カフェでの雑談
俺と諏訪さんは大学内にあるカフェに来ていた。2人用の席が空いていたのでそこに座る。
「えっと…何を頼もうかな? 今日はアールグレイでも頼むか」
「東坂君って紅茶飲むんですね。意外です」
「えっ? そんなに俺が紅茶飲むの意外かな?」
俺は紅茶もコーヒーも結構飲むタイプである。…俺ってどんな風に見られてるんだろう。正直高校あたりで自分のモテなさに絶望してから大学で女子寮に行くまで女性との接点が碌に無かったからな。俺への女性のイメージというのがまるで分からない。悪くはない…と思いたいのだが。
「そうですね…私の中だと東坂君はプロテイン入りの飲み物を飲んでいるイメージでした。結構筋肉質だし」
「そうなの? 確かにそういうのも飲むけど紅茶も飲むよ? というかカフェにプロテイン入りの飲み物は流石に置いてないでしょ?」
「ありますよ? ほら、あそこの張り紙に…プロテイン入り抹茶、プロテイン入り飲むヨーグルト…」
「ホントだ!? いつの間に!?」
俺が知らない間にカフェのメニューが増えていた。その張り紙をよく読むと小さい文字で『「マッスル理論」講師、中山景虎寮長の強い要望により追加しました。これを飲んで男も女もマッスルマッスル!』と書いてある。アイツのせいかよ!?
寮長から文化祭の喫茶店で女神たちを守る役目があると言われてから、俺は自分を鍛え直すために男子寮の筋トレに再び参加していた。もちろん筋トレする過程でプロテイン入りの飲み物も飲んではいるが…俺ってそんなに筋トレマニアな印象なのか? 折角だし聞いてみるか…。
「俺ってそんなに筋トレ好きな印象なの?」
「うーん…私は東坂君がよく大学の外周を走ったりしてトレーニングしているのを見ているのからそんな印象がありますね」
あー…ダイエットのためにやっていたランニングを見られてたのか。ちょっと恥ずかしい。
「私はあんまり運動ができないから…大学の外周を休まずに走れる東坂君は凄いと思います」
彼女は俺を下からのぞき込むように上目遣いでそう言ってくる。うむむ…女子からこういう風に言われると嬉しいものがあるな。だが嬉しかった半面…恥ずかしくもあったので俺は彼女から顔を反らした。そして話題を変えるために俺は切り出す。
「す、諏訪さんは何頼むの?」
「私は…カフェラテかな? ここのカフェのカフェラテって凄くクリーミーで美味しいの! 1人だと恥ずかしくて中々カフェに来れないんだけど、今日は東坂君がいてくれたから入れました!」
あー…なるほど、先ほど諏訪さんがカフェに行けるって喜んでいたのはこれが理由か。…まぁ俺と行けるからってんで喜んでたわけはないよな。
「それ分かる。なんかカフェみたいなオシャレな場所って1人だと入りにくいよな?」
ファーストフード店なんかはともかく、カフェみたいなオシャレな場所は友達と一緒じゃないと入りにくいというのは凄く分かる。
…氏政なんかは1人で寿司屋に入ったり1人でディ〇ニーランドに行った事があるらしいが、あいつのメンタルは化け物なので例外だろう。というか彼は羞恥心という物を感じるのだろうか?
「そうそう、特に私って陰キャだから…こういう場所は場違いじゃないかっていつも思っちゃうんです」
えぇ…この人クラスで陰キャなら俺はどうなるんだよ。鼻かんだ後のティッシュとかそういう部類になると思うのだが…つまりはゴミである。
「諏訪さんは全然陰キャじゃないでしょ?」
「えー? 私は陰キャですよ。いっつも図書館で本読んでるからなんか変なあだ名付けられてるし。大学生にもなって彼氏もできないし…」
「俺も聞いたけど別に変なあだ名じゃないじゃん。『図書館の天使』でしょ?」
「…東坂君知ってる? 天使ってね、みんな人間に羽が生えてるイメージがあると思うんだけど、実は上位の天使ほど化け物みたいな見た目になるんですよ。階級が1番上の
「それは流石にネガティブに考えすぎじゃない!?」
おそらくみんなは図書館で本を読んでいる諏訪さんの可憐で神聖な様子を見て「天使」だと言ったんだと思うけど。それにしてもこの人レベルでも彼氏できないのか…。4女神といい、うちの大学の美人は問題児揃いなのか?
