俺の周りには何故か変人が多い
4女神にラッキースケベをし、必死に謝ってなんとか許してもらった俺。その日は月曜日で普通に講義があったので朝ご飯を食べた後大学に向かった。山県さんはあんなことがあったにも関わらずごはんを大盛にしてくれた。本当に優しい人だ。
「ぬふっ、グッモーニングですな兼続。女子寮での一夜はどうでしたかな?」
「最悪だったよ」
「フォカヌポゥ。全男子が憧れるエ〇ゲ的シチュエーションなのに最悪だったとはこれ如何に?」
「女子寮での生活は良いこともあるけどそれ以上に苦労も多いってことだよ…」
1限の講義がある校舎に向かっていた俺は途中で同じ講義を履修している朝信と出会い、一緒に行くことにした。俺たちは並んで歩きながら大学の広場を突っ切って講義がある校舎へと向かう。その途中で朝信から女子寮での生活の事を聞かれたので俺は昨日の事を思い出してため息を吐きながらそう答えた。
彼は不思議そうな顔をしていたが、これは実際に住んでみないと分からんかもな。現実はエ〇ゲみたいに甘くないという事だ。
「おっす! 兼続に朝信!」
聞きなれた声がしたので振り向いてみると、そこにはツーブロックの黒髪で三枚目の顔をしたそこそこイケメンの男がいた。彼は俺たちと同じ学部の友人で名前は
「おおっ、これは同志氏政。久しぶりですな。この前貸したエ〇ゲはどうでしたかな?」
「アレよかったわ。俺の部屋がティッシュまみれになっちまった。もう息子が元気一杯ファイト百発よ」
「清々しい朝の大学でそんな汚ねぇ話すんじゃねぇよ…」
「なんだ兼続、今日もシナシナのち〇こみたいな顔してんな」
「どんな顔だよ!?」
「えっ!? お前シナシナのち〇こ見たことないのか? もしかして…女の子だったり!?」
「兼続は女の子だった!?」
「んなわけねぇだろ!」
こいつも悪い奴ではないのだが、このように下ネタが多く性欲が強すぎて内からあふれ出ている所が欠点だ。その無限に湧き出でいる性欲を隠しきれないせいで女性陣からは怖がられ、その結果行動力があるにも関わらず未だに彼女が出来ずにいる。顔は良いんだからもう少し隠すことができれば彼女が出来るかもしれないのにな。所謂残念イケメンという奴だ。
俺たちは3人とも同じ講義を取っているので、並んで同じ校舎へと向かう。
「そういえば聞きましたかな氏政? 兼続が女子寮に住むことになった話?」
「あっ、バカ朝信」
こんな性欲にまみれた奴にそんな事を言ったらどんなことになるのか分かり切ってるだろうに。余計な事言いやがって…。
「まぁまぁ、どうせ遅かれ早かれバレる事になったと思いますな。そしてバレるなら早い方が良い…そうは思いませんかな?」
…まぁ確かに朝信の言う事も一理ある。氏政の事だからそう遠くない未来、どこからともなくこの話を聞きつけてくるだろう。そしてこの話を知った彼は俺にしつこく詰め寄って来るはず…。そうなる前にあらかじめ事情を話しておいた方が良いという事か。
「その話…聞き捨てならんな。女子寮と言えば我が大学の4女神が住んでいる所ではないか? そこにお前がなんで住むことになったんだよ?」
「話せば長くなるが…あのクソ寮長共の変な思い付きでな」
「あぁ…あの人らの…。それは災難だったな………とでも言うと思ったか? 確かに寮長共の思い付きに振り回される点に関しては不幸だろう。しかしそれ以上にあの4女神と一緒に生活できるというのはメリットがあるのではないか?」
「ぬふぉう。そうですな。あの美少女たちと一緒の生活。美少女たちの作った料理を食べたり、思わねアクシデントが発生して着替えを覗いてしまったり…。うはっ、夢が広がりまくりんぐですな」
「クソックソッ! あの綺麗な美春先輩とあんなことしたり、クールな千夏ちゃんとこんなことしたり、母性溢れる秋乃ちゃんとそんなことしたり、キュートな冬梨ちゃんと口には言えないことしてんだろ!? この性欲魔人め! あぁー…羨ましい」
「お前らは頭の中がエ〇ゲに支配されすぎだろ…。実際はそんないいもんではないぞ…」
あまり思い出したくはない昨日の出来事を思い出して、俺は胸が締め付けられる思いがした。実際ラッキースケベに遭遇して思ったのは性的な興奮よりも警察に突き出されないかと言う不安の方がはるかに大きかったということだ。本当に許して貰えてよかった。
3人でそんなくだらない話をしていると大学の広場のベンチで話している高坂さんと山県さんを見つけた。そういえばあの2人も1限は俺らと同じ講義を履修していたな。まだ講義まで時間があるから広場で時間でも潰しているのだろうか?
