5 『リディオとラファエル』

 ドアの前に立っていたのは、二人の少年だった。


「ただいまー! ロメオ兄ちゃん! レオーネ兄ちゃん!」

「ただいま帰りました」


 ロメオの弟・狩合璃照緒カリア・リディオが元気溌剌、もう一人の少年・或縁丹等笛瑠アルベリーニ・ラファエルはクールな印象である。この四人の中で血の繋がりがあるのは、ロメオとリディオの兄弟だけだ。

 二人は同い年で、今年十歳になる。まだ背も小さく、ロメオとリディオは十歳離れている。

 優しい微笑でロメオが返す。


「おかえり。リディオ、ラファエル」

「二人共おかえり。うれしそうだな」


 レオーネがそう言うと、リディオがしゃべり出す。


「ロメオ兄ちゃんに遊んでもらうために急いで帰ってきたんだぞ!」

「相変わらず、リディオはロメオが大好きだな」

「おう!」


 おかしそうに話すレオーネと楽しげなリディオ。それを横で見ながら、ラファエルは少年らしくないため息をつく。


「ロメオさんが忙しいかもしれないって考えはないんだね、リディオは」

「そっか! ロメオ兄ちゃんはいつも忙しいんだった! ロメオ兄ちゃん! 遊べるか?」


 リディオに詰め寄られて、ロメオはリディオの頭に手をやった。


「今は大丈夫だ」

「やったあああああ!」


 両手をあげて叫ぶリディオを、ラファエルは迷惑そうに呆れた顔で一瞥した。


「なにする?」

「じゃあ! じゃあ! 戦おう! おれも早く強くなってロメオ兄ちゃんみたいにヴァレン様たちの役に立ちたいんだぞ!」

「わかった。じゃあやるか」

「おう!」


 ロメオがレオーネが見返り、


「レオーネもやらないか?」


 これにレオーネがひらりと手を振った。


「今日のところは遠慮しておく。ラファエルはどうする?」

「ボクもいいです。読みたい本もあるので」


 ラファエルもそう答えると、リディオが元気に声をかけた。


「じゃあ行ってくるぞー!」


 かくして、ロメオとリディオの兄弟は外に出た。

 それを見送り、ラファエルがつぶやくように聞いた。


「レオーネさん。今日は『ASTRAアストラ』の仕事はいいんですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る