みんな酒に酔ってカオスな状況になってる…
始まってしまった魔の親睦会。俺は酔っぱらって醜態をさらさないようにチューハイをちびちびと控えめに飲みながら様子を見る。仮に酔って醜態を晒そうものなら今度こそ終わりだろう。慎重に行動しなくては…。
寮長と内藤先輩は結構ハイペースで飲んでいる。あんなに一気に飲んで大丈夫なのだろうか? 酔った寮長はいつもにも増してめんどくさそうなのであまり相手にしたくない。
山県さんと冬梨はおつまみを摘まみながら普通のぺースで飲んでいる。この2人は飲み気より食い気の方が大きいのかもしれない。
高坂さんは俺と同じくちびちびと飲んでいる様だ。まぁ異性の前であまり酔って醜態をさらしたくないというのは俺も同じである。
「あんたたち折角なんだから普段は兼続に質問できないこと質問してみなさいよ。でないとこの親睦会を開いた意味が無いわ(寮)」
すっかり顔を赤くした寮長がするめをかじりながらそう言ってくる。というか質問出来ないことってなんだよ。「実はこれまで面と向かって言えなかったんだけど…兼続君ってスッゴク臭いけど、風呂に入っているの?」とか言われるのか? 入ってるよ! 毎日石鹸でゴシゴシ清潔に洗ってるよ!
「はいはーい! じゃあ早速あたしから兼続に質問ね(春)」
内藤先輩が手を上げて俺に質問することを立候補してくる。先輩からの質問…なんだろう、凄く緊張するな。一体どんなことを質問されるのだろうか?
「兼続から見て、あたしは女性として魅力的かしら?(春)」
「は?」「へっ? せ、先輩それってどういう…?(秋)」
なんかサラッととんでもないことを聞かれた気がするのだが…。だが聞かれた以上は答えなくてはならない。この飲み会の趣旨に反するからな。出来る限り彼女たちの異性に関する疑問の解決に力を貸そう。
先輩が魅力的かどうか…と聞かれればそんなもの答えは決まっている。
「はい、十分魅力的だと思いますけど…」
「ふぇー!?(秋)」
「ほら、寮長今の聞いた? やっぱりあたしにはちゃんと女性としての魅力があるのよ!(春)」
先輩はドヤ顔で寮長に詰め寄る。しかし寮長はそれに「ハッ!」と笑って言葉を返した。
「そりゃあんたは見た目に関してはほぼパーフェクトだもの。問題は中身よ。まだ兼続はあんたの残念な中身を知らないからね。知ったらあんたへの評価はどうなるかしら…?(寮)」
「何それどういう事?(春)」
「今はそれでいいわ。この共同生活であんたの頓珍漢な所を兼続に直してもらいなさい!」
うーん…傍から聞いているとあまり良く分からないが、先輩に残念な所があってそれを俺に矯正させようとしていることらしい。けど先輩に残念な所なんてあっただろうか?
俺もそんなに付き合いが深い訳じゃないが…、大学で会った時の先輩を見る限りではそんなに問題がある言動をしている様には見えなかったと思うが。
それに先輩は大学では人気者だ。性格に残念な所があるのなら周りにいる人が指摘するだろうし…。浅い付き合いでは分からない。深く付き合わないと見えてこない残念な部分があるという事だろうか?
「ちょっと秋乃! ペース早すぎじゃない?(夏)」
俺が先ほどの寮長と先輩の考察していると山県さんが持っていたビールをイッキに飲み干し、新しく手に取った2本目のビールのプルタブを捻るとまたイッキ飲みした。そしてそれを飲み干すと更に3本目に手を伸ばす。
「これが! 飲まずに! やってられるもんですかぁ!(秋)」
「いきなりどうしたのよ? いつものあなたはそんなにハイペースで飲むことなんてなかったじゃない? そんなハイペースで飲んだら酔いがすぐに回るわよ(夏)」
彼女は3本目のビールを飲み干すといったんその手を止めた。大分酔いが回ったのか顔を赤くした彼女がこちらを据わった目で見つめてくる。
「兼続君ってぇ~、美春先輩みたいな人がタイプなのぉ~? そうだよねぇ~。綺麗だもんねぇ~(秋)」
「えっ? いやそのぉ~、一般論として魅力があるって言っただけだよ。ほら、先輩って大学でものすごく人気があるじゃん。だから男性から見ても十分魅力的だって言っただけだよ。俺の好みとはまた別…。というか山県さんのちょっと飲みすぎだと思うよ。呂律回ってないし、水でも飲んでペース落とそう」
「秋乃!」
「へっ?」
「山県さんじゃなくて秋乃って呼んで!」
「あ、秋乃」
「よろしい! じゃあ兼続君の好みってどういうタイプの人なのぉ~?(秋)」
何故こんなに俺に絡んでくるんだろうか? いつもの優しい彼女からは想像もできない酔いっぷりである。めんどくさい事この上ない。どうやらこの人は酔うと絡み酒になるようだ。酒を飲む場ではあまり飲まさない方が良さそうだな。
「俺の好みのタイプ? う~ん、特にないかな?」
「なぁにそれ~、はっきりしないなぁ~(秋)」
「山県さんはどうして俺の好みなんて聞くの?」
男性がどういう異性を好むのかリサーチしておきたいのだろうか? でも俺にそれを聞くまでもなく彼女は十分モテてるように思えるが。
「…つーん(秋)」
「あ、秋乃はどうしてそんなことを聞くの?」
「それはねぇ~、秘密ぅ~。えへへへへへ(秋)」
(うわっ、めんどくせぇ…。もう完全に酔っぱらってるな)
「後で酔いが冷めて自己嫌悪に陥るパターンね。寮の新歓の時もそうだったわ。…とりあえず水でも飲ませましょうか(夏)」
高坂さんはそう言ってコップに水を注ぐと彼女の元へもっていく。
「えへへへへ千夏ちゃん見て見て、このチーズ千夏ちゃんの胸みたいにペッタンコだよ(秋)」
「しばくわよ!(夏)」
まぁでも普段は絶対に見れない山県さ…秋乃を見れたことにより、今までよりも彼女という人物に対する理解が深くなったかもしれない。酒が入るからこそ普段は見せない一面が浮き彫りになる。これはお互いを知る上で大事な事ではないだろうか? もしかして寮長はこれを狙っていた?
