第4話二人のトラブルメーカー
憂鬱な日曜日。
訳ありな永野とのデートの日。
目覚めると身支度を整えて駅前に向かう。
13時ぴったりに駅前に向かうと永野は先に僕を待っていた。
「遅いですよ!10分前行動!」
その言葉に呆れて嘆息する。
「部活じゃないんだから」
などと適当な言葉を口にすると僕らはショッピングモール内に入っていく。
数時間適当にぶらついて永野の相手をすると彼女は少しだけ思い詰めたような顔つきで僕に問いかける。
「真面目な話がしたいんです。何処か静かなところに行きませんか?」
それに頷くと永野はカフェで飲み物を買ってから近くの公園に向けて歩き出した。
公園の木陰のベンチに腰掛けた僕らは飲み物を片手に話を始めた。
「真面目な話って何?」
永野に問いかけると彼女は自嘲気味に微笑む。
「センパイは私のこと好きにならないですよね?」
意味深な言葉を投げかけられて僕は首を傾げるだけだった。
「どういう意味?」
「えっと…。私が色々とトラブルを抱えているのはご存知だと思うんですけど…理由は分かりますか?」
それに首を左右に振って応えると彼女は自分自身が抱えている悩みを口にした。
「相手に好意が向いているのは良いんです。でも相手から好意を向けられると一気に冷めてしまうんですよ」
「なるほど。だから色んな男性社員とトラブルがあると…」
「そうなんです。片思い中は本当に大好きなんですけど…。いざ付き合うってなると…もう無理で…」
永野の悩みを耳にして僕は何度も頷いて応えると最終的な答えを口にする。
「大丈夫。残酷なようだけど永野さんのことは好きにならないから」
自信たっぷりに酷いことを口にすると彼女は嬉しそうに微笑む。
「信じて良いんですよね?」
最終確認として永野は再度僕に問いかけてきてそれに頷いた。
「大丈夫。基本、年下に興味ないから」
そう告げると永野は嬉しそうに頷く。
「じゃあ私はいつまでもセンパイを好きで居られますね!」
「好きでいなくてもいいよ。自由に他の人に心を移してもいいから」
「いいえ!私は好きになったら一途なので!」
その矛盾しているような言葉に呆れるように笑うと数回頷いた。
「またデートしてくれますか?」
その言葉に僕は首を傾げる。
「暇だったらね」
酷いような言葉を口にするのだが永野は嬉しそうに微笑んで頷いた。
「じゃあ今日はそろそろ帰ります」
永野は立ち上がると駅まで向かった。
僕らは駅で別れてそれぞれの帰路に就く。
帰宅するとシャワーを浴びてからリビングに向かう。
ソファに腰掛けて缶ビールを飲みながらテレビを眺めて一人の時間を過ごす。
特に何も起きない一人の時間。
久しぶりに感じる充実した一人の時間。
その時間に身を委ねていると唐突にスマホに通知が届く。
「久しぶり。来週の日曜日に同窓会があるんだけど参加する?」
その相手の通知を目にして僕のトラウマが少しだけ疼いた。
何故こんなにも簡単に僕に連絡をよこせるのか。
僕はその相手のことが理解できなかった。
僕の心に傷を与えて去っていった元恋人。
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