俺達モテない大学生の日常はこんなもん

「待たせたな」


「遅い! 俺はカップラーメンが出来るぐらい長い時間お前を待ったんだぞ!」


「たかが3分じゃねぇか!」


「たかが3分、されど3分、3分あれば1回オ〇ニーすることも可能だ。お前は俺からオ〇ニーする時間を奪ったんだ!」


「どれだけ早漏なんだよ!? あとこんな公共の場でそんな事いうんじゃねぇ!!」


「それよりも早く料理を注文しませんかな? 我は空腹すぎてお腹と背中がくっつきそうですぞ…」


 俺達3人は午前中の講義が終わったので昼飯を食べに大学近くにある定食屋に来ていた。ちなみにテラス席に座っている。ここは日当たりが良く結構な穴場なのだ。今年は梅雨の季節である6月にしては晴れが続いており、なかなか過ごしやすくて良い。雨が続く季節だからこそ少ない晴れの日を思いっきり楽しみたいものだ。


 俺は講義が終わった後、少しもよおしたので2人に先に定食屋に行って席を取っていてもらったのだが…たかが3分待たせたぐらいでこの言われようである。


 全くこいつらは…。公共の場で下ネタ言うのやめろってあれほど言ってるだろ。それに朝信のでっぷりと太った腹が背中とくっつくわけないだろ! いい加減にしろ!


 俺はため息を吐いて席に座るとメニュー表を開いて今日のお得なランチセットを確認する。


「お前ら何にする?」


「我は今日のお得なランチセット『からあげ定食』ですな! からあげ6個にサラダとみそ汁、ご飯がついてなんとお値段500円。我の軽くなった財布に優しいですぞ!」


「お前はもうちょっとオタグッズ買うのを控えろよ…」


「フォカヌポゥ。これは心外ですな兼続。我は親愛なるお嫁ちゃんにお金をかけているだけですぞ。彼女に金をかけているリア充とどこが違うのですかな?」


「分かるわそれ。女が絡むとすぐにお金飛んでいくよな。俺も女の子に奢ってばっかりだから常に金欠だぜ。はぁ…俺もからあげ定食にしよう」


「それが身を結んでいればいいんだけどな。お前の場合失敗してばっかりじゃねぇか。俺もからあげ定食にしよ。すいませーん。店員さん、注文お願いします」


 俺たちは店員さんを呼んで注文する。


「まさかあの話が女神たちにまで伝わっていたとは思わなかったぜ!」


「いや、俺もお前がしょっちゅうやらかすから忘れてたけどさ。飲み会で全裸になってションベン漏らすって普通にインパクト強くてほとんどの人にとっちゃ忘れられんし、話のネタにもなるから広まって当然だわ」


「俺そんなにしょっちゅうやらかしてたか?」


「とりあえずパッと思いつくだけでも…女の子を口説こうとして大学に設置してある消火器に激突して作動させあたりを真っ白にする、ナンパの最中に屁をこいてついでに脱糞、先輩の彼女をナンパして殴られる、ナンパに成功したと思ったら新興宗教の勧誘だった…これだけあるな。この1年だけでだぞ!」


「そうだっけ? 俺次の日にはそういうの忘れちゃうからあんま覚えてないわ」


「いや覚えとけよ!? そういうポジティブでめげないところは尊敬するが」


「ぬふふ、記憶をすぐに忘れちゃうのはエ〇ゲのヒロインでありがちな設定ですな」


「俺は実はヒロインだった!? 兼続、俺を攻略して見ろ!」


「う〇こもらしたり新興宗教に勧誘されるヒロインなんて嫌だわ…」


「ションベンはいいのか?」


「ヒロインの漏らすおしっこはむしろご褒美ですな。だてに『聖水』と呼ばれてないですぞ。あぁ…我も『アーメン』とか言いながら聖水をかけられて浄化されたいですな…」


「いやそこはザー〇ンだろ?」


「飯時に汚ねぇ話すんじゃねぇって言ったろ!」


 わりと真面目に交友関係を考え直したくなってきた。


 そこまで話した所で店員さんがからあげ定食を持って来た。出来立てらしく美味しそうな湯気をたてている。俺達3人は早速頂くことにした。



○○〇



「おい、あれ美春先輩じゃね?」


 俺たちが飯を食っていると突然氏政がそう声を上げる。氏政の視線の先を追ってみると、俺たちが飯を食っている定食屋の店内席に内藤先輩の姿があった。相変わらず人気者で大勢の人に囲まれている。


「本当ですな。周りにまとっているオーラが眩しすぎて我のような闇の眷属には近づきがたいですぞ…」


「へぇ…あの人もからあげ定食食うんだな」


「そりゃ食うだろ!? 草食動物じゃないんだからさ」


「いや、個人的にはあの人はもっとオシャレなものを食ってるイメージだった」


「まぁそれは…分からなくもないかな」


 あの人はとりあえずスタイリッシュでナウでヤングなものを好む印象があるという点には同意だ。流行に疎い俺は最近のトレンドなど何かは知らないが…一昔前でいうマカロンやタピオカみたいな流行の最先端のものを積極的に食べているイメージがある。


「いいなぁ。あんな綺麗な人が彼女だったら幸せだろうなぁ。そうだ! 学年が違うなら俺の変な噂も出回ってないんじゃね? これはチャンスか!?」


「どこがチャンスなんだよ!? むしろノーチャンだろ。今でさえ先輩の周りにはイケメン連中が沢山いるんだぞ。彼らにどうやって勝つつもりだよ!?」


「そりゃ顔じゃなくて俺様の『心』よ。俺様の熱い心に動かされた美春先輩が俺にこう…キュンとだな…。『奴はとんでもない物を盗んでいきました。美春先輩の心です』ってな感じでな…」


