トゥー・ビー・コンテニュー





「はあ、いえねぇ…急に来られて指名手配がって言われましても、こっちとしちゃあ驚いちまうばかりっていうか」


「ああ、いやいや!逆らいやしませんし匿ったりなんてとてもとても!…んで?そいつ何やらかしたんです?」


「……大量殺人!そりゃまた大それた…

ああいえ、疑うなんてとんでもない!ただあたしには検討もつきませんね。ええ、目立つ身なりらしいですが。申し訳ない」


「ええ。勿論。何かわかったらすぐ伝えますよ。あたしだって生活があるんだ、殺されちゃたまんないですから」




乱雑に、扉が閉じる音。一度も実戦に使われてないと思われる、綺麗な鎧を着こんだ憲兵たちがどすどすと威丈高に出ていく。

その後に、女主人はこそりと声を出した。





「…オーケー、もう出てきていいよ旦那」



ぎぃ、と隠し扉の開く音。こういった宿屋には、いざという時に、歓迎されぬ来訪者から身を隠す為に、このような扉が存在していた。



「…フゥ。すまないなセーレ。

手荒な詰問のようだったが、怪我はないか」



「ハハ、今の偉そうな馬鹿が大目玉喰らう姿が思い浮かぶね。ま、さっきも言った通り旦那がいなくなったらこっちも困るからさ。気に病まないでくれよ。もし恩を返すなら仇以外でね」



あくまで朗らかに、からからと冗談混じりに笑うセーレ。それを見て、イドはぼそりと心の中が漏れたように、口にした。



「どうして庇う」


「ん」



「俺が本当に人殺しならどうする。

お前も殺すかもしれないし、得なぞ無い」



「んー…もしそうだとしてもさ。イドの旦那みたいな人が、意味の無い殺しなんてしないと思うのさ。あんたは思慮深いし、賢そうだからさ」



「…意味が無い事はないさ。

金品を手にして、住を手に入れることができる」



「あはは!奪うようなカネはむしろあたしらが欲しいくらいだよ。それに、意味っていうのはそういうのじゃなく…

なんていうかな、もっとこう。信念とか、意思とかそういうの。旦那は、そういうの無しじゃ動かない人だろ?」



死にかけの、どろどろの半死体としてここに流れ着いてから早数ヶ月。その短い間に、このぼろい宿の女主人はイドのことをわかったような気になっていた。だから、そう迷いなく言ったのだ。



「それに…あ…

…あー、ほら!ダンティ!ダンティたちも懐いてるしさ!そういう人が居なくなったら寂しがるじゃないか!うん!」



と、流暢だった言葉が急に濁り、急に、何かを誤魔化すようにあたふたと慌てて言い繕う。その顔は確かに紅潮していた。そうしてからしゅんとしおらしくなり、指先で前髪をいじりながら話す。もじもじと、言いにくいことを言うように。



「……なあ、旦那。その…さっきも言ったし…同じ事言うようだけどさ。うちは男手が足りなくって!弟たちもまだちんちくりんだし、あんたにも、懐いてるし。旦那は何十人分くらいにも働いてくれるしさ」



「えっと。あんたの、過去はどうでもいいんだ。

だから、なんだ、その…」


「…もし、やる事が無いんだったら。

あんたさえ良ければ、ずっと、ここに…」



ぐいと、垂れていたイドの手を掴んでそう言う姿は、例えどんな唐変木が見たとしても、彼女が抱く感情がわかるような状態であった。どれだけ鈍感でも、情緒が育っていなくとも理解できるようほどわかりやすく、ある想いを向けての発言だった。



しかし、それすらわからない、唯一の例外がいる。それは、目の前を見ているようで、見ていないもの。現実を見ず、血まみれの過去と未来だけを見るもの。ただ失ったものだけを見据える愚者。ただ皮算用の未来を夢想する愚か者。


