第7話 誰も信じなかった
しかし翌日のことだ。
お嬢様の部屋の前で使用人達が集まっていて、何事かと思ったら…。なんとお嬢様の扉に十字架やらニンニクと言った、大昔のヴァンパイア撃退法のような様々な物がビッシリとデコレーションされた扉があった。
ええ!?これ、パウラ様がやったの?いつ??
夜中に一人で!!?
まぁ今は十字架に触っても熱いくらいで、火傷はしないけどね。それにニンニクも好きな食べ物じゃないくらいで特に見ても意味はない。
「あ…あのこれは?」
とマリアンさんもその場にいたので聞いてみたら
「ついに、お嬢様の頭がおかしくなったのかも…!この家にはヴァンパイアがいる!とかなんとか手紙に書いていて、直ぐにハンターを呼ぶようにと…」
と言って眉を潜めている。
ハンター…。そんな人達まだ生きてるの!!?教会にはいるのかもしれないけど??いるのかな??
「お嬢様?一体どうしたのかしら?もしや人嫌いが過ぎて、私達を排除しようとなさってるのかしら?」
「まぁ怖い!いくらなんだって酷いわ!」
「とりあえず片付けましょう?」
「全く、人のいない間にこんなことをして!」
「ヴァンパイアなんて空想上のヤツでしょ?…やはり頭が…。お医者様をお呼びした方が」
「旦那様に報告が先よ」
と使用人達は誰一人、信じていなくて僕は少しホッとした。
使用人達はさっさとドアのものを片付けて行ってしまった。
僕はノックをして
「お嬢様?大丈夫ですか?お医者様をお呼び致しましょうか?」
と言うと中から何か聞こえた。
?
微かにだが、グスングスンと泣いている声だ。
……。
『…った…。誰も信じてくれない…。もう嫌…』
それから静かになる。
すると旦那様がやってきた。
「やあ…パウラの様子はどうかな?」
「あの…旦那様僕は…」
「あの子が変な事を書いたみたいだね。済まない、あの子は気が弱くて、いつも不安なんだよ。もしかしたら本当に心が壊れかけて、あんな事をしたのかな??とにかく話を聞いてくるよ」
と言い、旦那様が声をかける。
「パウラ!私だよ。ここを開けて話を聞かせておくれ?」
そう言うと…扉の下からカサリと手紙が出てきた。
「おや…パウラ?開けてくれないなんて初めてだね?」
と旦那様が手紙を広げると…
《お義父さまも信じてないの?パウラは知ったの。金髪の男の子はヴァンパイアの血を引いている子孫で私を暗殺しようとしている。秘密を知ったから…》
こう旦那様に読まれて血の気が引くとはこの事だ。何故だ?暗殺の話だって叔父さんと昨日したばかり!まさかお嬢様が聞き耳を立てて部屋の外にいらした?いや、足音も立てずに?気配すらなく?ゴーストか?
しかし旦那様は笑う。
「パウラ!考えすぎだよ!出ておいで!それにヴァンパイアなら太陽で焼けてるだろう?彼は昼間でも起きてるんだよ?」
「そ、そうですよ!僕はちゃんと夜に眠りますよ!お嬢様の勘違いです!!出てきてください…」
と同意すると薄く扉が開いた。
そして首から十字架を下げ、僕の前に大きな十字架を差し出した。
「死なない…。けど熱いでしょ!!?ほら!!」
と差し出されるのを僕は受け取り、涼やかな顔で対応して見せた。
「ほら大丈夫ですよ?ねっ?」
とにこりと微笑む。
クソ熱い!!
しかし我慢をして平静を装う。
「我慢してる」
と言われた。
「…パウラもういいだろう?やめなさい」
「……はい…」
と十字架を受け取り、パウラ様はこちらを睨んだ。その目は全てわかっているぞと語っていた。そして直ぐに逸らした。
誰にも信じてもらえなかったパウラ様は、ますます引きこもるようになった。
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