大便性危機的状況マニュアル〜高速道路編〜

端役 あるく

大便性危機的状況マニュアル〜高速道路編〜


注意事項

 ・この内容は一人の人間の所見を持って書かれた物であり、大衆への機能性を効果的に発するものではなく。大衆への共感性を効果的に発するものとして想定されています。


 ・この内容は、高速道路のみに対応する内容によりますので、種々様々な環境における大便性危機に対応するものではありません。


 ・これは、危機的状況に読むものではなく、危機的状況への事前事項としての要項であります。しかし、危機的状況である方へ申せる事があるとすれば、落ち着いてくださいと言う他ありません。


 ・またこれは、所謂人間生活におけるパターン分けされた内の高速道路状況全てを考慮している訳ではありません。ご了承下さい。


 4ステップ構成になります。


ステップ1

 高速道路を想定してください。あなたは今、腹部の痛覚と、急落と、きゅるるるを感じています。運転手は、余裕をぶっこいた顔で走行しています。まずは、彼をこの地獄の状態へ、共感させましょう。

 想定として、まず運転手の彼、彼女はこの状況下における、便意の第三者であるという立場から引きり下ろします。


言い方としては。

 「お腹が痛い」と素直に言いましょう。冷静に、簡潔に、恥ずかしがらず、真剣さを伝えねばなりません。真剣でなければ、数少ないパーキングを一つ逃しかねません。

 もし、まだ印象が薄く、この状況を理解していなそうであれば、そいつの腹をぶん殴りましょう。という気持ちを持って、再度優しく、本当に優しく「お手洗いに寄ってください」と、言いましょう。顔色を青くさせる事が出来る方は、お勧めします。

 ※もし、それでも止まられない場合は、そいつの腹を十二指腸あたりから引きちぎる妄想をしましょう。笑える位グロテスクな想像をしましょう。


ステップ2

 運転手に危機感が伝わり、次のパーキングエリアへと目標が定まった場合に移ります。

 ここからは、我慢との戦いです。我慢、けれどそれは痛みと共に降る、破壊力のそれを我慢する訳ではありません。冷や汗垂れ、限界を抑え込んで、痛みの急落と上昇に心の中であえいでいる自分、それに対する全てに我慢する戦いです。

 運転手は、この危機を理解しても、避けたいのは我々の痛みではなく、車内汚染を気にかけているだけなのです。何なら、まぁ、最悪だけれど、まぁ、匂いが取れないなんて事は無いからOKかな……と楽観的に考えているかもしれません。これを我慢しましょう。思考の落差を感じながらも、イライラしない。イライラは力へと変異し、力みになります。そんな余裕はありません。決してありません。


 また、敵はそれだけではありません。

 一つ目、視界です。視界に映るのは、左右また、どちらか一車線の今自分の乗っていない車線。そこを走る車が自分の搭乗する車を抜いて、走っていく姿。これを視界に移さなくてはなりません。もう少しスピード出してくれよと思うかもしれません。しかし、耐えて下さい。ここでは絶対にかす事は褒められません。我々と、運転手は駆け引きを行なっているのです、この人に何故ここまで言われなければならないんだと、思われれば、関係が崩壊します。下手に出るのが得策です。


 我慢の対象として、意外とされるのが二つ目、音です。自然発生する音は元より、機械音また、人の声というものは恐ろしく体をこわばらせ、握力はおよそ常時の2倍近く(当社調べ)になります。機械音プラス人の声としてはラジオなどはこれに当てはまります。ラジオは切りましょう。反対は押し切りましょう。

 また、付け足しとしましては、音声ナビも破壊力が凄いです。眉間の血管がブチギレる程にイライラします。高速道路ならではの、情報の多さ、ETCが刺さっていないという案内が止まらない事など、出来るのであれば、それら全てに対して、どうにかする事を運転手に要求しましょう。


ステップ3

 さて、長々と、イライラを抑えながら我々は余りにも長距離を走りました。長過ぎるパーキングエリアまでの案内を、数字の減少を傍目で見ながら、その単位がメートルになった事に歓喜したことでしょう。

 ようやく、パーキングに到着しました。

 しかしながら、ここで油断してはなりません。運転手の動向を窺わなければなりません。それは、停車に関してです。気を利かして車を停める前に路肩に停めてくれるのが最良ですが、決して全ての人がそうではありません。空きスペースを探して、駐車場内を一回ぐるっと回ってしまうかもしれません。しかし、それは予想済みにしておかなければなりません。

 停まるかもしれないという期待は、ほんの1ミリたりとも抱かないでください。裏切られた時の代償が大きい為です。どれだけ停まらなくても、どれだけ探し回っても、安静に心を保って下さい。


ステップ4

 無事、車外に出たとしても決して気を抜いてはなりません。我々が気を抜いて良いのは、個室に入ったその瞬間からなのです。

 初めの一歩、この速度に関しては非常に議論の分かれるところであります。歩く方が良い状況下に自分があるのか、早歩きの方が良い状況下なのか、この二択です。

 公式に乗っとれば、個人個人に割り振られた決壊限界耐久係数アスタリスクと、歩行時角度λラムダ、積載量ξグザイを用いて計算する事が出来ますが、自己の判断以上にこの答えに近い数値はこの世に存在しない為、横に置いておいて下さい。歩くべきか、早歩きかその場で試行して下さい。

 そして、いざ、お手洗い場に侵入します。しかし、ここでも気を抜かないで下さい。先に申したのは、他でもなく、ここが一番の関門であるからです。お手洗い場に入ったけれど、そこに恐るべき状況が見える可能性が大いにあるのです。


 全室使用中という可能性です。

 けれど、ここでは絶対に取り乱してはなりません。深呼吸をして、呼吸を整えて、血圧を上げない事を意識して下さい。そして、忘れないで下さい、入室している今の彼らは、数分後の我々なのです。彼らは歴戦を超えてきた同志に他なりません。そう考えるのです。高速道路というマラソンをここまで耐えてきた友なのです。その友の成功を我々は、外から喜び、賞賛を贈るべきなのです。

 そして、数分後、開いた扉から出てきた彼に横目で語るのです。『よくやった』と心の中で語るのです。

 ドアをくぐり、蓋を開け、着座する。そして、我々は勝利したのです。



 以上でマニュアルを終わります。読者様には出来るならこの状況にならない事を切に願います。

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