第9話

「あなたの持つダウンジャケットを出して下さい」


 この時、まさかこの少女たちが本物の天使だとは、信じられなかったので、随分生意気な事を言った。


「まず、ここは何処で、君たちは誰か説明してもらおう」


「ここは、堕天の森。私たちは堕天使です」


 簡潔明瞭な言葉が、返ってきた。

 案内してくれた思春期魔女は、表情の無い顔をしていた。


「天使の仕事は、人を幸せにすること」


 お子さま天使は、続けた。


「しかし、人は、幸せになれるとは限らない。たとえば、君の様に。君の大切な人が逝ってから、この子は、君担当を引き継いだ天使だ。彼女は、君に新たな赤い糸を何度も繋いだそうだ。しかし、君は尽く糸を切り、心に愛を蘇らせる事を拒否した。愛を生み出せない天使の翼は、飛ぶ力を失う。地上に落下した天使の行く先が、このツリーハウスの村というけだ」


 なるほど、堕天するなら、地上のはずだ。

 地獄にまで行くなら潜らないと。

 因みに、彼女が逝く前の僕担当天使は、強い愛を生み出した事を評価され、出世して違う世界へ異動になったそうだ。


 残された僕は、ボロボロなのに?

 天使の価値観は、人基準ではなく、愛の強さ基準らしい。

 人の幸せ=愛の強さ

 それを失くした後の事は、また別問題。

 別の糸を繋げば、それで解決らしい。





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