俺が寮長の方に視線を向けると彼女はつまみを口の中に放り込みウィスキーをがぶ飲みしていた。その様子はさながらおっさんのようである。
…本当に狙っていたのかねぇ…。これは俺の只の深読みで、単にみんなと酒を飲みたかっただけのような気がする。
俺が寮長の有様を見ながらため息を吐きつつ手元のチューハイを飲んでいると冬梨がこちらにやって来た。そして何故かおもむろに椅子に座っている俺の股の上に彼女も座る。
「あの…冬梨さん? 何やってるんですか?」
「…これラクチン。腰が痛くなったから背もたれが欲しかった(冬)」
「何故に?」
確かに食堂の椅子には背もたれが無いので腰が少し痛くなったりするけれど、わざわざ俺を選ばなくてもいいんじゃないだろうか? 見た目からは分からないが、彼女も結構酔っているのかもしれない。
そしてそれを案の定めんどくさい人間に目を付けられた。
「あぁー! 兼続君が冬梨ちゃんと一緒に座ってるぅ~。兼続君ってロリコンだったんだぁ~(秋)」
「違うから! 俺は別にロリコンじゃないから!」
「…冬梨はロリじゃない。ちゃんと大人の体をしている(冬)」
「冬梨ちゃんはぁ~、ちっちゃいからロリだよぉ~(秋)」
「…兼続、試してみる?(冬)」
「ちょ!? 冬梨?」
そう言うと彼女は座っている向きを変え、俺の方に向き直ると抱き着いて密着してくる。所謂「だいしゅきホールド」の形だ。彼女が俺にひしっと抱き着いてくるにしたがって、服の上からでは分からなかった女性特有のふくらみが俺の体を襲う。それだけではなく彼女のスベスベの太ももも俺の体に密着し、俺の体は冬梨の柔らかさに包まれた。
俺は酒が入っていることもあって、その女性特有の柔らかさに頭の中がショートし何も考えられなくなる。
「あ、あの? 冬梨さん。離れて頂けるとありがたいんですが…」
「…ダメ、兼続が冬梨を大人の体だと認識したら離す(冬)」
「ちゃんと大人の体してるから! だから離れてくれ!」
「…分かった。どう、秋乃? 冬梨はロリじゃない(冬)」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ! 私の方がおっきいんだからね(秋)」
冬梨への対抗心か、今度は秋乃が席から立ち上がり俺の近くにやって来ると唐突に俺の腕を取ってその服の上からでも分かる大きなふくらみに押し付けて来た。ちょ、おま!?
冬梨も柔らかかったが、秋乃のはやはりレベルが違う。メロンクラスはあるであろう柔らかくて大きなそれが俺の腕にボヨンボヨンとその感触を伝えてきているのだ。
これはヤバい…ずっとその柔らかさに触れていたくなる。それほどの中毒性がそれにはあった。早く離れないとその柔らかさに溺れてダメ人間になってしまいそうだ。
「どぉ~兼続君? 私の方がぁ~、大きいでしょ~(秋)」
「大きい、大きいから! だから離してくれ」
秋乃は勝ち誇った顔で冬梨を見る。年下相手にみっともない。だが冬梨はそれにムッとしたようで秋乃に毒を吐いた。
…彼女も酒が入っているせいで普段より饒舌になっている気がする。
「…大きすぎる乳は下品。所詮ただの脂肪の塊、あんなに大きかったら将来しわしわに垂れる。ほどほどの大きさが綺麗で一番良いと相場は決まっている(冬)」
「大は小を兼ねるのよぉ~。小さいとできないこともあるでしょうからねぇ~(秋)」
「うっ…(夏)」
「「…ぐぬぬぬぬぬぬ!(秋)(冬)」」
なんか知らんが高坂さんにダメージがいってる気がする。
ってそれは今は置いといてだ。2人の争いをどうにかしないと…。
「兼続君はぁ~大きい方が良いよねぇ~?(秋)」「…いや、兼続は美乳派なはず(冬)」
「えっ、俺?」
俺の方に矛先が飛んできた。万事休すである。これどっちを好きといっても糾弾される流れだよな?
