第4話 人嫌いの御令嬢
侯爵家当主の、ロベルト・ヴィクトル・カッレラ様の待つ応接室に再びノックをして入ると、既に三人の娘さん達が集まっていた。
上の姉二人は、マリアンさんが言う通り、誰が見ても美少女と呼べる銀髪で蒼の瞳を持っていて…一番下の養女、パウラ様は髪が白く毛先の方だけ黒くて元々は黒髪であったことを告げている。侯爵様の後ろに隠れるように、傷のない片目の紫の瞳でチラチラと僕を見ている。小動物のようだ。
ヴァンパイアの血を引いてるけど害はないよ。と言ってあげたい。
しかしそこで、こちらを見ていた|片目(かため)が大きく見開かれ、彼女はガタガタと震え出した。
「ひっ…」
と短く怯える声に姉二人は
「まぁ、パウラったらそんなに怯えてどうしたのよ?失礼じゃない!」
「そうよ?部屋に籠りすぎて、ヴァレンティン・クリスティアン・ヘドマン伯爵家令息様の髪が金色で眩しくて怖がっているのかしら?いつも暗い所にいるものね」
と姉二人は美少女だが心はプライドの塊らしく義妹をネチネチと嫌味たらしく言っている。
「やめなさい。カトリーナ、ティルダ!パウラに優しくしろといつも言っているだろう?折角なんとか部屋から出てきたのに」
「あら、私達のこと避けているのはこの子よ」
「仲良くしようとしても、お父様とお母様以外とは喋らないし、私達を見て、いつも眉を寄せられるの!この子だって態度が悪いわよ!」
と長女のカトリーナ様が食ってかかる。案外と短気だな。
「そんなことより、お父様!ヴァレンティン様は私の専用従者にしてもらえなくて?」
と次女のティルダ様が、いつの間にか近寄り、僕の腕を取って膨らみ始めた胸を押しつけてニコリと微笑む。普通の男の子ならイチコロだろうけど。生憎僕は容姿には惑わされないし、自分が惑わす方である。
これは先祖からの血のせいか、結構自分の容姿を褒められるのは僕も悪い気はしないのだ。ご先祖様も自分の容姿を気に入ってると聞いたことがあるし、家族達もそうだから、変な遺伝もらってるのかも。
と思ってると、ちょっと怯えが止まり、こちらをじっと見る紫の瞳と目が合い、直ぐに逸らされた。
正直避けられるのは初めてだったので、それなりに衝撃だ。
次に目が合ったら僕のことに好感を持つよう術をかけてみようか?
と思っていたら、今度は完全に顔を侯爵様の後ろに隠して震え出した。
侯爵様は
「カトリーナ、ティルダにはそれぞれ既に専用の執事をつけている。パウラには、まだだから彼には歳も近いし、パウラの執事になってもらう!いいね」
というとカトリーナ様は
「ええー!?従者なんていつでも代えがきくではありませんか!私この可愛らしいヴァレンティンがいいわ!」
「お姉様!それはずるいですわ!私だってヴァレンティン様がいいもの!!」
と二人は僕に既にメロメロになってしまっている。
「旦那様の決定ですから…すみません。お嬢様方」
と礼をして隠れているパウラ様に、侯爵様が向き直り
「パウラ?いいね?」
と優しく声をかけた。パウラ様はまだ震えていた。
「で…も………」
と小さな声で言い、しかし最後には不満げにコクリと頷いたと思うと、こしょこしょと侯爵様に耳打ちしてダダーっと駆け出し、部屋を飛び出ていった。
「なんなのあの子!失礼だわ!」
とカトリーナ様は呆れ
「お父様本当にダメー!?」
と言う。
「だめだ。パウラは話が済んだようだから、先に部屋へ戻るようだね。カトリーナ達も、もう顔合わせは済んだから戻るように」
「はーい、ヴァレンティン?愚痴が言いたくなったらいつでも話を聞くわ」
と投げキッスをしてカトリーナ様は出ていき、ティルダ様はチュッと僕の頰にキスをして愛想を振りまき、出ていった。
侯爵様はため息を吐くとソファーに座るよう命じた。
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