんに聞いてみたら?」


「あ、あなたに選んで欲しいのよ…////」


 これは困った。下着を選べと言われても俺もそんなに知識があるわけじゃないからな。男の子の好きそうな下着を選んでと言われても、その人の好みによって千差万別なのだ。下着ならなんでもOKと言う人から、スポブラが好き、はたまたスケスケが好きetcetc…。俺の好みが全ての男子に当てはまるわけでもない。


「と、とりあえずこういうのでいいんじゃないか?」


 俺は近くにあったよくあるレースの下着を指さした。


「兼続はそういうのが好きなの? 分かった…じゃあ試着してくるから兼続もチェックしてよ?////」


 千夏は俺が指さした下着を持って試着室に入る。ん…? この人今なんて言った? 試着してくるまではいい。サイズが合わないと買っても損をするだけだからな。


 問題はその後、この人俺にチェックしてくれとか言わなかったか? 俺がチェックする必要あるのか?


 数分後、試着室に入った千夏がカーテンを開けた。レースの下着を付けた千夏の姿が目に入る。綺麗だ。一目見た瞬間そう思った。


 千夏は胸こそないが…胸以外のスタイルは意外と良い。白くて触るとスベスベしてそうな肌とくびれのある腰、そしてお尻の方は意外と大きい。やはりキチンとした下着を着ると、千夏にも相応に色気があるように感じた。


「ど、どう?////」


「い、いいんじゃないか?///」


「そ、そう思うならちゃんとこっちみなさいよ////」


 俺は彼女の方を見れないでいた。凝視すると前かがみになってしまいそうだったからである。だが彼女は俺の態度が気に入らなかったのか、俺の顔を両手でつかむと無理やり自分の方を向かせた。俺の目に千夏の下着姿がくっきりと映る。


「どう?/////」


「わかった。似合ってる。むっちゃ似合ってるから!//// だから手を放してくれ////」


「そ、そう?/// じゃあこれを買うわね////」


 千夏はそう言うと俺から手を離してカーテンを閉じた。ホッ…助かった。俺はため息を吐いて安堵した。これで下着選びも終わったか。


 しかし俺が安心していると、千夏が更衣室から首だけを出してこう言った。


「あっ、あと4着ぐらい買うからヨロシクね!」


 なんですと!? 俺はあと4回もあの経験をしなくてはいけないのか…。もってくれよ俺の精神…。俺は精神を安定させるべくその場で深呼吸した。



○○〇


すいません、次回の更新なのですがまたちょっと忙しいので11/25(土)は1回お休みにさせていただいて、次回の更新は11/27(月)となります。


※作者からのお願い


もし当作品を読んで1回でも笑われたり展開が面白いと思って下さったなら♡や☆での評価をお願いします。作者のモチベにつながります。

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