3章 お待たせしました! ラブコメの本領発揮編
後期開始!
いよいよ夏休みも終わり大学の後期課程が始まった。…といっても本格的に講義が始まるのは来週からで、今週は講義に必要な教科書を買ったりなどの準備期間となる。そういうワケで俺は大学の購買に自分が履修する講義の教科書を買いに来ていた。
「ふぅ…必要な本はこれで買い終えたかな?」
俺は本の山を抱えてレジに持っていき清算する。まぁ講義の教科書とはいっても大体が教授が自分の書いた本を生徒に買わせるために「教科書」と言い張っているだけなのだが…。しかもハードカバーの本が多いので結構お高い。教授連中も印税が欲しいんだろうな。
俺は本を買い終えると大学の購買を出た。心地よい秋の風が俺の身体を通り抜けていく。あぁ…やっとあの長い灼熱の夏が終わって夏が来た。俺が1年で1番好きな季節である秋の到来である。
新しい季節の到来に俺の心は子供のようにウキウキとしていた。もしかすると今期は何か良い事が起こるかもしれない。根拠は無いが、何故だかそんな気がしてならなかったのだ。
「かっねつっぐくーん!」
俺が物思いにふけっていると後ろから大声で誰かに呼ばれた。この声は…。
「秋乃? どうしたんだ?」
「えへへ/// 兼続君の姿を見かけたから嬉しくて声をかけちゃった////」
「いつも寮で会ってるじゃないか?」
「寮で会う時と大学で会う時は別だよぉ///」
「そういうもんなのか?」
何故かは知らないが今日の秋乃はすこぶる機嫌が良いようだ。ニコニコと満面の笑みで俺と会話をする。
「そういえば兼続君はもう履修する科目決めた?」
「えっ? ああ、もう決めたけど…」
「もしよかったら見せてくれないかな? 私も参考にしたいし!」
「まぁいいけど…」
俺は秋乃に自分が履修する予定の講義の時間割を見せた。俺はもう履修する科目を決めてしまったが、履修登録の締め切りまでにはまだ時間に余裕があったはずだ。秋乃はギリギリまで悩んで決めるタイプなのだろう。
「(おっ! この講義兼続君と被せられる…。こっちも! どうでもいい科目は全部兼続君のとってる科目と被せちゃお! 同じ講義を受けた方が話す時間が増えていいよね♪ …前期はこんな事出来なかったけど、兼続君と仲良くなれたおかげで今では彼の履修する科目もわかるようになっちゃった。順調に距離を詰められてるね。このまま恋人までの道のりをレッツゴー!!!)」
秋乃はフンフンと俺の履修予定の時間割を見ていたが、スマホに色々メモし終わると時間割を返してくる。
「ありがとう兼続君! 参考になったよ!」
「お役に立てたならよかった」
「じゃ後期も頑張ろうね! 私早速教科書買ってくるー」
秋乃はそう言うと「ビュン」と購買の方へ行ってしまった。早いな…。最近俺と一緒にランニングしている成果が出ているのかもしれない。
○○〇
俺は秋乃と別れるとひとまず教科書類を自分の部屋に置こうと寮へと戻ることにした。なんせハードカバーの本が4冊ほど、それに普通サイズの本も7冊ほどあるので結構重たいのだ。
寮に戻る道すがら、大学の中庭を歩いているとそこにあるベンチにとある人物が座っているのが見えた。俺はその人物に声をかける。
「おっす千夏! もう教科書読んでんのか? 勉強熱心だな!」
千夏は眼鏡をかけて購入した教科書を読んでいたようだ。流石成績優秀者、もう講義の予習を始めているらしい。
…しかし眼鏡をかけて読書をしている千夏って傍から見れば本当に知的なクール系美少女だな。彼女の本性を知ってる身からするとそのグータラな面との温度差に風邪を引きそうになるけど。
「あら兼続、あなたも教科書を買いに来たの?」
千夏は顔を上げて俺の方を向いた。彼女は少し前まで胸を押さえて辛そうにしていたのだが…どうやら胸の痛さの原因が分かったらしく、今では気分が良さそうな表情をしている。何が原因だったのか分からんが治ったようなら良かった。人間健康なのが1番だ。
「おう、今はその帰り!」
「履修登録はもうした? 登録してないと単位取れないわよ」
「そんな氏政みたいな事やらねぇよ」
氏政は前期にそれをやらかしそうになった。ギリギリになって気付いてなんとか登録したらしい。
「フフッ、そう。ならいいわ」
千夏は愉快そうに笑う。…やっぱり美少女の笑っている姿というのはいいものだ。絵になるし、見ているこっちまで気分良くなるからな。彼女の笑顔を曇らせる悩みが1つ無くなってくれたようで本当に良かった。後は…彼女のトラウマをどうにかしてあげれればいいんだが。
「そ、そういえば…あなたはどの科目をとったのかしら?///」
「えっ、俺の履修科目? 見る?」
俺がそう提案すると彼女はコクコクと凄い勢いで顔を振った。若干顔が赤いような…? 気のせいか? その勢いに押されて俺は自分の時間割を彼女に見せる。
「ふ~ん…(う゛っ…彼と被っている科目が少ない。少し登録科目変更しようかしら? まだ時間はあるし…)」
千夏は俺の時間割を興味深げに見ていたが、やがて顔を上げると「ありがとう」と礼を言ってきた。
「さて…と」
「どっかいくのか?」
「ちょ、ちょっと買い忘れた教科書があるから買い足してくるわ//// オホホ/////」
千夏が買い忘れをするなんて珍しい。寮の備品を買いに行く時だっていつもメモにキチンと必要な物と量をメモってから買いに行くのに…。やはりまだ本調子ではないのだろうか?