不幸であるのは、イドがそれであったこと。

彼の残った一つの目は、今を見据えてはいなかった。

だから目の前の機微すら読み取れはしなかった。





「……ありがとう、セーレ。

嬉しいよ。だけどすまない。前にも言った事だ」


「俺にはやる事がある」





そうして、イドは宿を後にした。

血錆塗れの鎧を纏い、唯一残った剣を背負う。

兜までを奥深くかぶり、ゆっくりと。


平和な往来を歩く最中で世界を眺める。

平穏無事で、何も無い市場の様子。

貧乏で、それでいて満たされた子供達。

日々が痛烈で、それでいて満足な市民。


所々で奇異の視線が彼を貫く。

血錆まみれの薄汚い鎧姿は、憲兵や衛兵なわけもなく、傭兵というにも見窄らしすぎて、故に何かわからないものだった。

ただその奇異すらも日常の喧騒に溶けていく。

彼など、日々の少し変わった一部に過ぎないのだ。






憎い。


憎い、憎い憎い憎い憎い。

憎くて憎くて憎い。憎垂らしい。



自分より幸せな全てが憎い。ただ暮らしているだけの人全てが憎い。平穏に、無事に。何も守れはしなかった、それでも生きるしかない、このような地獄を味わっていることすら露知らずに生きている世界の全てが憎かった。魔物を狩らずとも生を享受できる『普通』に身を置いている全てが憎い。ただ幸せそうに笑う皆が憎い。成長をできている、死んでいない、子供を見るだけで。憎しみが湧き出てくる。


不死者が憎い。

人民も憎い。

半人半魔すら憎い。

自分自身が、何よりも憎い。


破綻しているし、逆恨みというにも間違いの見当違いを向いた憎悪ですらあるのも、わかっている。

それでももう、彼には、彼はもう、この世界に存在する全てが悍ましく憎く。世界の全てが憎悪の対象だった。



切り裂かれた顔の右半分は、治りはしない。

魂を薪に顕現する共喰いの炎による斬撃。そうだ、あの一撃の時。きっとあのあれの切先が、頭にも触れていてしまったのだ。


あの一閃は深く抉れて。そこから脳のどこそこがこぼれて、大切な部分が壊れてしまったのだろう。


彼はあの時に確実にこわれてしまったのだ。

彼はその時に、明確に。比喩や貶しではなく。

狂ってしまったのだ。








……






歯を食いしばって、なんとか殺戮衝動を抑えて街を後にする。街を背にして歩く最中。ずっと、ずっと、頭でぐるぐると考えた。



クシーは。

娘は、どうしてこうなってしまった。鎧を撫ぜて鳴るざらついた音に狂う。君の鳴る音がこのような醜い音だという事に脳が軋む。

俺は、何故こんな地獄にいる。

どうしてこんな生き地獄にいるのだ。



一つだけ、思いついたものがあった。


彼女はきっと、罰を下されたんだ。生きていれば、これから先起こしたであろう罪に対する、罰を。

そうでないと説明がつかない。

でないと、あまりにも世界と釣り合いが立たないじゃないか。そうでなければ、罪と罰が成り立たない。

こんなこと、あまりにも不公平だ。不平等だ。あまりにも、理不尽じゃないか。そうであると思い込まないと、虚しすぎるじゃないか。



そうだ。


だから、彼女の無垢を背負っていってやる。そうして、既に課された罰に相対するべき罪を作ってやる。俺に下された罰も、みんなに課された断罪も、娘に賦された天罰も、どれもかれもひっくるめて。たくさん殺しても、それでも尚足りない罪を、もっともっと、俺が稼いで作って世界と釣り合うようにしてやる。



ああ、そうだとも。これは俺の、俺たちの。

彼女たちの復讐だ。




「………ハ。クハ、ハハハ」




死ね、全て何もかも。

死ね。こんな世界ごと。

死ね。自分自身に向けて。



地に伏せ、血を被って見た光景が、俺が美を感じた世界であるものか。あの日々を、憧憬を、騎士団のみんなで見た景色を美しいと思った光景であるものか。あの美しき世界であってたまるものか。

これが、この地獄が世界であるとするならば。俺はそれを、そうさせた全てに誓い、壊さねばならない。そうでなくてはならない。


この狂った世界が俺の美しさなら。

これこそが滅ぼされる巷でなくてはならないのだ。




「カハハ、ハハハッ!

