【休載中】大学の男子寮に住んでいた俺、何故か大学で4女神と呼ばれる美少女たちが住んでいる女子寮に引っ越すことになった件 女子寮の住人の問題を解決していくうちにいつの間にか惚れられていた!?
コミュ障だって本気を出せば友達が出来る …多分
コミュ障だって本気を出せば友達が出来る …多分
7月も2週目になった。相変わらず日差しは燦燦と照りつけており、クソ暑い。今日の気温はなんと36度、まだ7月の頭だぜ?
その日の俺は冬梨に友達を作らせるべく行動していた。この前と同じく講義が終わった後に学部のラウンジで彼女と待ち合わせる。
…がしかし、講義が終わって10分以上経っても冬梨が現れない。おかしいな…。何かトラブルでもあったのだろうか?
俺は心配だったので彼女を迎えに行こうかと思ったその時、ラウンジの隅にコソコソと隠れて移動している彼女を見つけた。冬梨の白い髪は目立つのでわかりやすい。俺は彼女に近寄り声をかける。
「何をしているのかな? 冬梨さん」
俺が声をかけると冬梨はビクリと体を震わせる。
「…見つかった」
「明らかに逃げようとしていたね?」
「…兼続、許して。冬梨今日はお腹が痛い。ぽんぽんぺいんなの…」
冬梨はいきなりお腹を押さえてうずくまる。限りなく嘘くさいが…、本当だったら可哀そうなので俺は彼女にいつも常備している薬を勧めることにした。
「何か変なもんでも食べたのか? ラッパのマークの正〇丸持ってるから飲めよ」
「…正〇丸変な味がするからヤダ…。今日は寮に帰って休む」
そう言って彼女はそそくさと俺の横を通り抜けようとする。
俺はその瞬間、冬梨の腹痛は嘘であると見抜いた。…腹が痛い人間がこんなにも俊敏な動きが出来るはずがないからである。
本当に腹が痛いなら、少しでも腹に衝撃を与えると漏れるかもしれないので素早い動きは取れないものだ。この辺は俺の20年の人生で経験済みである。俺は小賢しくも逃げようとする冬梨の首根っこを掴むと彼女を捕まえた。
「冬梨、残念だがお前の嘘はもう見抜いてるんだよ」
「…捕まっちゃった」
俺は冬梨が逃げないように彼女を小脇に抱えながら目的の場所まで運んでいく。
「…ドナドナドーナ」
「縁起でもない歌うたうなよ…」
「…今の冬梨は売られていく仔牛の気分」
冬梨が変な歌を歌っているせいですれ違う人々が何事かと俺たちの方を見てくる。クッ、また変な噂が広まらなければいいが…。
…仕方ない、冬梨にやる気を出させるか…。俺は抱えていた冬梨をちゃんと立たせると彼女に目線を合わせて説得を開始する。
「なぁ、冬梨。確かに友達作りは最初はちょっと億劫になるのかもしれない。でもいざ出来たら友達を作ってよかったなと思えるようになるさ。だからもうちょっとだけ頑張れ!」
「…でもこの前失敗した」
「たった1度じゃないか。氏政を見てみろ。何度ナンパに失敗してもあいつは諦めてないぞ」
「…でもあんなにナンパにチャレンジして1度も成功してない。何度も挑戦して失敗するようなら冬梨の小麦粉ハートは砕けてしまう…。冬梨の心はあんなに強くない…」
冬梨はシュンとしてうなだれる。しまった…、例えが悪すぎたか。俺は気を取り直して説得を続ける。
「…まぁ確かにそうだが、冬梨は氏政と違って何度かやればちゃんと友達が出来るって俺は信じてるよ。冬梨は出来る子だからな! この前の小山田さんとはたまたま相性が悪かっただけさ」
「…分かった。もう1度だけ兼続を信じてみる」
「その意気だ。冬梨ならすぐに友達ができるさ」
○○〇
「あれが今回の冬梨の友達候補の1人、
俺は空き教室で1人椅子に座り、お菓子を食べながらなにやらスマホにメモしている穴山さんを教室の入り口から冬梨と一緒に盗み見る。