彼女とそう話していると店員さんが注文した商品を持ってきた。
「あっ、ここは私が払います。助けてもらったお礼に」
「別にいいのに」
「これくらいしないと私の気が治まりません」
律儀な人だなぁ…。お金を払い、注文した商品を店員さんから受け取った俺たちは席に座った。
「俺的はむしろ諏訪さんって凄くモテてる印象あるんだけど…」
「そんなことは無いですよぉ。もう全然モテなくて…。東坂君の方こそどうなんですか? 結構モテそうですけど?」
「俺? 全然」
「そうは見えないけどなー。東坂君は普通に彼女いそうなイメージ」
出た。「彼女いそう」。これは陽キャと陰キャで全く意味が変わって来る言葉である。これを言われた相手が陽キャであれば…遠回しな誉め言葉だったり「自分恋人に立候補していいですか?」という遠回しなアピールの言葉だったりするのだが…。
陰キャに向かってこう言われたなら、それは「多分いつか彼女できるんじゃない? 私は嫌だけど」という相手を傷つけずに遠回しに拒否する言葉になるのだ。
俺は今までの人生でこの言葉の意味をよく知っていた。いやまぁ…最初から期待はしてなかったけど。いざ言われるとなると悲しい。おそらく彼女的には早く恋愛トークを打ち切りたいのだろう。
「東坂君ってどういうタイプの娘が好きなんですか?」
と、思っていたのだが諏訪さんは更に恋愛トークを続けて来た。…あれ、この話題続けるんだ? 続けるんなら仕方ないか。
でも俺の好みの女の子ねぇ…。実は俺も良く分かっていないんだよな。美春先輩にも以前同じことを聞かれたけど、その時なんとか導き出したのはギャップ萌えに弱いという事だけだった。でもいきなり「好きな女の子のタイプはギャップ萌えのある子です」と言ったら多分ドン引きされるよな。ここは無難に…。
「うーん…とりあえず気の合う人がいいかな?」
「他には?」
えっ、まだ聞いてくるの? 俺に興味ないんじゃなかったのかよ。良く分からんな。俺のタイプねぇ…。そうだなぁ…。俺は思考を巡らす。
「困った時に助け合える友人のような人が良いかな」
これは漠然と思いついたことだ。昔、親父が酔った時に恋人にするにはどんな女がいいかベラベラとしゃべっていたことがあるのだが「性別が変わっても親友のように付き合える関係の女性を選べ」という事を力説していた。
「へぇ~。東坂君は恋人は中身重視って事ですね」
「まぁ容姿が良くても一緒にいて不快な人と付き合おうとは思わんしね」
「なるほどね。気が合って友達のような関係の女の子…」
諏訪さんは何やらニヤつきながらスマホにメモしているしているようだった。
「分かりました。じゃあ私もそういう風になれるように努力しますね。じゃあまた! 今日はありがとうございました!」
諏訪さんはそう言うと飲み物のカップを片付けて店の外に出て行ってしまった。
えっ? 今のはどういう意味なんだろう? 「俺の好みの女の子になれるように努力します」って意味に聞こえたんだけど…。流石に俺の勘違いだよな? 相手はあの諏訪さんだぞ?
でもそういえば…彼女は飲み会の時に俺と2次会に行きたいって言ってきたし…。もしかして本当に脈があったりとか!?
ハハッ! まさかな。無い無い。
俺は彼女の放った言葉を否定しつつも内心ドギマギしていた。
○○〇
※すいません、投稿時間ミスってました
次の更新は11/13(月)です
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