6 『メイド秘書』
世界中に配下を持つ組織、『
詳しいことは世間でも情報が行き渡っておらず、どんな組織なのか、人数はどれくらいいるのか、組織のメンバーでさえちゃんと把握できないほどだという。一説には、世界中に四千人以上の配下がいるらしい。
そのトップが、『華麗なる大盗賊』
盗賊団という話もあるが、義賊的な働きを見せるのみで、ほかにはヴァレンが『革命家』として知られ、あまりの美しさから『美の化身』の異名も持つ。
まだ若い青年で、レオーネとロメオより三歳年上。
そして、レオーネとロメオはヴァレンの両腕であり、『
ラファエルからの『
「まあね。世界中から集積された情報をまとめていたんだ」
「大変ですね。そういった仕事を専門でやる機関を設けたらどうです?」
「そうだね。極秘情報も多いから人材は慎重に選ばなければならないし、すぐにとはいかないかも。ヴァレンさんに相談してみるよ」
ドアがノックされる。
「レオーネお兄様ー」
「どうぞ」
レオーネの声に、ドアが開かれる。
メイド姿の少女が現れた。
ヴァレンの『メイド秘書』にして『ヴァレンの羽』と呼ばれる、レオーネの妹である。年はレオーネの三歳下。今年十七歳になる。
ルーチェは部屋を見回して、
「あら。ロメオお兄様とリディオちゃんのコーヒーも注いで来たのですけど、いませんのね」
「ああ。修業みたいだ」
「そうですか。はい、これがお兄様、こっちがラファエルちゃんの分です」
差し出されたコーヒーには手をつけず、ラファエルは「ありがとうございます」と礼を述べた。
「いいえ。お兄様、ロメオお兄様とリディオちゃんの分はどうします?」
「置いといていいよ」
「はい。それじゃあ、またちょっと席を外すのでよろしくお願いしますね」
「わかった。ヴァレンさんは今どこに?」
「晴(せい)和(わ)王(おう)国(こく)です。すぐに戻らないといけなくて」
ラファエルは驚きもしなければ感心もしないが、ルーチェを尊敬していた。さすがにヴァレンの側に仕えるメイドは違う。いつかは自分もヴァレンの役に立てるようになりたいと常々思っている。
ルーチェはにこやかにレオーネとラファエルに小さく手を振った。
「ではまた。《
唱えると、ルーチェは消えた。
跡形もなく姿が消えてしまう。
「ワープ系の魔法をあれほどの便利さで使える人はそういない。ルーチェさんはすごいです」
「あれで欠陥もある魔法さ。オレも使わせてもらうが、目的地がざっくりしてるんだ」
「行ったことのある町が対象。特別に、三つの地点を登録できる。この三地点は、人や建物など詳細な設定が可能。また、登録地の変更はいつでも自由。だから、ヴァレン様で一枠、そしてここロマンスジーノ城で一枠。残る一枠を必要に応じてセーブポイントにしている。確かに、もう少し拡張できるといいですね」
レオーネとラファエルがいるのは、ロマンスジーノ城という城だった。
現在、この城には七人が住んでいる。
ヴァレン、レオーネ、ロメオ、ルーチェ、ラファエル、リディオの六人と執事が一人。
広い城内をたった七人で使うには持て余すが、それはルーチェの魔法《
「そのうちオレがなんとかしてやれたらいいが、簡単じゃないからな」
ラファエルがコーヒーの湯気をふぅっと吹いて、一口すする。
「そうですね」
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