「もしかしてまだ調子悪いのか? なら寮で安静にしてた方が…」
「だ、大丈夫だから心配しないで/////」
「ちょ!? 千夏!?」
千夏はそう言うと走って購買の方へ向かっていった。…あれだけ走れれば心配ないか。俺は千夏と別れて寮への道を急いだ。
○○〇
俺は重い教科書を持って寮への帰り道を急ぐ。大学の中庭を抜け、大学内にあるカフェの前を通りかかったその時、誰かから声をかけられた。
「かねつぐ~。こっち~!」
声のした方を見ると美春先輩がカフェで優雅にコーヒーを飲んでいた。相変わらず彼女は何をしても絵になるな。流石「美の女神」と呼ばれるお人。俺は先輩の方にかけ寄っていく。
「何か用ですか?」
「フッフーン♪ 兼続、あなたもう履修登録はした? お姉さんが先輩として履修相談をしてあげるわ。まずはそこに座りなさい」
「は、はぁ…」
先輩は自分の対面の席を指さしてここに座れと言ってきた。もう履修登録は済んでいるのだが、善意で提案してくれているものを断るのも失礼かと思った俺は彼女の言う事に従う事にした。
「後期はどんな科目とったの? さぁ見せなさい♪」
俺は彼女に言われるがままに時間割を差し出す。
「以前に先輩から教わったおススメの科目などを筆頭に時間割を組んでみました」
「う~ん…(確かにあたしが以前彼にアドバイスした科目を入れてあるわね…。彼と一緒の講義をとりたかったけど、彼が履修する講義はもうすでに去年あたしが単位をとっている物ばかりだわ…)」
だが俺の時間割を見た美春先輩は何やら渋い顔をしていた。なんか不味かったかな?
「………(むしろ考えを逆転させてあたしが今期とっている科目を兼続にとらせる? …いえ、流石にそれはやりすぎね。彼と同じ講義をとってイチャイチャしなさいって皐月にアドバイスされたけど無理そうだわ)」
「せ、先輩?」
先輩は悩まし気な顔をして微動だにしない。不安になってきた俺は先輩に声をかけた。
「あ、ううん。いい時間割だと思うわ」
「はぁ…」
先輩はそう言って俺に時間割を返してくれた。えっ、いいのかよ!? さっきの何とも言えない表情は何だったんだろう?
「講義の内容で分からない所があれば先輩に聞きに行きますね」
「あっ、そうね。フッフーン♪ このあたしにまかせなさい! 手取り足取り教えてあげるわ!(そうだこの手があったわ! 一緒の講義を受けられなくても、彼に色々教える事を口実に一緒にいられるじゃない!)」
「別に手取り足取り教える必要はないと思いますけど…。口頭で教えてくれればいいんで」
「やあねぇ言葉の綾よ♪」
「はぁ…」
なんか今日の先輩はテンションが高いな。みんな地獄の夏を乗り越えて過ごしやすい秋が到来したから喜んでいるのかな?
