2章 夏は恋の季節!? ドキドキ夏休み編
寮長企画 夏の下着ファションショー!
夏休みが始まって1日目。俺は昨日までの試験勉強の疲れを癒すために今日はゆっくりと体を休めていた。もっと言うと試験勉強だけではなく、めんどくさい奴らの対処までやってたので精神の方もズタズタだった。ここいらで身も心も休めて体力と精神力を回復しておかなくてはならない。
午前中はのんびりと特に事件もなく過ごした。冬梨を尋ねてバラムツさんが来たり、物陰に隠れてコソコソしている板垣弥生を見かけたりはしたが…まぁ騒動を起こさないのであれば放っておいていいだろう。
しかし午後になり、みんなで昼飯のそうめんを食べている時にそれは起こった。
突然廊下から「ドッドッド」とまるで猪でも走っているかのような爆音が聞こえ、食堂の扉が開け放たれる。何事かと思って入り口の方を見るとそこには寮長が立っていた。
「あんたたち! 待ちに待った夏休みよぉ! 夏を迎える準備はもうできているかしら?」
寮長がキメ顔でそんなことを言ってくるが、俺たちは無視してそうめんを食べ続けた。このそうめん美味いね。やっぱ揖保〇糸のそうめん最高だわ! コシが違うよね。
「ちょっとちょっと! なんで無視するのよ!?」
「寮長、私たち試験明けで疲れてるんですからそっとしておいてください」
千夏がそうめんをすすりながら寮長の方を向いて苦言を呈する。
そうだそうだ! せっかくの記念すべき夏休み1日目なのに寮長になんて付き合っていられるか! 千夏、もっと言ってやれ!
「何よあなたたち、シケてるわねぇ…。わたしが学生時代の時なんか1日目からハッスルしてたわよ。確か当時付き合っていた彼とプールに行ったわねぇ。懐かしいわ」
寮長がしみじみと昔を思い出しているようだが、その彼にその後ヤリ捨てられたことを思うと何とも言えない気分になる。その彼と結婚とかしてれば美談なんだろうけどねぇ…。ヤリ捨てられたのでは綺麗な思い出どころか汚い思い出にしかならない。
寮長はその後も体をくねらせながら話を続けた。それ気持ち悪いからやめてくれ…。
「夏は恋の季節…。夏の暑い日差しが男と女を狂わせる…。そう、未だに彼氏がいないあんたたちにとっても大チャンスの季節なのよ! あんたたちもこの2カ月で兼続と触れ合う事によって男というものをちょっとは理解できたでしょ? だからここで恋愛マスターであるわたしが抜き打ちテストするわ」
当然ながら寮長の言葉に寮生から不満の声が上がる。
「寮長、あたしたち昨日まで試験だったのよ…。今日も試験やるとか勘弁してよ…」「あぁ…また変な事考えて…頭痛がしてきたわ」「寮長、兵糧攻めの期間伸ばしても構わないんですよ?」「…鬼ババア」
ある者は呆れた目で、ある者は頭を押さえながら、ある者はにこやかに笑いながら、ある者は悪態をつきながら文句を言う。俺もめんどくさい事は勘弁なので、彼女たちに賛同して寮長を冷ややかな目で睨みつけた。
「まぁ聞きなさい! 今回の試験にそんな労力は必要ないわ。確かめるのはどれだけあなたたちが男心を分かっているかの試験だから」
「「「男心を分かっているかの試験?」」」「…男心?」
寮長のその発言に美春先輩が寮長側に鞍替えした。まったくこの人は…。恋愛事が絡むと途端にフットワークが軽くなるな…。
「フフン♪ 面白そうじゃない? これは今までのあたしの努力の成果を見せる時が来たようね。要するに男の子をドキドキさせる回答をすればいいんでしょ? あたしはその試験受けるわ!」
美春先輩は何故かチラリと俺の方を見る。…なんで俺の方を見たんだろうか?
