さぁ! お待ちかねの水着回だ!
照りつける太陽、白い砂浜、そしてどこまでも広がる青い海…。俺たち女子寮の住人は本日揃って海に来ていた。
場所は寮から歩いて15分の距離にある色彩海岸である。この色彩海岸は美しい砂浜と穏やかで豊かな海を売りに現在色彩市が市の目玉観光地として絶賛猛プッシュしている場所だ。そのせいもあってか、来週からお盆だというのに人は多かった。
確かに「この色彩市で一番自慢できる場所はどこか?」と聞かれると色彩市に住んで今年で20年になる俺も色彩海岸と答えるだろう。誇張抜きにここの砂浜は綺麗なのである。観光名所として押されるのも納得がいく。
もっとも…この前興味本位で市のお土産ショップに寄った際に、明らかに沖縄の「星の砂」をパクったであろう商品「色彩海岸のハート砂」という商品を見つけた時は自分の目を疑った。
色彩海岸の砂は誰がどう見てもハートの形でない。それを「色彩海岸のハート砂であなたも恋愛成就間違いなし!」という謳い文句の元、砂浜の砂を適当にすくって小ビンに入れただけであろう詐欺商品を600円もの値段で売っているのだから驚きである。
いくら観光名所として押しているとはいってもこれは無いだろうと思わずツッコミたくなった。
まぁそんな話はさておき、女性陣が脱衣所に着替えに行っている間に俺は拠点の設置を寮長に任されていた。男性とばかり一緒に海に来ているとわかりづらいが、女性は男性に比べて体力のない人が多いのでこういう休憩拠点の設置は重要だったりする。
特に今日みたいに人が多い日、まるで砂浜でおしくらまんじゅうをしている…は少し言い過ぎかもしれないが、それくらい人口密度が高い時は自由な場所で休めない。なので休憩用のスペースを確保している事が重要になってくる。
俺は砂浜から少し離れた場所に日光を避けるためのビーチパラソルを地面にズブリと刺し、その下にビニールシートをバッと広げ、飲み物の入ったクーラーボックスを横にドスンと置いて休憩所の設置を完了した。可愛い女の子たちと一緒に来ているんだからこれくらいはやらないとね。
俺は滞りなく作業を完了するとビニールシートの上に腰を降ろして女性陣が来るのを待つ。何気に俺の人生で女の子と海に来るのは初めての事である。今まで女日照りの人生を送っていたからなぁ…。
水着の女の子と一緒に海…楽しみだ。しかもみんな超が付くほどの美少女なのだ(寮長は除く)。思わず顔がニヤケそうになってしまうが、俺は雑念を振り払うと顔を手でパシッと叩いて気合いを入れる。
だらしない表情をしていると彼女たちに気持ち悪いと思われるだろう。それは嫌なので常に表情は引き締めておかなくてはならない。
俺は表情をキリッとさせると彼女たちが着替えて来るのを待った。
○○〇
「おっ、拠点ちゃんとできてるじゃない」
後ろから声がしてそちらの方を振り向くと、そこには寮長がグラサンをかけて立っていた。もちろん彼女も水着を着ていたのだが、俺は彼女の水着を一目見てドン引きしてしまう。
…寮長が来ていた水着、それはなんとスリングショットだったのだ。
スリングショットとはよく外国人が来ているV字型の水着の事である。水着の生地が股間を通って2つの胸を隠すように「V」の字になっている非常に露出度の高い物で、生地の形が投石機のスリングショットに似ていることからこの名前が付けられたらしい。
なんて水着を着ているんだこの人は…。今年で36になるオバハンが着ていい水着じゃないだろ…。ヤバい…鳥肌が立ってきた。
「どうしたの兼続? もしかしてわたしの水着に見惚れちゃった? ちょっと童貞坊やには刺激が強すぎたかもしれないわね」
「どちらかと言うと引いてるんだが…。いくら男を引っ掛けに来たからってそれはねぇわ…」
「わたしのセクシーな魅力が最も発揮される水着を着て来ただけよ? これでイイ男を引っ掛け放題ってワケ」
寮長はそう言ってセクシーポーズを取りながら腰を左右に振る。いやぁ…公共の場所でスリングショットを着ているヤバい人なんて普通の人は避けると思うんだが。外国ならともかくここは日本だぞ。
「ケツを振るなケツを…。気色悪い…」
せっかく晴れ晴れとした気分で海に来たのに化け物でも見てしまったかのような最悪の気分になってしまった。海の化け物…海難法師かな。あれは見たら死ぬ奴だからちょっと違うか。
俺はできるだけ寮長の方を見ないように海の方に視線を向ける。他の4人はまだだろうか。酷い物を見てしまったので口直しならぬ目直しをしたい。