ハハハハハハハハッ、ハハハッ!!」



全て、殺す。

俺をこうせしめた全てを。

娘を血鯖に変えた全てを。

この糞のような人生を作る全てを。

俺が、憎悪を向けるもの全てを。



それだけが、俺がまだ俺である証だ。

それだけが、俺の復讐だ。

それだけが、もう。

俺が見出せる、唯一の生きる理由だ。








……






……………





緊急事態報告書類

 


発生事例:

 何者かによる研究施設への襲撃。

 ほぼ全ての検体が死滅、壊滅状態に。

 研究の書類全てが灰となる。

 →保管庫の予備も全滅。

  襲撃者は場所を知っていた。何故だ

  失敗作による尖兵も時間稼ぎにすらならない

 

備考:

 襲撃者はあまりにも内情に詳しすぎる。

 また、この場所を知っていることからもして。

 襲撃者の正体は元々、我らのうちだった誰か。

 もしくは、我らが生み出した何かではないか。

 また、青い炎は『鎮魂』の炎に似通っている。

 おそらくは、これらからするとまさか

 襲撃者のしょうたいはレムレス計画n

 



     ぶつり。




「ぎゃああっ!…あ、ああ…はは」


「…はは、あはは。ああ、お前。そうだお前!報告書の続きを書いてくれよお…俺はもう出来ないんだよ!手が、手が無いんだからぁあああひはははははばぁっ」




…ある、地下施設にて。

その閉じ切った空間に、蒼炎が充満していた。

怨嗟の共喰は人々を喰らい、命を喰らってはその火勢を増して、全てを殺し尽くさんと猛り狂っていた。


多くの研究員は、諦めが悪く逃げ惑う。

少しの研究員は、年貢の納め時と静かに瞑目する。

どちらであろうと、死んだ。

関係なく、殺された。

平等に、拷された。

その蒼い炎に。

青い炎を持ち出した、殺人鬼に。



「ハハ、まだ死ぬなよ。

もう少しだけ苦しんで逝くといい。なあに、自殺する度胸も無いのだろう?たっぷり、たっぷり焼けていけ」



その殺人鬼が奥深く被る兜。その奥の眼は、凶器に塗れ、歪んだ法悦に染まり切っていた。音叉のような大剣を手に、そこから溢れ出る焔をおもむろに向けてはじっくりと熱を帯びた剣で痛ぶり焼いて、皮膚を剥いでいく。

それでいて、行動に無駄はない。ただ殺すまでにかかる時間は遅れなく、ただ本来の目的らしく、研究の全てを灰燼に帰していく。


その奥底に残る理性。ただほんの少しだけ残る合理性の青さ。諦めて突っ立っていた白衣の男たちのうちの一人は、それに見覚えがあった。まるで別人のようで、気付きすらしなかったが。




「………イド…?」



「…」



「…嘘だろ。お前、イド、イドなのか…!?」



「…ああ、なぁんだフロイか。久しぶりだな」



研究員の一人、フロイは恐怖にすくみ、小便を漏らしながら、腰を抜かしながら。それでもほんの少し、嬉しそうな顔をした。

それは、知り合いだから助けてもらえるかもしれないというような打算的なものでもなく、ただ旧知に出会った原始的な喜び。




「お前…生きていたのか…!

