第17話
ニルヴァーナ。
別名、魔天解放。
魔族などが使う魔力解放をした真の姿。
人類にとって、古きより呪術と呼ばれた禁術。
「やはり、厄介だな。ニルヴァーナは――」
京介は高速で移動する中、ため息交じりに息を吐いた。
シルクとの戦いが長続きすれば、
魔法都市に危害が及ぶ可能性がある。
魔法都市に危害を及ぼすものは排除する。
それが魔導十二星座である自身の使命。
だとするならば、やることは一つ――か。
京介は立ち止まり、息を大きく吸った。
「発動――《白光(びゃっこう)》」
静寂の中、京介の冷静な声がこの場に響いた。
京介の中の魔力が解放され、白い光が京介を覆う。
地毛である白髪は、何かを纏う様に光り輝いていた。
相手がニルヴァーナを使うなら、俺も出し惜しみはしない。
「な、なんだそれは・・・・・・?」
シルクは衝撃を受けた様に目を見開き、信じられない顔をする。
京介から放たれる圧倒的な魔力。
先ほどの魔力量と比較すると、その量は数倍。
この力こそ、白鳥京介が魔導十二星座たる由縁の力だった。
「ニルヴァーナを発動されてしまった以上――俺も本気で行く」
京介はシルクに何食わぬ顔でそう言うと、白椿を鞘にしまう。
そして、ゆっくりと目を瞑った。
気持ちを切り替える様に。
深呼吸した後、魔力を研ぎ澄ませ、息を止めた、
解放されていた魔力が一瞬にして刀身へと集束され光り輝いた。
一閃。
京介は静かに、白椿を垂直に振りかざした。
コンマ数秒遅れで、白銀の斬撃が放たれる。
「なっ――!?」
シルクは驚愕した。
その瞬間、シルクの胴体から縦一線、鮮血が溢れ出す。
――見えなかった。
白銀の斬撃が放たれた直後から今まで。
シルクは目を見開き、俯せに倒れた。
あまりの痛みに声が出ない。
「っ・・・・・・」
激しい痛みに息を荒くしながら、シルクは自身に何が起きたのかを考える。
ニルヴァーナを使ったのにも関わらず、一瞬にして――。
シルクはこの現実を受け止めることが出来なかった。
それほど、この術に自信があったのだ。
それなのに――この様。
言葉が出なかった。
「これが最期だよ――シルク」
京介はゆっくりとシルクへ歩み寄り、申し訳なさそうな顔でそう言った。
魔族の存在を残すわけにはいかない――。
この魔法都市から消滅させる。
このままシルクの遺体を残せば、
どこからその存在が市民に知れ渡るかわからない。
魔法都市の風紀も守る。
それもまた、魔導十二星座の使命であった。
「お前は・・・・・・。本当に人間なのか・・・・・・?」
シルクは隣に来た京介に恐る恐る聞いた。
人間なのか――。
その言葉の意図を京介は考える。
無論、人間離れしたこの力を見ての言葉だろう。
京介はすぐさま意図を理解した。
「人間だよ――一応ね」
京介はそう言って笑みを浮かべ、俯せのシルクの背中へと白椿を突き刺す。
「――弾けろ、白光」
そう告げると、シルクの身体は弾け飛ぶ様に光り輝く。
白銀の世界が終わる頃、
シルクの姿は――無かった。
落ち着いた様に京介は一呼吸つき、白椿を鞘へとしまう。
自身の戦いは終わった。
そう――自身は。
「あとは健斗とアガリアか」
研究所を向いて、心配そうにそう呟いた。
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