「おっ、噂をすれば4女神の内の2
「おいっ、兼続。俺を今すぐ彼女たちに紹介しろ! お前だけ美少女と生活する幸福を享受するのは許せん!!」
鼻息を荒くして興奮した氏政が俺に詰め寄ってくる。だからそういう所が女子に怖がられてるんだって何度言えばわかるんだよ…。
こいつにあまり彼女たちを紹介したくはない。あの優しい娘たちにこんな性欲どころか精液にまみれた奴が近づくと間違いなく穢れてしまう。そう思った俺は断ることにした。
「断る」
「そうか。分かった」
…意外にあっさりと引き下がったな。もうちょっと食い下がって来るかと思ったが…。
「じゃあ俺は今からここで奇声を発するわ」
「なんでだよ!? 迷惑だからやめろ!?」
「俺がここで奇声を発するだろ? そうすればお前はあの2人にキ〇ガイの仲間だと思われるわけだ。お前だってあの2人の印象を悪くしたくないだろ? どうする兼続さんよぉ?」
氏政はゲス顔でそう俺に詰め寄ってくる。こいつ…そこまでしてあの2人と知り合いになりたいのか…。
「あーあー。なんだか急に叫びたくなっちゃったなぁ。ふぉぉぉぉぉあくぁwせdrftgyふじこlp〇×△□ムッキョー!!!」
彼は突如として意味不明な言葉を叫び始め、それに伴い周りの人間が「なんだなんだ」とこっちに注目をし始める。クソッ、この野郎…。
俺は他人のフリをするべく彼と距離を取り、周りの聴衆に交じって冷めた目線で彼を見下す。よし…これで俺はコイツの仲間だとは思われないはず。残念だったな氏政、お前の作戦は失敗だよ。
「ひぃいやぁ、君は俺の大親友の兼続君じゃないかー。どうしたんだ。ふぉぉぉぉぉっふほ、ふががpふぇいふぇ9y8fgふぁいうばskf@うぃふ」
あろうことか彼は意味不明な言葉をしゃべりながら俺を名指しして親友呼ばわりしてきた。逃がさないつもりらしい。
彼のその発言に周りの聴衆も「あいつもこのキ〇ゲェの仲間か」という目線で俺を見てくる。
なんで俺の周りにはこんな無茶苦茶な奴しかいないんだ…。わりと真面目に交友関係を見直した方が良いのかもしれない。
(致し方ないか…)
「分かった分かった。だから静かにしろ!」
これ以上彼女たちに対する俺の印象を下げたくない。ただでさえ昨日の一件で印象が悪いのに。不本意だが…ここは氏政を彼女たちに紹介するしかないか…。俺はため息を吐くと話をしている2人に近寄っていった。
「ういっす! 今朝ぶり。確か2人とも1限同じ講義だったよな?」
「あっ、兼続君」「広場の真ん中で変な声で叫ぶのやめなさいよね」
広場の真ん中で叫んだのは俺では無いのだが…。やはり俺も仲間だと思われていたのか…ちょっとショック。
氏政は俺を肘で小突いて「早く紹介しろ」とせかしてくる。
「いや、なんかこいつが2人と友達になりたいみたいで…」
「俺、兼続の友達で同じ学部の黄田氏政っていうの。よろしく! 前々から2人と話して見たかったんだけど機会が無くてさぁ、こうして兼続に機会を作ってもらったってワケ。でさ、よかったらお近づきのしるしにrein交換しない? この前駅前でオシャレな店見つけちゃってさぁ、1人で行くの恥ずかしくて…。今度の休みに一緒に行ってみない?」
氏政はそれまでの下品な顔とは違い、比較的さわやかな笑顔を作ると2人に話しかける。しかし氏政の奴…大学に入ってかなりの数の女の子をナンパしてきているだけあって誘い方は手慣れてるな。こいつのこういう何事も物おじしない所だけは尊敬する。
「黄田氏政? あの飲み会で散々酔っぱらった挙句に全裸で小便を漏らしたと噂のあの氏政君?」
「えっ…。い、いやぁ…それはたぶん他人じゃないかなぁ…。ほら、俺と同じ名前の人間って沢山いると思うし…。あはは…」
(氏政なんて珍しい名前の奴お前以外にいねぇよ…)
高坂さんの言葉に氏政は怯み、顔に大量の脂汗をかく。高坂さんが汚物を見る目で氏政のことを見下ろし、隣の山県さんもそれを聞いてドン引きしているようだ。
そういえば思い出したわ。こいつ1回生の時に学部の前期課程修了のお疲れ様会でそんなことやらかしてたなぁ…。やらかしが多すぎてすっかり忘れていた。酒にそんなに強くない癖に女の子の前でカッコつけたがってウィスキーをイッキ飲みしてそれで完全に酔っぱらっちゃったんだっけ?