俺、俺は、もう、全員死んだんだと…」



「死んだよ」



びくり、と肩を震わすフロイ。

確かに、目の前にいる男は知っている筈だ。

いつも憂鬱そうに見えてその実感情の起伏が下手で。

それでいて、優しげだった、実験台の一人が。


ただ、イドのはずなのに。

そのような特徴は一つたりとも当てはまらない。

ただ怒りと狂気だけが、全身から溢れる。

酷薄と残虐性が、舌舐めずりをしている。




「俺たちは、全員死んだんだ。

あの夜に、俺も含めて」



兜を外しながら、イドが笑う。

元々、笑みが下手くそだった。

だが、これはそういう、下手とかではない。

歪んで、壊れて。

世界を嘲るように、邪悪な笑みだった。



「…フロイ。あんたは殺さないでおいてやるよ。あんただけは、俺たちを番号じゃなく名前で呼んでくれた。それが薄っぺらな同情や、自慰行為だったとしてもな」


「だから死なせてなんかやるものか。お前だけは生きて苦しみ続けろ。俺たちを産んだ、産み出した罪に苦しみ続けてそうした挙句に死ね。そうして俺が犯した罪を知るたびに、罪を苛み続けろ」



みしりと頭を掴んで、目の前に突きつける。

凄惨な死の現場を見せられ、吐瀉をするフロイを眺めてイドは血の涙を流しながらげらげらと嗤った。




「ク、ククク…いいな、その目。負い目を感じているだろう。申し訳なさを。俺を生み出したせいでこんなことになったと。慣れておけ。これから先、何度も何度も感じる事になるのだからな」



「…そして、お前のその負い目は、使える。俺を生み出した事。俺に処置をしたこと。いまだに悔いているんだろう。俺に対して、それを感じているんだろう?」



「…どうにも、俺を探す目がうるさくてなぁ。

その度に皆殺しにしては目立ちすぎるし、何よりこの鎧に、娘に誰のものとも知らない薄汚い血が付いてしまうだろう」



「だから、なあ、フロイ。俺を隠す共犯者になれ。

俺を庇う、盾になれ。情報を錯綜させてくれ。

お前なら、それが出来るだろう。

どうせ生かしておくなら、そう使おう」




…もはや、その同情や哀れみを受けて真摯に感謝をするだけの騎士団員は、いない。フロイを前に、無表情ながらに感謝をする男はいない。ただそこにいるのは、醜い笑みを浮かべ。負い目を利用して自分の傀儡を作り上げる。ただの薄汚い殺人鬼だった。




「……イド。これもまた、薄っぺらな同情でも、見下しと思っても構わない。だけど、それでも…」



「…俺はお前が心配だよ」



「そうか」




…暫くして。焔に塗れた地下から、肉と炎が焼けた煙に燻された二人の人間が出てくる。


イドは、すぅと自らの鎧を嗅いだ。

ただこの血と糞尿の匂いが。

あの時に寸断された光景のフラッシュバックだけが。


今にも止まりそうな足をそれでも前に進める。








……





また幾月かが、経って。


いよいよ逃避行の終わりが来る。

王都を壊すための、破壊工作を続けながらの旅。

インフラを破壊すべく商人たちを殺した。魔物どもを集めてかき集めて送り、物流の道を失くす。周囲の村々に煽動し無意味な反乱と殺戮をさせる。毒を流して水を汚染する。



まだまだ、それでも足りない。



フロイによる風説の流布もいよいよ限界が来た。

暫くほど連絡が取れない。

恐らくはのたれ死んだか処刑されたか。

はたまた自責の念に耐えきれずに命を絶ったか。



どちらにせよ、単独による破壊工作でやれることも、もう無いのだ。これから先はただ、武力による制圧を元にした殺戮を行わねばならない。ただ自分だけでは、どうしようも出来ないような。

ただ一人で王城を、全てを壊すなど狂人の戯言にしかならない。ならばどうするか?自分のような戦士を、一から作り上げるか?それも何十人も、何百人も。無双の兵士をどうやって作る?

