アルフレッド・J・コードウェルの目的

昨日と同じ今日。

今日と同じ明日。

世界は繰り返し時を刻み、変わらないように思えた。

だが、人々の知らないところで。


────世界は大きく変貌していた。


 前回はウロボロスについて考察したと思う。やはり、それほど危険なシンドロームを復活させFHに鞍替えしたのには訳があるはずだ。今回はそれについて考察していこうと思う。


 その前に、彼のプロフィールを振り返っていこう。


 人類と超能力者オーヴァードの共存を掲げる巨大組織、UGNの創始者の一人であることは周知の事実だと思われる。そしてUGN創設当初のコードウェルは夢を追い戦い続ける熱い男だったそうだ。

 コードウェル博士の覚醒の経緯はこの様になっている。

 レネゲイド拡散事件の数ヶ月後。当時31歳だった博士は北米の某所の大学の研究所で天才として期待される存在だった。ある時、医師の友人から不審な死体の検死の協力を求められる。結果としてその死体は超能力者オーヴァードだった。

 超能力者オーヴァードである死体が実際に死んでいたわけではなくなんらかの原因でレネゲイド濃度が低下しており回復に時間がかかったんだろう。結果として回復した死体は研究所を脱走する。そしてなんらかの記憶処理が施され博士とその娘以外の死体に関する記憶がなくなった。独自に調査していく博士だったが、奴らに監視されていることに気がつき妻子を連れて逃げ出そうとした時、にも事故に遭ってしまい妻子を亡くしてしまう。その時彼は覚醒した。恐らく異質な死体の調査をした段階で彼はウイルスに感染していたと思われる。

 それからUGNを設立するまでの3年間、仲間達と共にジャームと戦い続けていたがFHの出現でUGNを設立することにした。

 それから五年後彼が事故で亡くなったことは周知の事実だと思う。しかし、この事故はFHによって偽装されたものだ。UGNという組織が大きくなるうちに、『《超能力者オーヴァードと人間の共存』から『超能力者オーヴァードと人間の隔離』になって行ったからだ。


 さて、簡単なプロフィールを振り返ってきたが、どうだろうか?彼の事故を引き起こしたのはいったい誰なのか。それは彼自身、もしくはセントラルドグマから指示を受けたものだと思う。研究施設にはコードウェルを抜きにしても選りすぐりの強者達が集っていたはずだ。そんな彼らが太刀打ちできないほどの存在。まぁ強者達が全員寝返っていたら話は別だが。そんな存在はセントラルドグマに近い存在でなければ不可能ではないだろうか?少なくともリエゾンロード以上の力は必須だろう。

 そんなコードウェル博士はなぜセントラルドグマとの繋がりがあったのか、二つの説が考えられる。一つ目はFH創設の時からコードウェルは関わっていたという説だ。正直これに関しては、根拠もないただの妄言に過ぎない。では二つ目、アダムカドモンの研究時にセントラルドグマと繋がるきっかけが生まれた説だ。

 では、その繋がるきっかけとはなんなのか。レネゲイドによる人類の死滅。都築京香の計画プランの行き着く結果だ。


 最初レネゲイドの治療を目的にしていたアダムカドモンだったが、FHの参入詰まるところ都築京香の参入によって研究の目的が変化していった。その結果がダノンスレイブでありバーネットであると思われる。そんな研究の中コードウェルは、異変にいち早く気づき、独自で調査を行った。その結果都築京香の真の目的に気がつくことができた。


 FHの元締めでもあるセントラルドグマもレネゲイドによる人類の死滅を求めているわけではないと思われる。そのため、都築京香の計画プランの行き着く結果をしり都築京香をなんとかしなければならないと考えた。そして、彼女にバレることなくコードウェルを動かす必要があった。その結果があのニュージーランドの事件なのだろう。


 コードウェルは事件後、セントラルドグマに保護してもらいそこからこの地球からレネゲイドを消し去る方法を探っていた。その中で見つけたのがウロボロスシンドロームだった。ウロボロスの特性を研究し、復活させようとした。そして半年前にインフィニティーコード発動しウロボロスを世界にばら撒き都築京香含むレネゲイドビーイングにとってのカウンターを生み出そうとしている。


 しかし、この計画の行く末。つまり都築京香らビーイングを死滅させた後はどうするのか。地球上のレネゲイドがなくなればウロボロスに対抗する術がなくなる。そうすると今までの星々のようにウロボロスに滅ぼされてしまうのではないだろうか?

 もちろんコードウェルほどの人物が対抗策を用意していないわけはない。自身もウロボロスに対抗できる何かを子飼いもしくは保持しているのだろう。


 ここまでコードウェルはレネゲイドを消し去ろうとしていると語っていたが、その根拠はどこにあるのか?それはマスターレイス、コードウェルの子たちの存在から推察することができる。コードウェルの子は皆強い欲望を持っている。例えばマスターレイス06は静謐なる世界を望んでいる。レネゲイドのない世界は彼女にとって戦いのない静謐な世界と呼べるのではないだろうか。次にマスターレイス14は全ての超能力者オーヴァードの殺害を望んでいる。そんな人間が一般人を超能力者オーヴァードにしようとしているFHに組みするはずはない。その裏には何か別の目的がある。それこそがコードウェルの計画。レネゲイドを世界から消すことではないだろうか。他にもコードウェルの子達の目的も見ていけば少なからずレネゲイドを憎んでいる部分が見えてくると思う。


 俺がこの場で言いたいことは、コードウェル博士こそ人類を救おうとしてくれている本当のヒーローなのではないだろうか?

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