chapter3-4:冬の早朝

目覚ましが鳴る前に、目が覚めた。

もう一度寝ようと思えないような、微妙な時間帯。

いいや。起きてしまえ。

布団から身を起こし、息を吐けば、白く染まる。

凍える冷たさが、脳を覚醒させていく。

まだ姉たちは起きていないようだ。

物音を立てないようにしながらリビングまで歩いていく。

一番大きな窓のカーテンを開けば。

まだ日の光は少ししか注いでいないのに。

積もった雪に反射して、眩しいほどだった。

薪をくべて、暖炉に熱を入れ。

ぱちぱちと火が爆ぜる音を聞きながら、窓の外を見やる。

静寂と言う言葉は、きっとこのためにあるようだと思えるほど。

静かすぎて、怖いのだ。

この世界に、自分だけしかいないような気がして。

「あれ?フォルちゃん珍しく早いね」

そんな不安を溶かすような、春の陽だまりの声。

「あ。サキねぇ。おはよー」

そう声をかければ。

「あ、部屋あったかい!ありがとう!!」

サキねぇの背後から、夏の日差しの声。

「しいねぇもおはよー」

「おはよー!今日は早いんだね」

「なんか、目が覚めちゃってね」

「ますます珍しいね?寒いから?」

「なら逆に寝そうな気がするんだけど……」

不意に、妙な視線を感じたので、その方向に目線を動かせば。

「……?……」

秋の夕陽の瞳が、眠たげに、不思議そうに私を見つめていた。

「インズイは起きろ。朝ごはん出来るまでに」

「おきてる。わかってるよ」

「起きてない言い方なんだよなぁ……」

先ほどまでの静けさはどこへやら。

一気に部屋が明るく、にぎやかになった。

夜が明けるように。

少しずつ温度が上がるように。

皆といれば、幾分心は落ち着くのだ。

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