だからこの場合の最善策は何も答えないのが一番正しい。…のだが、2人が笑顔で答えを迫って来たので俺は今唯一まともである高坂さんに助けを求めた。
「高坂さん、ヘルプ、ヘルプ!」
「知らない。大きい胸に挟まれてデレデレしている人を助ける道理はないわ(夏)」
「え、ちょ!?」
どうやら2人の胸に関する争いで高坂さんにもダメージが入り、彼女が暗黒面に落ちてしまったらしい。彼女は視線を落とし、その絶壁のような胸を手で摩っている。数少ないシラフの彼女がいなければ誰がこの場を仲裁するというのだ?
「兼続~、飲んでる~♪(春)」
それに加えて更にめんどくさいことになんと内藤先輩が俺の頭に抱き着いてきた。またむにゅんと柔らかい感触が俺の頭を襲う。先輩は相当飲んでいるのか、かなり酒臭い。
本来であれば、こういう美少女に抱き着かれるシチュエーションというのは俺の人生で一度あるかないかだと思うので嬉しいはずなのだが…今の俺は秋乃と冬梨から飛ばされているプレッシャーでそれどころではなかった。
「やっぱり男の子の体って硬いわねぇ。そう言えばこの前筋肉触らせてっていったじゃない? 今触らせてくれる?(春)」
「えっ、今ですか? 今はちょっと堪忍して頂けると…」
「ダメなの?」
先輩は上目遣いで俺にそう言ってくる。
先輩、上目遣いでのお願いは反則です。美人がやる「上目遣いのお願い」という男性に対して特攻ダメージが入る必殺技に耐えれる男はこの世に存在するのだろうか? いや、いない。
例え秋乃と冬梨に凄い顔で睨まれようとそのお願いは拒めないのだ。
「わ、わかりました。少しだけですよ」
「流石兼続。じゃあ、胸筋触らせて?(春)」
「えっ? 胸筋?」
今日はえらく胸に縁がある日だな。男のおっぱいならぬ
「ど、どうぞ…」
「お言葉に甘えて…。わぁすごーい。硬ーい。これ動かせるの?(春)」
「えっ、まぁ一応」
「凄い…動いてる(春)」
先輩は俺の胸筋を触ってご満悦の様だ。これくらいでこの前のことをチャラにしてくれるならありがたいことである。秋乃と冬梨の視線がかなり痛いが。
「あひんっ」
しかし、俺の胸筋を触っていた先輩の指が俺の乳首にあたり、思わず変な声が出てしまう。
「あ~、兼続女の子みたいな声出してる~。可愛い~」
先輩にはそれが面白かったのか再び俺の乳首を触って来た。
「ちょ、先輩。そこは堪忍してください…」
「兼続ここが弱いの? じゃあもっとやったげる♪」
「え? ちょ!?」
先輩もアルコールが入ってかなり酔っているのか悪ノリが止まらないようだ。ヤバいこれはヤバい。俺は別に乳首が性感帯という訳ではないが、美人の先輩にいじられ、更には股の上にはまだ冬梨が乗っているのだ。
こんな状況で我慢できるかと言われれば無理である。少しずつムクムクと反応してくる俺の
「…兼続君?」
その時意外にも俺を救ってくれたのは秋乃から発せられた物凄いプレッシャーだった。その怒りのプレッシャーを浴びた俺と俺の
「な、内藤先輩…そろそろ…」
流石にこれ以上秋乃を怒らすのは不味いと思った俺は先輩にもうやめるように促した。
「そうね、結構堪能したわ。あっ、あと美春でいいわよ。また触らせてね(春)」
「ええ…わかりました。美春先輩」
「兼続君が先輩にデレデレしてた…(秋)」「…兼続は年上が好み?(冬)」
「えっ?」
「先輩に胸を触られるのがそんなに良かったの? 変態なんだね(秋)」「…兼続鼻の下伸びてた(冬)」
…先輩がどこかに行ってくれたと思ったら今度は2人がタッグで攻撃を仕掛けて来た。冬梨がジト目で俺を睨み、秋乃に至っては目から光が消えている。…これはもう俺ではどうしようもないかもしれない。
「兼続、女子寮での生活を思う存分満喫している様ね♪ 親睦会やってよかったでしょ? みんな仲良くなった様で何よりだわ(寮)」
「心労でちっとも楽しくねぇよ!!!」
こうして寮長の企画した初めての親睦会は波乱の結果となった。まぁでもちょっとだけ女子寮のみんなの事を深く知れた…気がする。
○○〇
今回はラブの方に力を入れて見ました。ラブとギャグのさじ加減が難しい。
胸の大きさは
秋(巨)>春(大)>冬(並)>夏(貧)となっております。
週間ラブコメランキング90位になったようです。ありがとうございます
※作者からのお願い
もし当作品を読んで1回でも笑われたり展開が面白いと思って下さったなら♡や☆での評価をお願いします。作者のモチベにつながります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます