合コンカオス!
「「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」
始まってしまったカオスな合コン、男メンバーは俺と
秋山さんは緑川の高校時代の同級生であり、昔のよしみで緑川の合コンに協力してあげたらしい。ちなみに穴山さんは秋山さんのサークルの後輩で諏訪さんは秋山さんと同じ学部の友達という事だそうだ。
俺達は『居酒屋・色彩』の奥にある座敷部屋に座り。席順は男性側は右から順に緑川、氏政、俺、そして女性側は同じく右から秋山さん、穴山さん、諏訪さんという順番に座った。ある意味一番まともそうな諏訪さんが俺の真ん前になったのは不幸中の幸いか。
「さっそくアルコール頼もうぜ! 俺ウォッカ!」
「おい! いきなりそんな度数の高い酒頼んだらまた泥酔するだろ!」
「大丈夫だって! ウォッカぐらいでは漏らしゃしねえよ」
「漏らす前提で酒飲むなよ!? ほら、度数の低いカクテルあたりにしとけ! ジンとか」
「ウォッカにジン? どこぞの名探偵ネタか? 兼続も好きだねぇ…」
「たまたまだよ!? 適当に指さしたのがジンだっただけだ! じゃあカシスオレンジでも頼んどけよ!?」
「カシスオレンジって名前の組織のメンバーいるのかな?」
「知らねぇよ!? いたとしても速攻で消えるだろ。名前弱そうだし…」
ゼェゼェ…。本当にこいつのツッコミは疲れる。まだ合コン始まって5分もたっていないのだが…。
「合コンといえば…かくし芸。1番、緑川義重! 脱ぎまーす!」
「脱がんでいい!」
そもそもお前上半身裸で下にチノパンしか穿いてないじゃないか!? それ脱いだらパンイチになるだろ!? それにかくし芸って合コンじゃなくて会社の忘年会とかでやるネタだろ…。何やってんだ。
「東坂兼続ゥ!!!」
「なんだよ?」
「俺はこのチノパンの下には何も穿いてない。この意味が分かるか?」
「分かりたくもねぇよ…」
お前ガチで猥褻罪で捕まるぞ…。
「東坂兼続ゥィャ!!!」
「だからなんだよ!!!」
「呼んだだけだ」
「殴ったろかお前…」
こいつの相手もせにゃならんのか…。はぁ…疲れるわ。女性陣の方を見てみると案の定顔が引きつっている。これはもう今日の合コンは失敗したも同然か?
俺はとりあえず料理を食べようと机の上を見渡した。飲み会コースで予約してあるので机の上にはすでに料理が配膳してあった。サラダに唐揚げにお刺身…うん、美味しそうだ。俺は早速好物の唐揚げを頂こうとしたが、女性陣側にあるので少し遠い。
「あ…取りましょうか?」
「お願いしてもいいですか?」
諏訪さんが控えめに俺に聞いてくる。あぁ…ありがてぇ…。やっぱり彼女はまともそうだ。大学の人気女子ランキングでもトップに入ってくるのが分かる気がする。今まで俺に飲み会で食べ物を取ってくれるような女の子なんて秋乃ぐらいだったからなぁ…。感動で涙が溢れてくる。
諏訪さんは取り皿に唐揚げやらサラダやらを乗せて俺に渡してきた。
「…どうぞ」
「ありがとう諏訪さん!」
「い、いえ別に…」
あぁ~いい娘だなぁ…。周りに異常者しかいないから癒される…。
「ッ!?」
なんか今背筋がゾクッとしたような…?
俺が諏訪さんに癒されていると、どこからか恐ろしいプレッシャーの様なものが飛んできた。何だ? キョロキョロと辺りを見回して見るが、今この『居酒屋・色彩』にいる客は俺たちの他にはカウンター席にいる茶髪ハーフアップと黒髪ポニテの2人組の女性客ぐらいしかいない。…気のせいか?