「名作の名言ですな」


 氏政はイケボを作りながらそう自信満々にそう述べる。


「そういえば氏政、お前この前学部の事務室から盗んだセロハンテープは返したのか?」


「今その話する所じゃないだろ!? せっかく俺様が心温まるいい話をしてるのにさぁ…」


「あら、兼続じゃない? 友達とお昼?」


 俺たちがくだらない話をしていると突然声をかけられる。俺がそれに反応して見上げるとそこには内藤先輩がいた。相変わらず俺らとは違ってキラキラしている。


「あっ、内藤先輩こんにちは。そうです、飯食ってます」


「良かったらこれいる? ちょっと食べきれなくて…」


 そう言うと彼女はパックに入っていたからあげを2個俺の皿の上に乗せてくれた。この店は食べきれなかった場合パックに入れてお持ち帰りさせてくれるのでおそらくそれだろう。


「あ、ありがとうございます…」


「男の子はしっかり食べなきゃね。じゃ、また後で」


 そう言うと彼女はと友達を引き連れてどこかへ行ってしまった。彼女が俺の横を通り過ぎると甘くていい香りがただよってくる。香水か何かだろうか? その匂いに惑わされながら俺は彼女が去っていくのをボーっと眺めていた。


「…相変わらずオーラがすげぇな。千夏ちゃんと秋乃ちゃんは話しかけやすいけど、あの人はオーラが凄くて無理だわ」


 あの性欲魔人でナンパに物おじしない氏政にこんな事を言わせるだからやはり彼女は凄いのだろう。あのオーラに性欲を中和させる効能でもあるのだろうか?


 俺は彼女から貰ったからあげをボーっと見つめる。なんの変哲もないからあげなのに、先輩から貰ったというだけで黄金色に輝いて見えた。


「お前、それ食わないのか?」


「いや、後で食べるよ。俺は楽しみにしてるものは最後に食べる派ショートケーキのイチゴは最後に食べる派だから」


「…2個あるよな。そんなに食べきれないだろ? 1個俺にくれ!」


「やだよ。内藤先輩は俺にくれたんだぞ! お前はキンタマが2つあるからって1個他人にやるのかよ?」


「何だよその例え…。美少女の涎が付いているからあげを独り占めなんてずるいぞ!」


「なにそれ気持ち悪!? お前普段からそんなこと考えてるのかよ!? そんな気持ち悪い下心のある奴この神聖なるからあげをやるわけにはいかん!!」


「からあげを合計8個も食うと太るぞ!」


「にょほほ、それじゃあ間を取って我がいただきますかな。こう見えてもからあげは我の大好物なんですぞ!」


「「渡すか!!!」」


「…じゃあ冬梨が貰う」


「「「へっ!?」」」


 俺達3人が内藤先輩に貰った唐揚げの取り合いをしてると横から来た何者かにそのからあげを奪われてしまう。


 見ると冬梨がいつの間に俺の隣に座り、先輩から貰ったからあげをすでにその小さな口でもきゅもきゅと食べていた。


「俺のからあげがぁ…。せっかく先輩から貰ったのに…」


「うん、まぁ気を落とすなよ」「ドンマイですな。争いは何も生みませんな」


「…今月お金ないから助かった。…ありがとう兼続」


「別に冬梨にあげたわけじゃないんだが…」


 俺の隣に座り、口をもぐもぐと動かしている彼女を見る。くそぅ、俺のからあげを…。恨めしそうな目で見る俺に冬梨はチラリとこちらを一瞥して言う。


「…昨日のこと…言ってもいいの?」


「どうぞ冬梨さん。俺のからあげ全部食べて下さい!」


「…ん。苦しゅうない」


「いきなりどうしたんですかな兼続!?」


 俺は颯のような早さで彼女に自分のからあげを差し出す。流石に昨日の事を出されては彼女には逆らえない。


「なんだよ、昨日の事って?」


「気にするな」


 俺はこれ以上詮索されないように何でもない風を装う。彼らに昨日の事を知られると面倒だ。幸い彼らは男の事情にはあまり興味が無いので大丈夫だろう。


「それにしてもお前女子寮に行ってまだ1日しかたってないのに妙に女神たちと仲良くね? さっきの千夏ちゃんと秋乃ちゃんといい、美春先輩といい、冬梨ちゃんといいさ」 


「まぁ冬梨は女子寮に行く前からちょっと関わりあったしな。他の3人は単純にフレンドリーなだけだろ?」


「そんなもんなのかねぇ。あっ、冬梨ちゃん、俺こいつの友達で黄田氏政っていうの。良かったらreinのID交換しない?」


 こいつ早速ナンパしにかかってるな。本当に見境の無い奴だ。


「…冬梨、スマホ持ってない」


「あっ…そう…」


 嘘である。冬梨はちゃんとスマホを持っているしreinもやっている。これに関してはしょうがない。冬梨はコミュニケーションがあまり得意ではなく他人に対してあまり心を開かないのでreinのIDを知るのは至難の業だ。おそらく彼女のreinIDを知っている人はほとんどいないだろう。俺は何故か教えて貰えたが。


「…けぽっ。お腹いっぱい。ありがとう兼続。また後で」


 そういうと彼女は席から降りてどこかへ行ってしまった。結局冬梨は何をしに来たんだ? 飯をたかりに来ただけか? 相変わらず考えが読めない奴だ。


 しかし昼飯のからあげ定食ほとんど食えなかったな。午後は少し腹が減るかもしれないがしょうがないか。



○○〇


明日からは1日1話更新になります


※作者からのお願い


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