それこそ大言壮語となろう。



だが。

ひとつだけ。

ただひとつだけ、思い当たる節があった。


どのような戦士よりも、数百の混じり物よりも。数千の魔物よりもずっとずっと強く、恐ろしく、無敵の生き物。

それでいて自分の思うがままに操れるようになる力を。



フラッシュ・バック。




(…けて…れか…

誰か…人間で…いい……)

 

 

(此処に、私の娘がいる。

彼女に──)

 

(彼女に、復讐をさせてくれ)




そうだ、その、声。

ナナと話した、最後の日。

脳裏に響いたけたたましい声。

あれは、幻聴では無かった。

あれは、誰かの声だったのだ。

確かに、ただ自分にだけ聞こえた。


あれが何かは分からなかった。

こう追い詰められて、初めて脳内でピースがはまった。

あれは、あの声の持ち主の正体が。



あの声は、最期に死に絶える直前の竜の声だったのだ。ニコが見て発狂した、無念に終わる自分を儚んだ、あの強大な白竜。

ヒトに囚われ、永劫を奪われ、尊厳を壊されてヒトなどという生命体を孕ませられ、産まされて死ぬ。そうして死ぬ直前に、その自らの恨みを誰でもいいから、押し付けたかったのだと。




(復讐、復讐、復讐か)



ああ、復讐してやるさ。

復讐して、やるともよう。

但し、俺の復讐も相乗りだ。

お前の復讐に、俺の憎悪を乗せていく。


わかっているとも。

それでいいんだろう?

お前の言う復讐とは、個人へのものではない。

きっと、全てを恨んだんだ。

その点では、きっと俺とお前は同じだ、竜よ。お前から抽出された力を得た実験台だから、俺に聞こえたのか。


否。きっと、違う。

全てを、世界を憎む事になる同胞だからこそ、俺にだけ聞こえたのだ。因果を見据えた声こそが、あの音だったのだろう。





『契約』。

過去に忘れ去られた古い伝承。

それは、忘れ去られたのではない。

埋没、させられたのだ。

そのあまりのおぞましさ、あさましさに。


だが、それについて知っている。

あの、レムレス騎士団の空間が教えてくれた。

ゴイが語って、ニコが注釈して、ナナが笑って。

その記憶すら、今やどす黒い血鯖に塗れていく。

俺の脳にもはや安寧はない。

あの綺麗な記憶すら、憎悪に汚れていく。




座標に。ある洞窟に辿り着く。

そこには多くの人骨が落ちていた。


それを踏みしだいて、奥に進む。

進むにつれて、大きな影が見えてくる。

否、見えていた。ずっと、ずっと。


一度見た竜よりも小さな、子供の竜。

その姿を見据えた時、ああ、吐息をついた。

あれは、狂った俺の思い込みではなかったのだと。

安心?それとも、失望?

それは、わからない。



そして、ああ。なんの冗談だろう。

なんの、喜劇だろう。

ただの嵐であればよかった竜は。

復讐の道具であったはずのそいつは。

それが魔術で人を模した時の、姿は。


君に、そっくりで。

呆然とするほど、君の小さな姿に似ていて。

未練がましく、仮名なんて称して名をつけるまで。

クシーという名を、遺すまでに。



これは、何かの呪いなのかな、なんて思った。

呪いであればよかったのに。


違う。

あれは、ただ、愛だった。

だからこそ俺は、呪われてしまったのだ。

愛という、純粋なるもの。

ただ普通に生きて欲しいというナナ。

せめてお前だけでも生きろというゴイ。

生きて、と言った、クシー。

純粋故に、呪われた。


愛とは、どうしようもなく呪いなのだ。

歪んだ、呪いなのだ。

だから俺は、終われない。



なんと言ったかは、あまり覚えていない。

崩れ落ちないように。溢れないように必死だった。







「……竜よ」


「……これは契約だ。俺の復讐に力を貸せ。

それが叶った暁に…」




「俺が貴様を殺してやる」




 


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