というかあの2人組の客、店の中で帽子とグラサンつけてるんだけど…。なんか怪しいな。犯罪者とかじゃないだろうな。
「どうかしました?」
「い、いえ別に…」
俺の様子を不審に思ったのか諏訪さんが小首をかしげて来る。俺まで変な行動をしてドン引きされないようにしないとな…。
○○〇
それから30分ほど時は経ち、最初はヒエッヒエッだった雰囲気もアルコールが入ったせいかだんだんと賑やかな物になって来た。そして話題は当然色恋の話になる。
「義重、あんたまだ高坂千夏を狙ってるの? 相手にされてないんだからいい加減諦めればいいのに…」
「うるさい! だからこうして合コンをして俺の対女性スキルを上げようとしてるんじゃないか! 千夏君は俺の理想の女性だ。スーパービューティフル。その美貌はクレオパトラや楊貴妃だって小便漏らしながら逃げ出す美しさなのだ!」
「無理無理。高坂千夏って凄く人気あるのよ。あんたみたいなスカポンタンには絶対なびかないわよ。だからその…彼女の事は諦めて近くにいる女性と付き合ってもいいんじゃない?」
「近くにいる女性って?」
「えーっと、ほら…あ、あた…/////」
ははーん、成程な。先ほどから緑川と秋山さんの会話を聞いていてなんとなく2人の関係性がわかった。どうして秋山さんが同級生だからという理由で今日の合コンのメンバーを集めてくれたのか謎だったが、秋山さん緑川の事が好きなんだな。好きな人の願いは叶えてあげたいってか。彼女も難儀な性格してるねぇ。
「そうだぞ緑川! それに高坂さんは兼続と付き合ってるんだぜ!
氏政がデザートのメロンにかぶりつきながら緑川を諭す。一応店に入る前にした約束は覚えてくれていたみたいだ。
「えっ、そうなの? あー…そういえば6月ぐらいに水族館でデートしてたわねぇ…」
彼女には千夏とデートしている所を見られたからな。その時の秋山さんは氏政にレンタル彼女としてレンタルされてたけど。
「彼女持ちがどうして合コンにいるんですか。それにあなた馬場冬梨と付き合ってたんじゃないんですか? もしかして2股?」
穴山さんがお酒を飲みながら赤いお顔をして俺に質問をしてきた。ごもっともな意見である。
「いや、前にも言ったけど冬梨とは只の友達だって…」
「ただの友達と2人っきりで頻繁にスイーツ食べに行ったりします? 彼女いるのに? やっぱりあなた2股ヤ〇チンなんじゃ…?」
「それは誤解だ。俺は千夏一筋だ!」
一応この場では緑川を騙すためにそういう設定なっているので俺はこう言うしかない。あと穴山さん、その言い方だと俺のち〇ぽが2本あるように聞こえるぞ。
ガンッ!
俺がそう言った瞬間後ろで大きな音がした。どうも俺たちが座っている座敷部屋の近くのカウンター席に座っていた黒髪ポニテの女性がカウンターに頭をぶつけたみたいだ。大丈夫かなあの人…。隣の茶髪ハーフアップの女性が介抱している。
「へー、お熱い事ですね。ま、先輩みたいな平凡な顔の人があんな美人と付き合えてるんだから大事にしてくださいよ」
「そのつもりだ」
「でも羨ましいなぁ…。そこまで彼氏さんに想われてるなんて…。彼女さんは幸せだと思いますよ」
穴山さんの隣にいた諏訪さんが話に入って来る。やはり女の子はそういう願望があるのだろうか。
…そういえば俺も少し疑問がわいた。諏訪さんはどうして今日の合コンに参加したのだろうか? 氏政によると諏訪さんは人気あるらしいし、合コンに参加しなくても彼氏を作れそうな気がするんだが…。
まぁ人には色々事情があるんだろう。なんせ美人であっても彼氏ができない事は女子寮の4女神で身をもって経験済みだからな。彼女にも何かしら残念な所があるのかもしれない。
「いいなぁ…。東坂君みたいな彼氏憧れるなぁ…」
気のせいか諏訪さんは俺の方を熱っぽい目で見てきている…ような気がする。アルコールが入っているせいかな?