俺はここ数日、冬梨と友達になってくれそうな子を友人やその後輩などに話を聞いてリサーチしていたのだ。そしてついに冬梨と話が合いそうな子を見つけたのである。
「…あの人は無理」
「どうしてだ?」
「…兼続はあんなキャピキャピした見た目の人が冬梨と気が合うと思うの?」
冬梨の言う通り、穴山さんは金髪でファッションもメイクも今どきの子という見た目をしている。見た目だけで判断するなら…ゲームや漫画が好きでインドア派の冬梨と真逆なタイプ…到底気など合わないように思われる。
しかし、彼女は冬梨ととある共通点があった。
「穴山さんは大のお菓子好きなんだってさ。metuberとしても活動していてこの色彩市で販売されている美味いお菓子のレビュー動画を上げてるらしいぜ。ああやって空き教室で1人でお菓子を食べてるのも動画のネタを集めているかららしい。冬梨もお菓子好きだろ? だから話が合うと思って」
metuberとは動画共有サイトである『metube』で自主制作の動画を投稿している人たちの事を言う。近年では自身の動画に広告を載せることができ、その広告によって広告収入を得ることが出来るので自分もひと稼ぎしようと一般人がどんどんmetubeに参入しているというのが現状である。穴山さんもその1人なのだろう。
「…ちなみになんて名前のちゃんねる?」
「えっと…確か『UMEKOちゃんねる』だったかな。登録者も1000人ぐらいいるらしい」
冬梨は鞄からタブレットを取り出すとmetubeのアプリを起動し素早く検索する。
「…あった。UMEKOちゃんねる。プロフィール…色彩市に住む美人女子大生、色彩市の美味しいお菓子を動画で紹介します。登録者1234人…」
俺も冬梨のタブレットをのぞき込む。
「『絶品!? 色彩堂のクリームあんこ最中! 噛むと中身がドピュッと飛びでるぐらい中身たっぷりです!』『まさかのロシアンたこ焼き!? スイーツキングダムが提供する辛さの弾丸!? 中のタコもシコシコです!』『こってり濃厚な味!? 色彩牧場の濃厚クリームパン! 口の中に入れたとたんに濃厚なクリームで私も
そこにはmetuberにありがちな商品に過激な紹介文をつけたサムネイルの動画が大量に上がっていた。平均再生数は500再生ぐらいか。metubeは登録者の半分ほどの再生数があればいい方と聞くので彼女のちゃんねるは比較的評判がいいのであろう。
「確かにこのサムネを見るとどんなお菓子なのか内容が気になるな。少し過激だけど上手いこと視聴者の興味を引くように作ってあると思う」
「…そう? 冬梨には性欲に訴えて再生数を稼いでいる様にしか見えない。お菓子を宣伝するならこういうのはやめて欲しい。食べ物と下品な言葉はアンチシナジー」
「うーん、確かにそう言う見方もあるか。でもmetubeはまず視聴者に見て貰わないと始まらないから過激な紹介文になるのはしょうがないんじゃないか? 動画の内容は真面目なお菓子レビューかもしれないぞ」
「…兼続がそこまで言うなら見てみる」
そう言うと冬梨は適当にサムネをタップして動画を再生させる。えーっと…これは色彩牧場のクリームパンの宣伝動画だな。軽快なOPの音楽と共に動画が始まる。
『はぁ~い!!! UMEKOちゃんねるをご覧の皆様! おはこんにちわんこそばぁ~。美人女子大生のUMEKOでぇーす!! 今日も色彩市で話題のお菓子を紹介していきますよー!』
「…『おはこんにちわんこそば』って何? 小学生のクソガキが考えたような挨拶。正直センス無い」
「…それは俺も思った」
「…しかも自分が少しでも美人に見えるように映像アプリで色々加工してある。本人はそこまで肌が綺麗じゃないし、スタイルも良くないのに」
「…そういうのは例え気づいても黙っていてあげて」
『今日はなんと!!! あの色彩牧場さんイチオシの逸品である。濃厚クリームパンを食べてレビューしたいと思いまぁ~す!』