そうしていると後ろから「ザッザッザ」とこちらへ向かって走る足音が耳に聞こえて来た。俺はもしやと思ってそちらに目を向ける。
「ごめーん!!! 待った?」
4人の中で1番最初に登場したのは美春先輩だった。彼女が着ているのはシンプルな紐ビキニである。俺はそれを見た瞬間思わず感動してしまった。
ビキニという水着自体が先輩の綺麗なスタイルをより際立たせ、更に横に結んである紐によりちょっぴり大人でセクシー感がアップしている。シンプルで余計なものが付いていないが故に着こなすのも難しいのだが、先輩は見事にそれを着こなしていた。
先ほど汚物を見てしまった俺は先輩の姿を見て浄化される。流石「美の女神」と呼ばれる美春先輩。今の彼女はまさに海辺の
走ってこちらに向かってきているので、彼女のそこそこ大きい胸が「たゆんたゆん」とマシュマロのように揺れている。うーん、素晴らしい。
美春先輩は拠点に到着するとキョロキョロと周りを見渡した。
「あれ、あたしが2番目? 千夏と冬梨の方が先に出て行ったんだけど?」
「いえ、寮長と先輩以外来てませんよ」
「うーん、迷子になったのかしら?」
一応大体の拠点の場所は先ほどreinのグループ送信で伝えておいたのだが…。これほど人が多いと見つけるのも大変だろう。地元なので迷子になって更に変な場所に行ってしまうという事はないと思うが、心配である。もう少し待って来ないようなら電話をかけてみるか。
「そ・れ・よ・り・も。どうかしら兼続、あたしの水着? 結構自信あるんだけど、フフン♪」
先輩は俺の方に向かってポーズを取りながら自信満々の顔で水着の評価を求めて来た。
「ええ、良く似合ってると思います。綺麗ですよ先輩」
俺がそう答えると先輩は不満げな顔をして言葉を続けた。
「…なんか普通の反応ねぇ。正直に『先輩の水着姿にドキドキして鼻血が出そうです!』とか言ってもいいのよ?」
「出しませんよ…。板垣さんじゃないんですから」
内心は凄く似合っていて綺麗だと思っているが、先輩の言う通りに正直に話してそれをめんどくさい連中(特に板垣さん)に聞かれると、更にめんどくさい事になるのであえて自重して答えている。彼らはいつどこに潜んでいるか分からないからな。
「弥生に聞いた時は凄く評価してくれたのになぁ…」
先輩は口を尖らせて拗ねたような顔をする。うーん、これに関しては申し訳ないと言う他ないな。俺の平穏な大学生活を守るためだ。
「ああ、ここだったのね。探したわ」
俺と先輩が話をしていると千夏が無事拠点に到着したようだった。少し場所に迷ったようだが、無事に見つけられたようだ。
千夏はトップスにはフリルが沢山ついたフレア・ビキニという水着を着ており、アンダーにはパレオを巻き付けていた。いつもの余所行き用のカッコいい千夏のイメージとは違い、可愛らしい感じの水着である。
しかし似合っていないということは無く、むしろ彼女の新しい魅力を引き出しているように感じられた。可愛い格好をしている千夏もまた良いものだ。
千夏は今日のためにバストアップを頑張ってはいたものの…当然そんなにすぐに胸が大きくなるわけがなく、一体どうするんだろうと思っていたのだがこういう対策の仕方をしてきたか。
要するに彼女は胸の部分をフリルの沢山ついた水着でふくらみがあるように誤魔化しているのである。フリルはどうしても膨らんで見えてしまうため、胸の小さい彼女でもそこそこの大きさがあるかのように錯覚するのだ。これは千夏の奴考えたな。
俺は思わずうなりながら千夏の水着を見つめた。
「なによ兼続その顔…。なんか少し腹立つわね…」
「いや、むしろ感心してる所だ」
彼女がジト目で睨んで抗議してきたが、俺はむしろ彼女を褒めている、称賛を送っているのだ。抗議されるいわれはないね。
「いつもと違って可愛らしい千夏もいいと思うよ」
「か、かわっ//// あ、あまりそう言う事を面と向かって言わないで貰えるかしら?///」
「ごめんごめん」
ああ、そうだった。そういえば千夏は照れ屋だったな。彼女はストレートに褒めると照れてしまうのだ。
千夏は少し赤い顔をしてそっぽをむいてしまったが、美春先輩はそんな千夏に構わず話しかけた。
「そういえば千夏、冬梨見なかった? あなたたち一緒に出て行ったわよね?」
美春先輩が未だに姿を現さない冬梨を心配してか千夏に尋ねる。
「えっ? 冬梨ならトイレに行ってくるって言ってましたけど…。でももう結構時間たってるわね」
「やっぱり迷子になったのかな? 俺ちょっと冬梨に電話かけてみるわ」
俺はスマホから冬梨の呼び出しボタンを押すと彼女に電話をかけた。数コールの後に冬梨のスマホへと電話がつながる。