「ッ!!!」
そこでまたもや俺はとんでもないプレッシャーを感じた。なんださっきから? 俺はまた辺りを見渡すが、相変わらず俺たちの他には例の女性2人組の客しかいない。うーん…暇谷弥太郎の霊の封印がまた解けそうになってるのかな? またお札貼っておかないと…。
「それよりもさ、穴山さんってmetuberやってるだろ?」
「え? ええ。お菓子系metuberをやらしてもらってますけど」
「俺もmetuberやってんだ! 良かったらさ、今度コラボしない?」
俺が謎のプレッシャーを感じていると氏政が穴山さんにアプローチをかけていた。
それにコラボというのはお互いに利益があるからやるもんだしな。視聴者層が違いすぎてコラボしても双方の視聴者が相手側のちゃんねるを登録する未来が見えない。要するに互いに利益の無いコラボという事になる。これには穴山さんは首を縦に振らないだろう。
「うーん…先輩のちゃんねるは私も知ってますけど…」
やはり穴山さんはコラボには消極的なようだ。しかしそれを感じとった氏政は俺に目線を送って来る。
「フンッフンッ(俺はお前に協力してやったんだからお前も俺に協力しろよ。でないとバラすぞ!)」
…不本意だが、一度言ってしまったものは仕方が無い。俺は約束は守る男だ。仕方ない。疲れるのは承知で氏政を助けるか。
「まぁまぁ、今の所穴山さんのちゃんねるの登録者って1500人ぐらいでしょ? それに比べて氏政の登録者は5000人ちょい…。もし氏政の登録者が穴山さんの動画を見に来てくれるようになれば…穴山さんのちゃんねるの収入も大幅アップするんじゃないかな?」
「う゛っ…。確かに登録者数はそちらの方が多いですけど…」
配信者間のヒエラルキー。当然だが登録者が上の方が力を持っているのだ。
「わかりました。コラボしましょう…」
穴山さんはコラボの誘いを渋々承諾した。…氏政に約束してしまったからコラボの話を推し進めてしまったけど、これ本当に大丈夫かな?
○○〇
そんなこんなで3時間が経ち、合コンが終了の時間になった。俺たちは会計をして店を出る。
秋山さんは酔い潰れた緑川に肩を貸して家まで送っていくらしい。秋山さんの想い、実ると良いな。実ってくれた方がめんどくさいのが消えてやりやすいと言うのもあるが…。
氏政は穴山さんとコラボの話を詰めるらしい。これから2人で近くのファミレスに向かう様だ。
なんだかんだ言って俺以外は結構いい思いができた合コンだったのではないだろうか。俺は諸事情によって何もできなかったが…。まぁ約束してるから裏切れないしな。
そして店の前には俺と諏訪さんが2人だけが残された。
「えっと…2人だけになっちゃいましたね…」
「そうだね」
諏訪さんが俺の方を見て呟く。ピューっと秋風が2人の間を駆け抜けていく。ほろ酔いの火照った身体をちょうど良い温度の風が冷ます。
だが次に諏訪さんの放った言葉に俺は耳を疑った。
「これからどうします? 2人で2次会でもしますか?」
…えっ? この人今なんて言った? 俺と2次会に行きたいって言ったのか? 昔、学部の友人から聞いたことがある。女の子が合コンの後に2次会に誘ってきたなら脈があると。もしかして…これって脈あり? 諏訪さんって俺の事が気になってるの?
だが俺はそこまで考えて首を振った。いやいや、今の俺は千夏の彼氏(という設定)なんだ。これを受けたらみんなに言われている様に本当に節操なしのヤ〇チンになってしまう。俺は舌を噛んで自分に活を入れた。
「いやいや、俺彼女いるし…。このままかえ「兼続君、何してるの?」 えっ?」
声のした方を見るとそこには秋乃と千夏が立っていた。どうして2人がここに? というか秋乃ちょっと怒ってる? 千夏は何故か若干顔が赤い。
「な、なんで2人がここにいるんだ?」
「たまたま! たまたま! 本当にたまたま千夏ちゃんと買い物してたら兼続君を見かけたから声をかけただけだよ」
買い物ってもう夜の10時なんだけど…。それに2人は手ぶらだ。
「もう遅いから一緒に帰ろう! さぁさぁ! 暗いから男の人に守ってもらわないと不安だし!」
秋乃は俺の腕を引っ張っていく。ちょ秋乃!? そして何故か千夏も秋乃とは逆の腕にぴったりと自分の腕を絡ませてくる。まるで俺を逃がさないように…。なんで!?
「兼続…帰りましょ?」
千夏はささやくような小さい声で俺にそう言った。なんだろう…寂しがっているような恥ずかしがっているような…そんな声だ。普段は見せない千夏の弱気な姿勢に思わずドキッとしてしまう。
「す、諏訪さん! また今度ね!」
「え、ええ」
諏訪さんは驚いた顔をしながらも俺に手を振って来た。俺はそんな2人に連行され『居酒屋・色彩』を後にした。いったい2人はどうしたんだ?
○○〇
~side???~
「もしもし、対象と接触しました」
「どうだい? いけそうかい?」
「ええ、あれはチョロいですね。流石童貞ってカンジ♪ もう少しで落ちそうでした」
「じゃあそのままよろしく頼むよ。ボォクらの大いなる計画のためにね」
ピッ…ツーツーツー
「フフッ♪ 後期が楽しみだね東坂君♪」
○○〇
次の更新は10/16(月)です
※作者からのお願い
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