動画の中の彼女はそう言ってカメラの前に色彩牧場のクリームパンを写す。パン生地の表面が光を反射してパンがツヤツヤに輝いて見える。おそらく光の角度などを調整してパンが美味しく見えるようにしているんだろう。
『美味しそうですねぇ~。それでは早速頂きまぁ~す! あ~む、むぐむぐ…うぅ~ん!!! 見て下さいこのクリームの量…かぶりついただけでパンからあふれ出そうなぐらい中に入っています。パンも香ばしくて美味しぃ~い。そしてこのクリームの濃厚さときたら…あぁーーー!!!』
そこで動画の中の穴山さんは白目を向けて舌を出し、ビクンビクンと体を揺らす。所謂「アヘ顔」と言う奴だろう。サムネの紹介文の通り、あまりの美味しさに思わず自分が
…反対に冬梨は少しイラついているようだ。こういうの嫌いって言ってたもんな。
『思わず
またOPで流れた軽快なBGMが流れて動画は終わった。
「…この人は嘘をついている。色彩牧場のクリームパンはそんな美味しくない。どちらかというとゲロ不味。パンはパッサパッサのカッスカス、クリームも濃厚と言えるようなものじゃない。いいとこ30点。総じて全く当てにならないレビュー。低評価10回ぐらい押しとこ」
冬梨はそう言って動画の端にある低評価ボタンを連打する。
「そりゃ企業から案件がくるかもしれないのにあからさまな悪口は言えんだろ…。それに味覚の違いってのもあるだろうし…」
「…冬梨はお菓子に嘘はつけない。不味いものは素直に不味いと言う。そういう意味では冬梨はこの人と相性が悪い。証明完了Q.E.D.」
何が証明完了なのかは分からないが、この前の小山田さんと同じく穴山さんとは相性が悪いらしい。うーん、お菓子が好きな子と聞いたから冬梨と話が合うと思ったんだが…。はぁ…、今回の友達作戦も失敗か。
しょうがないので今日は撤退するかと思っていると、教室の入り口付近でしゃがんで動画を見ていた俺と冬梨の上に黒い影がヌッと現れる。俺は何事かと顔を上げた。
「人の動画を無茶苦茶に言ってくれてありがとうございます…。今後の参考にさせてもらいます…」
そこには一応笑ってはいるが明らかに怒っているであろう穴山さんが立っていた。どうやら俺と冬梨の会話が聞こえていたらしい。
「えっと…ごめん。少し声が大きかったみたいだね」
「教室の入り口で人の動画を大音量で流してたら嫌でも気が付きますよ!? なんなんですかあなたたち?」
「…名乗るほどの者でもない。通りすがりの一般学生」
「どこが通りすがりなんですか!? 明らかに私の動画見てダメ出ししてたでしょ!? センス無いだの…当てにならないレビューだの…」
「…本当だから仕方が無い」
「ボロカスに言ってくれちゃって…。というかあなた馬場さんね? いつもボッチで講義を受けていて、もの静かで一言もしゃべらないのに彼氏の前だと饒舌になるんですね?」
「いや、俺は別に彼氏じゃないぞ。只の付き添い」
「…どうしよう兼続、冬梨喧嘩売られている気がする」
「先に喧嘩売って来たのはあなたでしょ!?」
そういえば…冬梨はこの前の小山田さんの時は緊張してあまりうまく喋れてなかったけど、穴山さんは俺や寮のみんなとしゃべってる時みたいに普通に喋れてるな。うーん、何か違いがあるのだろうか…? 分からん。
とりあえず怒る穴山さんをなだめた俺は冬梨とともにその場から撤退することにした。
冬梨と相性のいい奴を探すのは難しいなぁ…。
○○〇
※作者からのお願い
もし当作品を読んで1回でも笑われたり展開が面白いと思って下さったなら♡や☆での評価をお願いします。作者のモチベにつながります。
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