第5話 謎多きパウラ様
「パウラの事だけど…あの子は前に孤児院にいてね。私が引き取った養女なんだよ」
と侯爵様が言うので
「マリアンさんから少し聞きました。実の親から虐待されてたとか」
と言うと悲しそうに
「そうらしい。妻が引き取った時に彼女の体を確認してもらった。無数の傷がついており可哀想で堪らなかったと。ただでさえ左目にも大きな傷が有りまともな結婚や仕事にも望めないと思う。
この家は長女のカトリーナが継ぐので出来るだけパウラには幸せな所に嫁いで欲しいものだ」
と侯爵様が嘆いた。
「ヴァレンティン君には迷惑をかけるかもしれないがあの子が出来るだけ心を開くようサポートしてやってほしい」
と言われて僕はうなづいた。
「頑張ってみます!パウラお嬢様の為にも!」
正直力を使えば楽勝だしね。とこの時の僕は考えていた。目さえ見れば操れるから簡単だと思っていた…。
「後、あの子はかなり警戒心が強い。私と妻の言いつけで今回は自分から部屋をやっと出てくれたが娘達や使用人達すら信用していないんだ。心を閉ざしている。
それにどうにも人の悪意に敏感なようでね、直ぐに怯えたり震えたりして本当に人嫌いのようだ…
パウラを部屋から出す事が君の今の課題だろうね」
と言う。確かに初対面ですらまともに会話をしていない。僕は領地の村の子供達と農作業したことあるけど子供達も僕に直ぐ懐いたくらいなのに…パウラ様みたいな対応をされたのは初めてだ。
これは中々難しいかもしれないぞ。
とりあえずパウラ様の部屋を教えてもらい改めて扉越しに挨拶した。
「パウラお嬢様!僕はヴァレンティン・クリスティアン・ヘドマンと申します!本日よりお嬢様の執事を務めさせていただきますのでどうぞよろしくお願いします!」
と声をかけるが返事は返って来なかった。
するとスッと扉の下から紙切れが出てきた。
拾い上げ開いて見ると驚いた。
《出ていってください…。貴方…ヴァンパイアの子孫なんでしょ?》
と。
何故?誰にもバレた事ないのに…何故!?
このお嬢様は一体何者なんだろう?
そして人間に正体がバレた僕はどうしたらいいのか…。
「お嬢様!?ど、どう言う事でしょう?これは?僕はそんなヴァンパイアなんかじゃ…ないですよ?」
と優しく言うがそれきり返事も紙切れもなく僕は仕方なく部屋に戻り、明日叔父さんに相談する事にした。
「一体どこで?パウラ様はずっと引きこもりでさっきただ一度会っただけ!それとも孤児院時代に僕のことを何処かで見かけたとか!?
いや、あり得ない。でもどうして…」
わけがわからなかった。謎だパウラ様。
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