第23話 姉の願い
「アン、とっても素敵だったわね、ウエディングドレス。お姉ちゃんすでに泣きそうになっちゃったよ。」
「やだ姉さん、まだ気が早いわよ。」
街の仕立て屋から出てきた二人は、興奮冷めやらずといった感じで、先程見てきたドレスの話しに夢中になりながら歩いていた。
「……でも本当にいいのかなぁ。私がレイノル様と結婚だなんて…」
「いいに決まってる!好き合ってる二人が幸せな結婚をするのは、当然の事よ!」
「そもそも貴族のレイノル様と、平民の私じゃ身分が違うから…」
「アーン、またグジグジそんな事で悩んでるの!?レイノル様はアンと結婚したいって、プロポーズしてくれたんでしょ!大丈夫!その事はお姉ちゃんに任せなさい!」
「姉さん…」
「あたしが手塩にかけて大事に育ててきたアンなんだから。幸せにならなきゃ許さないよ!」
「ありがとう…姉さん。でも無理しないでね。危ない事なんかしないで。姉さんに何かあったら、私…」
「あたしは大丈夫だって!ほらほら、これからレイノル様に会うんだろ?そんなしょぼくれた顔なんか見せたら、心配させちゃうだろ?」
「ふふふっ。ありがとう姉さん。教会の神父様に挨拶に行ってくるわね。夕飯までには帰るわ。」
「せっかくのデートなんだから、ゆっくりしてきなよ。野暮な事は言わないからさ。」
人混みに消えていく妹を見送ると、自然と笑みがこぼれてくる。
「可愛い妹だな。」
「えっ!び、ビックリした!デン!それにブレイブ?!」
「妹さん、貴族と結婚するのか?」
「…そうよ、まだ、今は無理だけど…」
「魔王討伐の報奨に、婚姻を認めてもらうのか?」
ブレイブが尋ねる。
「……貴族と平民は身分差で結婚できないでしょ。まったく馬鹿馬鹿しい。そんなんだからこの国は発展しないのよ。」
「その通りだな。」
「ブレイブ、やはり魔王討伐はしない考えは、変わらないのか?」
「そうだ。一番倒さなくてはならない人物は他に居る。」
「ブレイブ!お願いだから魔王を倒して!じゃないとアンは…アンは…。あたし何でもするよ!だから…お願いだから……」
ミランだが今にも泣きそうにブレイブに懇願する。
「ミランダ、大丈夫だ。妹さんはちゃんと結婚できる。」
「なんかいい案でもあるのか?ブレイブ。」
こくんと頷き、ブレイブは王城を見上げた。
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