「じゃあまた後でねー♪」
先輩に履修講義の太鼓判を貰った俺は今度こそ寮へと帰ることにした。
○○〇
「はぁ…重かった…」
俺は買って来た教科書を自分の部屋の床に「ドスン」と置いて一息ついた。しかしこのまま床に置いていてはダメだろう。俺はだるくなった腕に活を入れると、紙袋から取り出した教科書を勉強机に並べていく。整理整頓をキチンとしなくては千夏の部屋みたいになってしまうからな。
前期に使っていた教科書は本棚の方へ、前期の講義のレジュメは買って来たファイルの中にしまっていく。ヨシ! これでいつ後期の授業が始まっても大丈夫だろう。
あっ…しまった。ルーズリーフの残りがもう少ない。俺はルーズリーフを買い足すべく、もう一度大学の購買に行くことにした。
「…あっ兼続」
俺が寮の入り口に向かっていると冬梨に出会った。そういえば彼女はちゃんと履修登録が出来ただろうか? 彼女はまだ1回生で履修登録も入学時に1度やっただけだろうからな。
ここは可愛い後輩のために1つお節介を焼いてやろうじゃないか。美春先輩が俺にしてくれたみたいに。そう思った俺は彼女に声をかけた。
「冬梨、履修登録は出来たか? してないと単位ゼロになるぞ」
「…多分、大丈夫」
「どの科目を履修すればいいか分からないとかは無いか? 先輩として相談に乗るぞ」
完全に美春先輩の真似をしているだけだが、それで冬梨の助けになれるのならまぁいいだろう。
「…そこら辺は大丈夫。バラムツとも相談して決めた」
ほぅ…友達と相談しながら履修科目を決める。前期の冬梨には出来ていなかったことが出来ているじゃないか。成長したな冬梨…。後はそのまま友達を増やすだけだ。
「…そう言う兼続はどの科目をとったの?」
「えっ、俺か?」
俺は自分の時間割を冬梨に見せた。
「…むぅ、冬梨と被ってる科目が全然ない」
「そりゃ1回生と2回生だから仕方が無いさ」
科目の中には2回生、はたまた3回生にならないと受けられない物も存在する。冬梨は1回生なのでまだ受けられる科目が少ない。というか1回生の内は必修科目が多いから科目選択の自由度が他に比べて半減してるんだよな。実質的に色々選べるのは2回生になってからだったりする。
「…兼続と一緒に講義受けられると思ったのに」
「それはしゃあない。でも必修講義が多いという事はそれだけ同じ学部の友達とコミュニケーションが取りやすいという事だぞ! これを機に友達を増やしてもいいんじゃないか? 大丈夫、冬梨ならできるさ!」
「…うっ、コミュニケーションは苦手…でも冬梨頑張る!(…兼続は冬梨に勇気をくれた。…冬梨は兼続の期待に応えたい。…一緒の講義は受けられないけど、兼続には休みの日に一緒にゲームして貰う事にしよ。…これは冬梨の特権)」
「その意気だ冬梨!」
冬梨が友達作りに前向きになってくれて俺は嬉しかった。今の冬梨なら後期の間に友達100人も夢ではないかもしれない。
「おっと…ルーズリーフ買わなきゃ…」
当初の目的を思い出した俺は冬梨と別れてルーズリーフ買いに外に出た。
○○〇
「いい天気だなぁ…」
秋晴れの空を見上げながら俺は再び大学の購買へと向かっていた。涼しい晴れの日というのは最高である。ずっとこの天候が続いてくれればいいのに…。しかし、俺は空を見上げていて横から来ていた人物に気が付かなかった。
「きゃ!?」
「おわっ!?」
俺はその横から来た人物とぶつかってしまう。ぶつかった拍子にその人物が手に持っていた大量の本が地面にバラまかれた。
「す、すいません」
「い、いえ…俺の方も前を見てなかったので…」
「えっ?」「んん?」
俺は地面に落ちてしまった本を一緒に拾い集めてその人物に渡す。あれ…? この人は確か…。
「もしかして…東坂君?」
「えっと…諏訪さんでしたっけ?」
俺がぶつかった人物は以前合コンで出会った美少女、
「お、お久しぶり…です? この前の合コン以来だから十日ぶりぐらい…かな?」
「そ、そうですね」
「「………」」
…それ以上話すことが無くて俺たちの間には沈黙が流れる。クソッ…女子寮での生活で対女性用の会話スキルが成長したと思ったのに…。
「す、すいません。私…あんまりコミュニケーションが得意じゃなくて…」
「い、いえいえ。俺もなのでお気になさらず…。図書館へいくつもりだったんですか?」
俺は彼女が手に持っている大量の本を見て推察する。これくらいしか話題が無い。
「え? ええ。夏休みの課題のために借りた本を返そうと…したんですけど、本で前が見えなくてぶつかっちゃいました。すいません…」
「いやいや、俺も前見てなかったし。…お詫びと言ってなんですけど本持つの手伝いますよ」
「そ、そこまでしていただくわけには…」
俺は遠慮する諏訪さんの手から半場無理やり本を奪った。ぶつかってしまったのだから何かしら罪を償わななくてはならない。
「あっ…」
「じゃあ図書館まで行きましょうか?」
○○〇
俺は諏訪さんと図書館へやってくるとカウンターに本を返却した。彼女はペコリと俺にお辞儀をしてくる。
「すいません、助かりました」
「お気になさらず。困ったときはいつでも言ってください」
「東坂君って優しいんですね///」
「う、うーん///」
これくらいは普通の事だと思うんだが…。べ、別に照れてるわけじゃないんだからね!!!
「あっそうだ! もしよかったら私とお友達になってくれませんか?」
「えっ?」
「私男の人は苦手なんですけど…東坂君なら話しやすいから仲良くなれそうだなぁと思って。…reinってやってます?」
「え、ええ。やってますけど」
俺たちはお互いのreinIDを交換した。…おいおい、この俺が美少女のreinIDをゲットしちゃったよ。こんな簡単でいいの? 今までは頑張ってもゲットできなかったのに…。
「同じ大学なのですぐに会えますよね? ではまた! 今日はありがとうございました!」
諏訪さんはそう言うと図書館から出ていった。俺は半分夢の中にいるような気持ちで彼女を見送った。
○○〇
さぁ始まりました第3章! ヒロインたちはどんどん攻めてきます。どうする兼続!? そして謎の女、諏訪信野とはどうなるのか?
次の更新は10/28(土)です
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