美春先輩は試験にノリ気になったようだが、他の3人はやはりあまり受けたくはないようだ。そこで寮長が再び口を開く。
「あんたたちねぇ…いざ男といい雰囲気になった時に変な行動をしてドン引きされてもいいの? 今回の試験はそういう事が無いようにあんたたちがこの2カ月で男心をどれだけ学習したのか確かめるのよ」
寮長のその言葉に今度は秋乃がピクリと反応する。
「(確かに…寮長の言う事も一理あるかも。私はこの夏兼続君と一気に距離を詰めるる予定だけど…変な行動をしてドン引きされたら終わりだし…。ここは試験を受けて確かめとくべきかな?)」
秋乃はうんうんと考え込んでいる様だったが、やがて考えがまとまったのか口を開いた。
「私もその試験受けるね。自分が今どれくらい男心を分かっているのかチェックしたいし」
意外なことに秋乃も寮長の側についてしまった…。一番反対するかと思ってたのに。これで2対2…。あとは千夏と冬梨がどう動くかである。
俺はこの試験に関しては中立の立場だ。寮長がアホな事を言い出さないか不安はある。だが彼女たちの将来の事を思って言っている面もあるので何とも言えないのだ。まぁ…俺は試験に直接関係ないので今回は完全に外野というのもあるけど。
「私は参加しませんよ。めんどくさいですし…」
「千夏…つまりあんたはもし自分に好きな人が出来た時にその人のハートをゲットできなくてもいいって事ね?」
「ご心配なく、私には好きな人なんていませんから…。ッ//// いませんから!//// ああ、もう分かりましたよ! 参加すればいいんでしょ!?」
なんでこちらを1度見たのだろうか? 千夏が半場ヤケクソ気味に参加表明をする。それにしても千夏まで参加の意思を見せるなんて…。不思議な事もあったもんだ。明日は雨が降るかもしれないな。
後は冬梨だけだが…。
「…前にも言ったけど冬梨は恋愛には興味がない」
「冬梨、冷凍庫にハーゲ〇ダッツのいちご味が入ってるんだけど、試験に参加してくれたら食べてもいいわよ」
「!!!…食べて良いの? 了解した。冬梨も参戦する」
えぇ…。寮長の奴おやつで冬梨を釣りやがった…。もはやなんでもありじゃねえか…。
しかしこれで一応は4人全員が参加表明をしたことになる。
「ねぇねぇ寮長! それで『男心を分かっているかの試験』て何をやるの?」
美春先輩がウキウキで寮長に尋ねる。
「まぁそう焦りなさんな。その前に試験の形式を発表するわね。まず試験はここ、食堂で行うわ。そして4人が1人ずつ試験の課題をこなしていって、それを審査員が見て点数を付けるの」
「審査員?」
「そう、審査員は何を隠そう恋愛マスターの私…とそこの兼続」
「ちょっと待て!? 俺も審査するのかよ?」
「当たり前でしょ? この寮に男はあんたしかいないんだから。そしてそれに加えてなんと今回は特別ゲストを用意したわ! 入って来て頂戴!」
寮長の言葉に食堂のドアがガラリと開く。
「美春お姉様のためなら例え火の中水の中、そしてスカートの中までも! お姉様親衛隊1番隊隊長の板垣弥生よ!」
そこに立っていたのはなんと板垣さんだった。…まためんどくさい人を引っ張って来たなぁ。たまたま寮の近くにいたのを気まぐれで適当に捕まえたんだろうけど…。
この人も審査員をするのか…。夏休み最初の日からえらくカオスになりそうだ。ちくしょう…ゆっくりして精神力を回復させようと思ったのに…。
「それで寮長、試験の内容は?」
「では発表するわ。第一回『男心わかっているのか試験』の内容は…下着審査よ!」
「「はぁ!?」」「面白そうね!」「「…下着審査?」「…ハーゲ〇ダッツのため」「美春お姉様の下着…ハァハァ」
またとんでもない事言い始めたぞこの人…。
「ちょ、ちょっと待ってください寮長、流石に下着を見せるのはちょっと…」
「千夏、もし男性といい雰囲気になった時にあなたがスーパーで上下セットで980円の下着をつけていたら相手の男はどう思うかしら?」
「なんで私の愛用の下着を知ってるんですか!?//// ってそんなことじゃなくて! 女性だけならまだしも、兼続に下着を見せるのはちょっと…//// というかこういうのって普通水着審査とかじゃないんですか?」
「千夏、今回の試験は男といい雰囲気になった時に男に見せる下着をあんたたち分かっているかどうかを見る試験よ。あなたはそういう雰囲気になった時に水着を着るのかしら?」
「いや、着ないですけど…。でも…、先輩も何とか言ってあげてください」
「あら? あたしはいいわよ。人様に見られて恥ずかしいような下着はつけてないもの(フッフーン♪ 兼続をドキドキさせる絶好の機会が来たわね。あたしのセクシーな下着姿で兼続を悩殺よ!)」
「いや、そもそも下着は人に見せるものじゃないでしょう!? 秋乃、あなたは私の味方よね?」
「私は全然いいよ?(兼続君が下着を見て審査する…つまり彼がどんな下着が好きなのか知るチャンス! 今回の彼の反応を見て本番はどんな下着を付けて行けばいいのかチェックよ!)」
「嘘でしょ!? 冬梨は?」
「…冬梨はハーゲ〇ダッツを食べれるならどうでもいい」
「自分の下着よりアイスなの!?」
千夏がツッコミ過ぎて肩で息をしている。千夏よ、気持ちは分かるぞ…。無駄だと思うが俺も一応千夏の意見にのっておこう。
「なぁ寮長、いくら試験のためだからと言って流石に下着を見るのはやりすぎじゃねえか?」
「兼続、だからあんたは童貞なのよ」
「なんでだよ!? 今は童貞は関係ないだろ?」
「いいや、関係あるわ。下着ぐらいでグチグチ言うのは童貞の証拠よ。世の中のヤリ〇ン連中を見てみなさい。下着を見たぐらいじゃどうとも思ってないから」
「いやまぁ、確かに女性に慣れている連中はそうかもしれないけどさぁ。でも付き合ってもない異性に下着を見せるのは女性なら誰でも嫌だと思うぞ?」
「美春と秋乃はノリ気だわよ?」
「いや、それはそうなんだけど…」
そこが良く分からんのよなぁ…。なんであの2人はこんなにもノリノリなのだろうか? 普通は千夏みたいな反応になると思うのだが…。
「兼続、あんたの気持ちも分かるけど、ここはあの子たちが成長するために力を貸してくれないかしら? あの子たちが肝心な所で失敗しないように…」
「…なんか無理やりいい話に持っていこうとしてないか?」
「という訳で下着審査会開始よぉ~!!!」
結局無理やり寮長に押し切られる形で下着審査会が開催される事となった。俺の平穏な夏休み1日目が…。
○○〇
長くなったので2話に分けます
次回の更新は6/24(土)です
※作者からのお願い
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