『もしもし、冬梨か?』
『…どうしたの兼続?』
『今どこにいるんだ?』
「…兼続のすぐ後ろ」
「へっ?」
俺が後ろにくるりと振り返るとそこにはヤキソバを持ってズルズルと食べながら、スマホを肩と耳の間に挟んで通話してる冬梨がいた。器用だな…こいつ。俺はスマホを切って冬梨に向き直る。
「どこ行ってたんだ? みんな冬梨がいないって心配してたんだぞ?」
「…トイレの帰りにヤキソバのいい香りがした。我慢できなかったから並んで買ってきた。海と言えばヤキソバ」
「ああ…そうかい。ヤキソバ買うのはいいけど、遅れるようなら連絡はしてくれ。みんな心配するから」
「…了解した。次からはそうする」
とりあえず無事に合流できたようで良かった。俺は冬梨の水着を見る。
冬梨が来ていたのはホルダーネックタイプのビキニだ。紐を首の後ろにかけて固定するタイプのビキニで少し大人っぽさを感じさせる。
冬梨は背が小さいのがコンプレックスらしいので、せめてもの水着は少し大人っぽいセクシーな物をチョイスしたのだろう。
がしかし、小さい子が背伸びして大人っぽい水着を着用しているみたいで逆にそれが彼女の妖精の様な可愛らしさを助長させていた。「冬梨ちゃんセクシー!」と言うよりも「冬梨ちゃんキュート!」という感想しか出てこない。
もちろんそれはアリと言えばアリなのだが、彼女の望む答えではないと思うので俺は黙っておくことにした。
「…兼続、冬梨の水着の感想は?」
と思ったのだが許されなかった。
「今日は大人っぽい水着をチョイスしたんだな。似合ってるよ」
俺は彼女を傷つけないように嘘をついた。俺の言葉を聞くと冬梨はしたり顔になる。
「…当然、冬梨は大人の女性だからセクシーな水着も似合う」
その彼女の仕草も大人っぽいと言うよりは子供っぽくて可愛らしく、俺は苦笑しながら彼女を眺めた。
「後は秋乃だけか…」
寮長と他3人が揃ったので後は秋乃1人である。美春先輩の話によると最後まで更衣室に残っていたようなのだが…。
「…秋乃ならあそこの松の木の影に隠れている」
冬梨がヤキソバを食べながら俺らの拠点の奥にある松の木を指さす。俺たちがそちらを見ると確かに松の木の影から秋乃が顔だけ出しながらこちらを見ていた。
俺たちが秋乃が隠れているのに気が付くと、彼女は顔を赤くしてサッと松の木の影に隠れる。
「秋乃ー? そんなところに隠れてないで出てきなさいよー?」
千夏が秋乃の方に向かって呼んだ。すると秋乃は観念したのかしぶしぶと松の木の影から姿を現す。
「何で隠れてたんだ?」
「ちょっと恥ずかしくて…。そ、それよりも兼続君、どうかな私の水着?////」
松の木から出て来た彼女は少しモジモジしながら何故か開口一番に俺の水着の評価を求めて来た。
俺は彼女の着ている水着を見る。
秋乃が着ているのはクリスクロス・ビキニと呼ばれるトップスのバストの下や腰回りで生地が交差しているビキニの事である。
生地の少なさで言うと美春先輩にヒモビキニや冬梨のホルターネックの方が水着の生地が少ないのだが、バストの下や腰回りでクロスしている生地が露出度を下げているにも関わらずそこはかとないセクシーさを醸し出していた。
どうしてあのクロスしている生地があるだけでそう思ってしまうのかは分からない
。しかし、あのクロスしている生地には男のロマン的な何かを感じざるを得なかった。
特にバストの下でクロスしている生地が秋乃の豊満な巨乳を更に強調させているように感じられ、正直リビドーを感じざるを得なかった
当然だがそんな感想を彼女に正直に言うわけにはいかないので、もちろんそれは隠しつつ俺は彼女に感想を述べた。
「良く似合ってると思うよ。可愛い」
「えへへ、ありがとう///(見てる見てる。兼続君、必死に誤魔化しているようだけど私の胸をガン見してるのバレバレだよ。恥ずかしいけど我慢してこの水着着てきてよかったぁ~。これでまずは水着で兼続君の気を引けたも同然!)」
秋乃は何故か勝ち誇ったような顔つきで他の3人を見回す。一体どうしたのだろうか?
「みんな揃ったわね? じゃあ思いっきり海で遊ぶわよぉ~!」
「「「「お~!」」」」「…おー」
女子寮の住人が全員揃ったところで
俺も久々の海だ。思いっきり楽しもう!
○○〇
書いていて長くなったので何話かに分けます。
次回の更新は7/20(木)です。
※作者からのお願い
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