あの時ほどこいつと他人のフリをしたいと思った時は無かった。店の人に謝って、こいつの小便拭いて、服着せてさぁ…。ったく…何が悲しくて男のキンタマなんて触らなければならんのだ!
確かあの時の飲み会はこの2人は不参加だったな。それでもやらかした話と言うのは広まるらしい。
まぁそれ以外にもこいつは色々とやらかしてるが…。どうもそれが女子の間で共有されているようだ。俺も一歩間違うとそうなってたかと思うと恐ろしい…。
「それよりもさ、reinやってる? 同じ学部なんだし情報共有も大事って事でID交換しない?」
「残念だけど私reinやってないの」「私もrein壊れちゃってて…」
「あっ…そう…」
見事な断りっぷりである。両方ともreinのIDを相手に教えたくない時によく使われる常套句であろう。ちなみにだが…2人はちゃんとreinをやっているし壊れてもいない。なぜなら俺は昨日2人とreinのIDを交換したからだ。
しかしあの優しい「慈愛の女神」たる山県さんにすら教えて貰えないとは…。俺ですら快く教えて貰えたのに…。あはれ氏政…。自分の今までの言動を悔やむんだな。
しかし彼はめげずに再度チャレンジする。
「じゃあ今日講義終わった後遊びに行かない? 俺お菓子が美味しい店知ってるんだ!」
「私、明日提出のレポートやらないといけないから」「私も寮のご飯作らないといけないし…」
「あっ…そう…」
提案をことごとく断られ絶望し、手を地面につけてうなだれる
だが改めてこの2人に男っ気が無いとは信じられない。寮長がそう言うんだからそうなんだろうけれども。
ナンパしてくる男の中には高スペックの男もいただろうに、誰1人として彼女たちのお眼鏡にかなう男はいなかったのだろうか? それに今のやりとりを見ていると異性の扱いにも結構慣れていると思われる。
碌な女性経験の無い童貞の俺が彼女たちのために出来ることなんてあるのだろうか? もちろん、俺に出来る事なら協力を惜しまないつもりでいるが。
「あっ、もうすぐ講義の時間よ。そろそろ講義室に行かなきゃ。あんたたちもアホなことやってないでさっさと来なさいよ!」
「じゃあ、また後でね、兼続君」
そう言うと2人は先に講義室に行ってしまった。
「俺達も行くか。あの教授チャイムが鳴る前に席についてないと出席くれないもんな。ほら、氏政。いつまで絶望してんだ。講義室に行くぞ!」
「俺はめげない…めげないぞ…。彼女が出来るその日まで…」
俺は悲しみに暮れる氏政の服を引っ張って立たせると講義室まで急いだ。
○○〇
講義中俺はどうすれば寮の女性陣に男性という物を分かってもらえるのか頭を捻らせていた。引き受けた以上はやり遂げたいというのが本音だ。
…俺が思考していると後ろから鼻歌が聞こえてくる。この声は…山県さんか。えらくご機嫌の様だ。
「~♪」
(そういえば山県さんこの講義の時はいつも俺の後ろに座るな。なんでだろうか? まぁ今はどうでもいいか)
少し疑問に思ったものの、俺はそれを頭の隅に追いやり思考を続けた。
○○〇
※作者からのお願い
もし当作品を読んで1回でも笑われたり展開が面白いと思って下さったなら♡や☆での評価をお願いします。作者のモチベにつながります。
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