第9話年下には興味ない…

土曜日のこと。

目覚めると身支度を整える。

昼過ぎに久我は僕の家を訪れる。

久我を家に招くと彼女はキッチンに立つ。

「今日も料理作っていい?」

何の確認なのかはわからないが僕はそれに頷く。

「良かった。そう言えば永野さんと何かあったの?」

「何かって?なにもないよ」

久我は女性ならではの勘でも働いたのか世間話風に僕に確認を取ってくる。

「そうなの?永野さんと中島くん…なんか特別な感じがしたから」

「特別?」

「うん。何も言わなくても通じ合っているみたいな」

「そんなことないよ。永野さんのこと何も知らないし」

久我はそれに納得したのか頷いて調理を始めていった。

久我が料理をしている間、僕はテレビを見て過ごしているのだが…。

突然チャイムが鳴って玄関に向かうことになる。

玄関のドアを開けると外では永野が僕を待っていた。

「センパイ!私が来ましたよ!」

よく通る声が耳に届き僕は顔をしかめる。

「お客さん来てるから。今日はごめん」

「お客さん?誰ですか?」

「誰でもいいだろ。また今度な」

それだけ伝えると永野は諦めたのか頷いて踵を返す。

それを見届けるとドアを締めてリビングに戻っていく。

キッチンで料理をしている久我は少しだけ不服そうな表情を浮かべていた。

「やっぱり永野さんと仲良いじゃん…」

どうやら永野の声はキッチンまで届いていたようで僕は軽く嘆息した。

「違うんだよ…」

そして、僕は永野が抱えている問題を久我に話す。

久我はそれを黙って聞いており時々相槌を打っていた。

「じゃあ決して結ばれることはないってこと?」

「もちろん。僕が好きになることはないし、何かしらの理由で好きになったとしても永野さんが僕を好きじゃなくなる。まず何があっても好きにならないし」

はっきりと断言するような言葉を口にすると久我は納得したように頷く。

「あとは?他にも仲の良い娘いるの?」

「えっと…」

そこから僕は須山の話をする。

「ふぅーん。結構モテるんだね。私には他に仲の良い男性なんていない」

久我は少しだけ拗ねたような表情を浮かべると口を尖らせていた。

「年下には興味ないから…」

そう告げるのだが須山のことが脳内に浮かんでいた。

彼女のことを興味ないと一蹴するには少しだけ無理がありそうだ。

成り行きとは言え関わりを持ってしまったし、興味ないとは言い難い。

そんなことを思っていると久我は意味深に軽く微笑んだ。

「なに…?」

「なんでもない。私は仲の良い女性であってる?」

「うん。それはそうだね」

「それならよかった」

久我はそれだけ口にすると料理を終えて皿をテーブルに運んでいた。

「食事にしよ」

それに頷くと僕らは少しだけ遅めの昼食を取るのであった。


久我とふたりきりの時間がゆっくりと過ぎていくと彼女は意味深な言葉を口にする。

「このままだったら上手くいくかもね」

その言葉に首を傾げると久我は軽く微笑む。

「だから。私とだったら上手くいくかもよ」

それに何度か頷くと、

「たしかにね」

なんて曖昧な言葉を口にする。

そこから僕らは無言の時間が続いていく。

だが別に気まずい雰囲気ではない。

少しだけ心地の良いような無言の時間。

誰にも気兼ねしない僕らだけの自由な時間。

「夕食も作っていい?」

久我の誘いに僕は了承の返事をする。

彼女はそれに喜んでいるようで早速キッチンに向かう。

そのまま特別なことはなかったが夜まで久我と過ごす時間は過ぎていく。

夕食を共にして軽くお酒を飲んだりして過ごした。

遅くなる前に一緒に家を出ると久我を家まで送っていく。

「ありがとう。また遊んでね」

久我と別れるとスマホに通知が届く。

相手は須山で近々デートでもしないかという誘いだった。

それに了承の返事をすると浮かれ気分で帰路に就く。

帰宅すると面倒な相手からも通知が届いていた。

「明日…思い出の場所で待ってるから」

煌梨からの通知に既読だけ付けると僕は無視を決め込んで眠りにつくのであった。

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